映画『マイケル』大ヒットしていますね。言わずと知れた〝KING OF POP〟マイケル・ジャクソンの伝記的ミュージカル映画で、主演がマイケルの甥であるジャファー・ジャクソンであったり製作がフレディ・マーキュリーの大ヒット伝記映画『ボヘミアン・ラプソディ』のチームであることから事前から期待はされていたのですが、実際観にいくと新感覚! 映画なのに本当のライブに来ているような錯覚に陥りますし、何よりもマイケル・ジャクソンの孤独や悲しみが幼少期から描かれることで我々が見ていたスーパースターへの理解度が深まる感覚でした。
まあ伝記であるがゆえ一筋縄ではいかなかったようで、妹ジャネット・ジャクソンの賛同がなく映画ではいない存在になっていたり、ダイアナ・ロスとの邂逅のシーンは全て撮り終えていたのにダイアナ・ロス側からの申し立てによって全部カットになったり(ダイアナ役の俳優さんが気の毒です)、性加害についてのくだりも全カットになったりと問題だらけでしたが、次作品も決まっているとのことで楽しみですね。

故人だけでなく現役ミュージシャンも
さて、伝記映画を温故知新していきましょうか。前述の『ボヘミアン・ラプソディ』は伝記映画の歴史を変えましたね。最新技術をふんだんに使うことによってライブシーンを忠実に再現、故人なのにまるで息づいているような体験を提供してくれました。ほかにもヒットしたもので言えばホイットニー・ヒューストンの2022年公開の伝記映画。日本ではそこまででしたが世界的に評価が高かったです。私も見ましたがホイットニー役のナオミ・アッキーのパフォーマンスが素晴らしく、また悲しい現実もきっちり描かれていて胸が痛くなりました。ほかにも、エルヴィス・プレスリーやエイミー・ワインハウス、ジェームス・ブラウンにボブ・マーリーと故人はバンバン伝記映画を作られるようです。
故人を扱う分には遺族への配慮がもちろん必要とはいえ「死人に口無し」なんて言葉もあるようにある程度大胆にも描けるようです。一方、まだ現役で頑張っているミュージシャンの伝記映画もいろいろありまして、例えばエルトン・ジョンの半生を描いた『ロケットマン』。ファンタジックなミュージカルに落とし込んでいて、楽曲群はもちろん最高、心情と絡めた曲の配置が芸術的でもありました。エルトンの苦悩やダメなところもしっかり描かれていたのですが、現存しているからこそ露骨な性描写がなんかキッツイ。セクシャリティー関係なく、知り合いの性生活を覗き見した感覚で自分はちょっとしんどかったです。あとやはり聖人君主的な帰結になるんですよね。そりゃ悪者として描いたら今後の活動に差し支えるか。
それでいったら2001年公開のマライア・キャリー主演『グリッターきらめきの向こうに』がいろんな意味で最悪最高でした。マライアの自伝的映画なのですが、まず主演がマライア・キャリーご本人。プロデューサーに見出される前のポテト少女時代もご本人で再現されているんですが、爆笑コスプレクオリティー。歌唱シーンも口パクが下手で嘘くさく、映画の展開もめちゃくちゃで、後にマライア自身も「あの映画は黒歴史だわ」と言い放つ様。不名誉の極みであるラジー賞もきっちり受賞しています。しかしこれまた音楽自体は素晴らしく、同名のアルバムも評価が高いです。
日本では伝記映画ってどうなんですかね。よく24時間テレビ内の特別ドラマみたいなやつで伝記ものをやっているイメージがありますが、ミュージシャンのライブ込みの本格的な映画はない気がします。美空ひばりさんや尾崎豊さんなどもう逢えないミュージシャンの伝記映画のライブシーンを大スクリーンで観たいと思うのは私だけでしょうか。あ、現存する人のはやめてね! マライアを思い出して!

『Michael/マイケル』
全国公開中
配給:キノフィルムズ
®, TM & © 2026 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.

ヒャダイン
音楽クリエイター。1980年大阪府生まれ。本名・前山田健一。3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学卒業後、本格的な作家活動を開始。様々なアーティストへ楽曲提供を行ない、自身もタレントとして活動。
文/ヒャダイン 編集/石㟢寛明




DIME MAGAZINE













