デジタル全盛の時代にあえて逆行する、ぶ厚いリングノート。日本文具大賞グランプリに輝き、〝2026年を象徴する文具〟となった本品には、ノートとの寄り添い方を再定義する、老舗マルマンならではの戦略的提案があった。

マーケティンググループ
加納朋香さん
〝当たり前〟に挑み続けた実直なモノ作りの系譜
「本当に受賞したの!?と多くの社員が驚いていました(笑)」
グランプリ商品の企画を担当した加納朋香さんは当時の興奮をそう振り返る。同社は2013年に『セプトクルール』(該当商品は廃番)で機能部門グランプリを獲得したが、現体制での最高賞戴冠は今回初。それでも「実感が湧かない」と語る背景には、時代のニーズに向き合い定番をアップデートしつづけてきた同社ならではのモノ作りの姿勢がある。
『図案スケッチブック』をはじめ、マルマンは1920年の創業以来、日本の文具史を彩る名作を数多く世に送り出してきた。『スパイラルノート』もそのひとつ。昭和初期、フランスから輸入されたらせん状の針金とじノートに着目し、スパイラル製本機を導入。60年に日本初となる本格的なリングノート『スパイラルノート』を製造・販売。その後、刷新と横展開を拡大しながら、ロングセラーとしての地位を揺るぎないものにしていくのだが、その歩みをひもとけば、ノートの本質を見据えながら時代の常識に挑みつづけた〝革新の系譜〟であることに気づかされる。
実際、カラー表紙を普及させた初代にはじまり、カラー表紙が飽和した2010年代にはクラフト表紙を採用。そして今回3度目の変革としてグランプリを勝ち取ったのは〝デジタル化〟〝スリム化〟というトレンドに逆らう厚さ約1.5cmの150枚タイプなのだ。
新習慣の提案とともに日本の文具を世界へ!
さて開発の経緯は?
「海外進出を見据えてというのが一番の理由です。海外市場をリサーチすると、特にアメリカでは、据え置きを前提にした100枚以上のモノが主流であることがわかりました。50枚とじが一般的な日本で、この厚さは新鮮に映るのでは? そう考えたのです」
これほど厚いリングノートは前代未聞。試行錯誤の連続だった。
「とじ枚数を決めるのも手探りで。製本機を新たに調達し、10枚刻みで試作しながら、ワイヤーの太さ、それを通す穴の形状、製本には手作業が欠かせませんから作業工程も見直し、1年以上かけて製品化に漕ぎつきました」
さらに約1年かけて表紙違いのグランプリ商品が発売となった。筆記用紙は『MPS-N 70g/平方メートル』。ベーシックなノートという建て付けから、13種類ある同社オリジナル用紙の中から標準的な紙を採用し、価格を抑えたという。
「なので、気負わずにガシガシ使ってほしいですね。ミシン目付きですから、必要なページだけを切り取って持ち運べますし、アイデアを自由に書き殴るデスクの相棒に最適。会社に置きっぱなしにする専用ノートとして、ぜひたくさん使ってください!」

日本文具大賞グランプリ獲得の理由
【Point 1】安全性を高めるコイルループ加工

強度とめくりやすさを追求した、150枚専用ワイヤーを使用。ワイヤーエンドを内巻きに加工し、服などに引っかからないよう配慮している。
【Point 2】たっぷり書けてコスパ最強!

日本で流通する一般的なノートの3冊分に匹敵する150枚の大容量。上質な国産用紙をぜい沢に使える、驚きのプライスを実現した。
【Point 3】書き味のいいオリジナル筆記用紙

筆記用紙は『MPS-N 70g/平方メートル』。ペンの走りを邪魔しないなめらかな書き味が特徴で、万年筆でも裏抜けしにくく、スルスル書ける。
【Point 4】利便性に優れたミシン目&丸長穴

全ページに施された細かいミシン目が便利。長丸形状の穴により、ページをめくる際の引っかかりが軽減。ラフにめくっても破れにくい。
海外進出を意識して10パターン以上を試作

米国で実施したアンケートをもとに表紙を試作。工場を含めた国内外のチームが連携し、ビジネスユースにも適した高級感を追求した。
取材・文/渡辺和博 撮影/本誌
※本記事内に記載されている商品の価格は2026年8月31日時点のもので変更になる場合があります。ご了承ください。




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