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Waymoが考える自動運転のAI開発における「学び」とは?

2026.10.05

タクシーアプリ『GO』やタクシー会社の日本交通などとパートナーシップを結んで、東京で自律走行の配車サービスを導入することでも話題になっている自動運転技術のグローバル企業のWaymo。自律走行車 (AV) 分野の自動運転技術で注目を集めているが、日本時間の2026年8月19日に同社システムによる完全自動運転での累計3.2億キロメートル超の走行データから導き出された「AI開発における主要な10の学び」を発表した。この発表では、AIをどのように構築すべきかを示す基本原則について解説している。その内容を紹介していこう。

さまざまなセンサーの統合が安全性を高める

業界の一部では「カメラだけで完全な自律走行を実現できる」という主張もあったが、Waymoによればカメラは完全自動運転の運用を大規模に展開できるほど高度ではなったという。Waymoが発表した「Waymo Driver」は、カメラ、LiDAR、レーダーのデータを統合することで単一のセンサーでは再現できない大量の情報量で信頼性と冗長性を備えた周囲認識を実現したという。LiDARは、ミリメートル単位の精度で3次元の立体構造を捉えて骨組み (ワイヤーフレーム) を提供し、カメラは「意味情報 (セマンティック・オーバーレイ)」を重ね合わせる役割で道路標識を読み取って信号機の色を判別する。レーダーは、移動速度を追跡しながら激しい雨や霧、塵などカメラの視界を遮るものを「見通す」動的な見張り役として機能する。これらの各センサーが互いの強みを補い合うことで、自動運転の安全性を高めている。

高精度 (HD)マップが強力な事前知識になる

「マップを使うべきか、使わざるべきか」という議論について、Waymoはマップを脳の記憶のような役割で視界不良時や複雑な道路の走行時の補完的な情報源として活用している。高精度 (HD)マップで検証プロセスを迅速化して、初回走行から完全自動運転サービスを提供しており、運転中は地図をセンサーと同じようにインプット情報として扱っている。こうすることで車載コンピュータは、リアルタイムの処理能力を急な迂回や臨時の一時停止といった動的または新しい事象だけに集中させることができ、AI活用のマップシステムを常に最新状態に更新して複雑な操作時にも車両が頼れる高精度な参照データとして提供している。

モデルは数を減らして大きくする

AV開発の初期段階は、業界全体で特定の役割に特化した小さなプログラム (モジュール)に依存しているが、機動性は高いが規模拡大によってスパゲッティ化したモジュール構造を引き起こして維持や管理が難しくなってしまう。少数かつ大容量で専門特化した基盤モデルへ統合すれば、膨大なデータセットと大規模な計算能力を効果的に活用できる。そうすれば人間の不確実な事前知識ではなく、データ自身に「何が重要か」を判断させることができるので、十分な容量を持つモデルが自ら高度で複雑な推論能力を獲得できる。こうした「Less is more (少ないほど豊かである)」のアプローチは、大規模言語モデルの進歩と同じスケーリング則の恩恵を受けることができる。

ブラックボックスでは信頼を築けない

モデルが生の画像データを取り込んで、直接ステアリング制御を出力するような純粋なE2E型のニューラル・アーキテクチャは、意思決定がどのように行われるか理解が困難になってブラックボックス化による障害リスクがあるという。Waymoのシステムは、センサー情報をリアルタイムで運転操作に変換するが、独立した車載検証レイヤーを追加しており、このアーキテクチャの選択はレベル4の自動運転で安全に規模を拡大させていく上で譲れない条件だという。Waymoは、強化学習や生成AIにヒントを得た推論技術などの手法を取り入れることで、走行計画が物理的制約や交通法規に反していないかを厳しくチェックして、AIが制限に違反する道や衝突の危険性がある経路を提案した場合は検証レイヤーが安全装置として機能する。

クローズドループシミュレーションから特殊なケースが判明

非常に動的で稀な状況に対処できるようにAIを学習させたい場合、現実世界でテストすることは非常に困難だが、シミュレーションなら特殊な事象でのAIの性能をテスト、検証、パフォーマンス向上が可能だ。ただ記録データを再生するオープンループシミュレーションだけでは不十分なので、大規模なクローズドループシミュレーションが重要になる。実走行であらゆるエッジケースを網羅するのは不可能なので、クローズドループシミュレーションによって実際の道路で直面する前に稀な事象を発見して検証することが大切だ。

優れたドライバーには優れた批評家が必要

Waymoは、シミュレーション内と実際の道路上の両方で望ましくない運転行動を分析、理解、検知する「AI Critic (AI批評家)」を構築しており、「Waymo Critic」では毎週走行する数百万キロメートル以上 (シミュレーションでは数百億キロメートル以上)を検証している。堅牢で優れた洞察力を持つ「Critic」は、安全性や交通法規の遵守だけでなく、カーブ時のスムーズさやブレーキの心地良さまで幅広い運転行動を捉えられるように細かく調整されている。この情報と精密に調整された走行データを組み合わせることで、「Waymo Driver」の運転精度を正確に測定できるという。

視覚言語モデル(VLM)が推論能力を向上

車の運転は、複雑で思考の連鎖 (Chain-of-Thought) を伴う推論が求められるが、例えば事故現場で警察官が手信号を出している場面に遭遇した時は、ドライバーは周囲の状況の文脈を考慮して信号の意図を理解できる必要がある。Waymoでは「Gemini」を用いて、トレーニングされた視覚言語モデル(VLM)が一般的な学習データの範囲を超える特殊な状況でも高度な意味的「ヒント」をシステムに提供して、状況を切り抜ける支援をしてくれる。現在のVLMは高度な推論には優れているが、リアルタイムの車両制御に使うには処理速度が遅すぎて、モデル単体では十分な空間認知能力に欠ける。この課題解決のためにWaymoでは「Thinking Fast and Slow (ファスト思考とスロー思考) 」というアーキテクチャを採用して、瞬間的なリアルタイム制御は迅速で直感的な処理とセンサーフュージョン (ファスト思考)を使用して、深く熟考が必要な推論にはVLMを活用 (スロー思考)している。

AIの有効性は評価ガバナンスの質で決まる

自動運転は「Driver」が構築できれば開発完了だと思われがちだが、運転、シミュレーション、評価のすべてが実用化の準備状況を判断する安全ガバナンスで構築されることで初めて実現可能になる。Waymoは、この前提に基づいて構築しており、準備態勢のフレームワークの中核は、複数の補完的な評価手法で構成した厳格で定量的なデータエンジンだという。さらに専門家による人間の判断と適切な安全ガバナンスで補強して、実用化に関するさまざまな決定が信頼性の高い指標に基づいて行われている。

データフライホイールで継続的な改善を行う

自動運転は常に学習させることが大切だが、「Waymo Driver」は時間の経過とともに進化し続けている。自動化された「データフライホイール」のおかげで、関連データを抽出して精査して高度な自動ラベリング機能で分類した上で、モデルに再学習させてシミュレーションと安全フレームワークを通じて検証を行っている。エクサバイト規模の膨大なデータに対してサイクルを運用することで、レベル4システムのロングテールシナリオの体系的な解決ができるようになるという。

完全自動運転の実走行経験に代わるものはない

完全自動運転を実現するためには、運転支援システム(レベル2)を改良していくだけでは難しく、レベル4の成熟度は車内に人間が乗っていない状態での走行という妥協のない経験で鍛え上げられた、専用に設計されたシステムでのみ安全に達成できるという。シミュレーションや人間の監督下で数十億キロメートルを走行するだけでなく、自動運転システムが成熟するためにはシステム自身が単独で運転タスクの全責任を担う必要がある。Waymoは、完全自動運転の開発には、走行した距離に代わるものはないという。完全自動運転の実現には、膨大な走行距離とシミュレーションによる裏付けこそ重要な教訓といえそうだ。

https://waymo.com/intl/jp

構成/KUMU

30年以上暮らした東京から実家に戻った地方在住フリーライター。得意分野は、ゲーム、アニメ、マンガやIT&デジタル関連など。自宅でリモート取材や自宅作業が増えたので、20年以上ぶりにフル自作PCを作成して活用中。最近の取り組みは、実家で発掘したセガマークⅢ以降の昭和から平成のゲーム機が動くか点検すること。

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