ロボット社会における未来の日常を描きつづけてきた人気シリーズ『機動警察パトレイバー』。本作はなぜ世代を超えて支持されつづけるのか、監督、プロデューサー、著名人ファンへのインタビューを通して、その舞台裏と尽きない魅力を徹底解剖。最新グッズ情報もあわせてお届けする完全ガイド。
今回は幼少期からの大ファンだというマフィア梶田さんに話を聞いた。
幼少期からの大ファンであるマフィア梶田氏が力説!
なぜ 『パトレイバー』は今なお語り継がれるのか?
子供の時と大人になってから、二度出会った──そんな梶田さんが熱く語る『パトレイバー』=タイムカプセル論!

パトレイバーファン歴20年超!
マフィア梶田さん
フリーライターやラジオパーソナリティ、MC、俳優など、なんでもこなすエンタメ界の傭兵稼業。映画『シン・ゴジラ』やNetflix版『シティーハンター』に出演し、強烈な印象を残した。その特異なキャラクター性から、ゲームや漫画作品に本人役として登場することも多い。
自身のYouTubeでも作品愛を語る!

『機動警察パトレイバー HEADGEAR+展』を訪問し、初期OVAの成立から最新作「EZY」までの歴史に触れて〝パトレイバー愛〟がほとばしる。「苦労を知ってから見ると面白い作品」としみじみ。
社会の荒波にもまれて30歳での「出会い直し」
自分と『パトレイバー』の出会いは、子供の頃に海外に住んでいたのがきっかけでした。親父が日本出張のたびにVHSビデオでテレビ版を撮りだめて、持ち帰ってくれたんですよ。その後、自分も夏休みで日本に帰国した際、テレビの傑作選枠で初期OVA(アーリーデイズ)を観たんです。真昼間からあんなにマニアックな作品を放送するなんて凄いセンスですね(笑)。当時はロボットの活躍を追うだけで、作品の奥深さは理解していませんでした。
それが30歳を過ぎ、社会の荒波にもまれてから「もう一度観直してみよう」と思い立ち、『アーリーデイズ』から観直してみたら……言葉を失うほど面白かった。社会に出て初めて、その世界観がいかによくできてるかが見えてきたんです。
『パトレイバー』は、観る年代によって自分が主人公だと思う相手が変わるんです。子供の頃はパイロットの野明を中心に観ていたけれど、30歳を超えてみると後藤隊長に目が行ってしまう。「カミソリ後藤」が切れすぎて左遷された意味なんて、さすがに子供には分かりませんよね。社会に出て、組織の理不尽さや生々しい経験をして初めて、見方のレイヤーが深くなるんですね。
子供の頃の「あのおじさん、何だったんだろう?」という伏線を、大人になって回収する。これってすごい「タイムカプセル」ですし、子供のうちに出会えたのは、本当に幸せなことだと思います。
特定のキャラというより「特車二課という生態系」や世界観がたまらない。生活感のある日常会話、町の人に怒鳴られながら犯罪者と泥臭く渡り合うリアル。そして珍事件から深刻なテロまでの高低差、そのすべてが愛おしいんです。

刑事ドラマとしての面白さ、AI大混乱時代での「EZY」
『パトレイバー』にはテレビ版やコミックなど異なる世界線がありますが、俺の好みは『アーリーデイズ』から『劇場版1』や『劇場版2』につながるラインで、その辺が推しになっています。敵役である甲斐や帆場、柘植達が、この世界を社会的・政治的に一段深める要因になってると思うんですよね。
未視聴の人に『パトレイバー』を勧めるなら、『踊る大捜査線』のような刑事ドラマが好き? ロボットはパトカーみたいな備品だから大丈夫だよと、早口のオタクにならずに布教しますね(笑)。
やはり語らずにいられないのが、後藤隊長の魅力です。大人として憧れるポイントは3つあります。
まずは「政治力と人脈」。武力に頼らず、交渉や組織間の根回しだけで事態を収束させるカッコ良さは大人の特権です。次に「交渉のリアリティー」。正義のために部下をけしかけ、上司を巻き込んで自ら泥をかぶる。汚さも引き受けるリアルさがあります。そして、一番共感する「自営業的責任感」。自分も個人事業主として、交渉も実務も自分の看板で回すので、後藤さんが孤独の中で背負う責任の重さが骨身に染みて分かる。俺もあんな風になれるとは思いませんが、本当に凄すぎる人ですよ。
現在公開中の『EZY』は10年ぶりのアニメとして、特車二課の魂がどう継承されるかというファンの期待もありますが、何より今の「AI大混乱時代」だからこその意味があると思っています。
かつて『劇場版1』で、暴走したプログラムに動かされる零式が最高効率で人間を排除しようとした不気味な恐ろしさは、現代のドローンや自動化された兵器の台頭によって、完全に現実のものになりました。思考や機械の操作をAIに依存している現代だからこそ、あえて人間が乗り込み、自らの責任と魂で「手動(マニュアル)」で動かすレイバーが、逆説的にかつてない輝きを放つはずです。『パトレイバー』が『パトレイバー』たり得るのは、人が乗り込んでいるからだと思っていて、人の正義感や魂がないと、危ういんですよ。
デジタル世代は生まれた時からスマホがあるからインスタントカメラに価値を感じるように、オートマ全盛期だからこそマニュアル車の運転技術に憧れる。そうした『普通の人間のカッコ良さ』の延長にこそ作品の価値がある。自分で物事を決めて自分の責任で動かすことは、とても大事だと思うんです。『EZY』が今の子供たちにとって、大人になった時の新たな「伏線」になれば最高ですね。
『パトレイバー』の時空は大まかに3つから構成される
【1】OVAから続く世界線
一話完結でバラエティ色豊かだが、第5・6話の「二課の一番長い日」のシリアスな軍事色が劇場版1・2作へと発展していく。唯一グリフォンが出ない。

【2】漫画から続く世界線
警察組織が丁寧に描かれる一方で、「社会の闇」への踏み込みも深い。名悪役・内海課長を軸とした「グリフォン編」がドラマの中核となっている。

【3】TVアニメから続く世界線
主人公の泉野明が特車二課に入隊するところから仕切りなおされた世界線。最もコメディ色が濃く、漫画版のストーリーも取り入れられている。

メディアミックスの先駆的作品でもあり
物語を楽しめる媒体は多岐にわたる

未視聴勢へのオススメポイント!
パトレイバーの魅力とは普通の人間のカッコ良さにある!

取材・文/多根清史 編集/轡田緒早
© HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会
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