アコースティックギターの世界的定番として、多くのギタリストに愛されてきたヤマハのFG/FSシリーズ。初代モデル「FG-180」「FG-150」の誕生から60周年という節目を迎えた2026年9月、新たな歴史を切り拓く注目の新ラインアップ「FG/FS7シリーズ」がお披露目された。名ギタリスト佐橋佳幸さんを招いての注目の発表会レポートをお届けしよう!
60年の伝統と革新――「独自思想」を貫く新星
発表会の冒頭、ヤマハミュージックジャパン LM事業戦略部部長の冨岡雅佳さんが登壇。60年にわたりヤマハが紡いできたアコースティックギターの歴史と新製品開発の経緯を語った。
「ちょうど60年前の1966年、ヤマハは初の国産フォークギター『FG-180』と『FG-150』を発売しました。それらは単なる海外製品のコピーではなく、ヤマハ独自の設計思想と、当時としては極めて珍しい人間工学の視点を取り入れた画期的なプロダクトでした。ふくよかな低音と、コードをストロークした際の高音の分離の良さが支持され、1970年代のフォークブームを象徴するアイコンとなったのです」。
60年という月日が流れても、ヤマハが守り続けるギターづくりの核は揺るがない。
「まず『楽器としての質を追求し続けること』。そして『時代に合わせた新たな価値観を取り入れていくこと』。これらを軸に、60周年の節目として自信をもってお届けするのが今回の新商品です!」。
フラッグシップのDNAを継承し、間口を広げる「FG/FS7」
続いて新製品「FG/FS7シリーズ」のコンセプトを解説するのが、同部ギター事業企画課の中世景三さんだ。
「現在、FG/FSシリーズは、2023年に登場した最高峰「FG/FS9シリーズ」、伝統のデザインと現代サウンドを融合した「Red Labelシリーズ」、そしてエントリー層を支える定番「800シリーズ」を展開しています。今回登場する「7シリーズ」は、中~上級者が求める本格的なクオリティと手に取りやすいプライスゾーンを両立させたラインアップの中核です」と中世さん。
「最高峰の『9シリーズ』の圧倒的なダイナミクスと音の遠達性、力強く明瞭な音の立ち上がりを継承しながらも、より幅広い演奏スタイルや環境に合う「懐の深さ」をもたせたのが『7シリーズ』です。シェイプは、力強い低音でコードストロークにも最適な「ドレッドノート(FG)」と、音の粒立ちが良く指弾きにも適した小ぶりな「コンサート(FS)」を用意。木材には、深みのある低音と豊かな倍音の「インディアンローズウッド(R)」と、温かみのある中域と軽やかさが魅力の「アフリカンマホガニー(M)」の2種類をラインアップし、さらにそれぞれエレアコを加え、合計8モデル展開となります」。
デザイン面では、サウンドホールに「しめ縄」をモチーフとしたインレイを施し、内部のラベルには和紙を採用。ポジションマークには「組木」を着想源としたデザインを取り入れるなど、トラディショナルな佇まいの中に日本の美意識とハイエンドな高級感を漂わせている。
そして名ギタリスト、佐橋佳幸さん降臨!
「僕らの世代にとってFGと言えば『最初に手にする、手軽で使い勝手のいいギター』というイメージでした。最高峰の『9シリーズ』は本当に素晴らしい出来で、すでに仕事現場でガンガン使っていますが、『もうちょっとリーズナブルだと嬉しいな』と思っていたら、今回の『7シリーズ』の連絡をいただいて。これは期待できますね!」
ローズウッドモデル(FG7 RX)を手にした佐橋さん。中低域のふくよかな鳴りを確認しつつ、プロの視点から絶賛したのが「ピッチ(音程)の精度の高さ」だ。
「僕らプロのギタリストが仕事で一番時間を使っているのって、実はチューニングなんです。ヴィンテージのギターは木が育っていて良い音だけど、ハイポジションに行くとどうしてもピッチが合いにくい。でも、このギターはメーター上だけでなく、実際に高音域を弾いた時のピッチの決まり方が本当に気持ちいい。チューニングが正確っていうのは、それだけで演奏のストレスが劇的に減るんですよ」と佐橋さん。
現場目線で語るボディシェイプとアンサンブルのリアル
続いて、コンサートスタイルの小ぶりな「FSシリーズ」の試奏へ。抱えやすさに満足気な表情を見せた佐橋さんは、バンド編成やライブ現場における小ぶりなボディの優位性について持論を語った。
「小ぶりなギターは抱えていて楽だし、ライブやレコーディングで非常に重宝します。ボディが大きいと、ドラムのバスドラやタムの低音と共振してしまって、マイクやラインに余計な『被り』が入っちゃうんですよね。その点、このコンパクトなボディは余計な低域が膨らみすぎず、音響さん(PA)にとっても扱いやすい。アンサンブルの中で他の楽器とぶつからず、綺麗に抜けていくと思います」。
今回試奏した4種類のエレアコのうち、佐橋さんが絶賛したのが、コンサートスタイル&マホガニー仕様の「FS7 MX」だ。
「すごく良いね! 上(高音域)が綺麗に伸びていて、軽やかで明るい。バンドの中で弾くなら、僕はこれが一番好きかもしれない。ただのドミソのコードを弾くだけで、ピッチが良いから音が綺麗に響いて本当に気持ちがいい! これ、お安くなります?(笑)」
また、エレアコモデル「MX/RXシリーズ」に搭載されているのがヤマハ独自のピックアップシステム「Atmosfeel(アトモスフィール)」だ。アンダーサドルピエゾ、胴内の空気感を拾うマイク、表板の振動を拾うコンタクトセンサーの3つを統合したこのシステムは、ボディを叩く繊細なタッチや生の鳴りをナチュラルに出力する。
「ピエゾピックアップ独特な硬さだけじゃなく、ボディの生の響きがしっかり音に乗っている。これならライブハウスでもマイクを立てずに一本でいけますね!」と太鼓判を押した。
「昔からのFGのサイズ感や親しみやすさを持ちつつ、レンジの広さや豊かなサウンドを求めるならドレッドノート、軽快なフィット感と抜けの良さを求めるならコンサート。明確なキャラクターの違いがあって、どれを選んでも間違いがないクオリティです!」と、佐橋さんは納得の表情でステージを後にしたのだった。
文/前田賢紀




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