令和6年に独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターが実施した「飲酒と生活習慣に関する調査(2026年6月30日参照)」(研究代表者:木村 充)では、「過去1年間にアルコール使用障害が疑われる者*4の割合」は、全体で3.0%(男性5.4%、女性0.8%)であり、全国で304万人と推計された。
沢井製薬は、AUD*2(アルコール使用症/アルコール使用障害)に関する啓発活動の一環として、全国の20~60代の会社員・公務員(1,000名)と1年以内に社会人になった人(200名)、合計1,200名を対象に「飲酒」および「AUD(アルコール使用症/アルコール使用障害)」をテーマとした調査を実施。
「さくらの木クリニック 秋葉原 院長 倉持 穣先生」の監修のもと、「企業・組織における飲酒実態調査 2026」として結果を発表したので詳細をお伝えしよう。
7割以上の会社員・公務員は「飲酒教育」を受けた経験がない!企業・組織における飲酒教育の実態
はじめに、20~60代の会社員・公務員(1,000名)に対し、自身が属する企業や組織において「飲酒に関するセミナー・研修・情報提供」の有無を問うと、7割以上(76.9%)が「一切受けたことがない」と回答。
「セミナー・研修」を受けたことがあると回答したのは1割にも満たない(5.7%)ことが分かった。
また、部下を持つ経営層・管理職*6に対し、「部下の飲酒習慣を把握しているか」と問うと、6割以上(66.4%)が「把握していない*7 」ことが明らかに。
*6:全体[20~60代の社会人(1,000名)]のうち「経営層/部長/課長・マネージャー/主任・リーダー」のいずれかの役職に就いており、部下がいると回答した人(202名)。
*7:「全く把握していない」または「あまり把握していない」と回答した割合の合計値。
[倉持 穣先生 コメント]
飲酒問題は個人の嗜好にとどまらず、肝障害やうつ病などの健康問題、遅刻・欠勤や集中力低下による勤怠悪化、酒気帯び勤務や操作ミスによる労働災害にも繋がる恐れがあります。
また、酒席での飲酒強要をはじめとするアルコールハラスメントやモラルハラスメント、酩酊時の顧客対応トラブルなど、職場全体の安全性や信頼性を損なう要因にもなります。
そのため企業には、予防医学的視点から、社員に対して飲酒リスクや適切な飲み方を教育する機会を設けることが求められます。上司が部下の飲酒状況を日頃から大まかに把握しておく視点も重要です。
普段の飲酒状況、業界別では[建設・不動産]業界従事者が、職種別では[マーケティング/広報/企画]部門が多量飲酒の割合が最多
次に、調査対象者に「飲酒頻度」を質問したところ、13.2%が「毎日飲酒する」と回答した。年代別で見ると、この割合が最も高くなったのは60代(22.0%)という結果に。毎日飲酒する割合は年代に比例して高くなる傾向が分かった。
[倉持 穣先生 コメント]
年代が高くなるほど毎日飲酒する人は増加する傾向を認めました。アルコールには精神依存や身体依存があり、習慣性があります。飲み続けるうちに耐性が形成されるため、気づかぬうちに飲酒量も増えていき、誰でもAUD(アルコール使用症/アルコール使用障害)になり得ます。働き盛りの年代ほど要注意です。
また、過去1年間に、1度に6ドリンク以上を飲む(多量飲酒*8 )の頻度を聞くと、全体の15.2%が「1ヶ月に1回以上ある」と回答した。
当該頻度に関して、「業界別」に見てみると、全体平均(15.2%) より高くなった業界は、[建設・不動産(22.9%)]が最多ポイントとなり、次いで、[運送・物流(20.4%)]、[公共・インフラ・官公庁(16.1%)]という結果に。
逆に、[金融]業界の従事者は1年間における多量飲酒の頻度が最も少ない(9.5%)ことが分かった。
同様に「職種別」では、[マーケ・広報・企画(26.5%)]が最多となり、[営業(24.4%)]、[技術職・専門職(22.6%)]、[エンジニア・IT職(16.7%)]が平均ラインよりポイントが高い職種に。他方、「人事・総務(7.8%)」は、年間における多量飲酒の頻度が最も少ないことが判明。
*8:60グラムを超える飲酒|6ドリンク≒ビール500ml×3缶/ウィスキー180ml/焼酎300ml/ワイン3/4ボトル/日本酒3合
[倉持 穣先生 コメント]
業界別では、建設・不動産、運送・物流、公共・官公庁などの分野で高い傾向が見られました。職種別では、企画・広報、営業部門で多量飲酒の頻度が高い傾向を認めました。
これらの業界や職種では、仲間内での飲み会に加えて、取引先との業務上の会食や接待の機会が多いことも背景と考えられ、「飲むこと」自体が仕事の一部として組み込まれている場合もあります。
そのため、本人の自覚がないまま飲酒頻度や飲酒量が増加しやすく、習慣化によって健康問題につながる危険性にも注意が必要です。
企業・組織の「飲み会」への意識、職場飲酒文化の『役職別ギャップ』が明らかに
次に、今回の調査対象[20~60代の社会人(1,000名)]に加え、[2025年度に社会人になった方(200名)]をサンプルに追加し、企業・組織内における役職別*9における「職場での飲み会」 に関するアンケートを実施。「飲み会」への満足度、参加意向や参加する理由 について調査を行った。
満足度では、「新人・一般社員(25歳以下)」の約4割(38.5%)が満足、不満足と回答したのは約1割(9.8%)に留まる一方で、「中間管理職」の不満足度は18.6%と「新人・一般社員(25歳以下)」の9.8%のほぼ2倍に。
職場飲酒文化における「満足と不満」は、年代や職位によって大きく異なっていることが分かった。
*9:「新人・一般社員(25歳以下)」、「中堅以上・一般社員(26歳以上)」、「中間管理職(主任・リーダー/課長・マネージャー)」、「部長・経営層」として分類。
また、中間管理職・部長/経営層に対して「普段、外で飲む理由」を問うと、「先輩・上司との親睦を深めるため(40.3%)」、「後輩・部下との親睦を深めるため(36.5%)」、「同僚との親睦を深めるため(42.4%)」が上位3つの理由として挙がっていた。
中間管理職以上の職位の方は、「ストレスの発散」や「リラックス」など自身の休息に繋がる理由より、上司・同僚・部下など社内コミュニケーションの機会を得るために外で飲酒するケースが多いことがわかる。
[倉持 穣先生 コメント]
管理職以上の職位の方は、上層部との調整を行う一方で、後輩や部下の愚痴を聞きフォローする役割も担っており、常に気を遣う立場に置かれがちです。そのため、接待や歓送迎会などでも十分にストレス発散できないまま、“気遣い飲み”によって酒量だけが増えていくことが考えられます。
こうした積み重ねはAUD(アルコール使用症/アルコール使用障害)につながる危険性を高めます。二次会には参加しない、途中からソフトドリンクに切り替える、必要でない飲み会は断るなど、自分なりの減酒ルールを持つことが重要です。
3割以上が前日飲酒による翌日の業務への支障を経験!前日飲酒による業務支障経験者と飲酒習慣について
最後に、調査対象[20~60代の社会人(1,000名)]に対して、「前日飲酒による翌日の業務への影響」やAUDIT-Cの回答結果をもとに、「業務支障経験者*1」と「飲酒」・「AUD(アルコール使用症/アルコール使用障害)」との関連性について調査を実施した。
前日の飲酒により翌日の業務に支障が出た経験のある人は3割以上(31.6%)となった。具体的な支障内容を問うと、「体調不良(19.8%)」が最多となり、次いで「集中力の低下(10.1%)」という結果に。
さらに、「業務支障経験者」においてAUDIT-Cの回答結果を用いたスクリーニング*10を実施。業務支障経験があると回答した316名のうち4割(40.2%)が「AUDを含む高リスク飲酒群」*3であることが示された。
業務支障経験者の中には、単なる「飲みすぎ」ではなく、医学的な対応が必要とされる人たちが相当数潜在している可能性が示唆される。
*10:AUDIT- C(全3問12点満点)の回答において、「男性6点以上」、「女性4点以上」が「AUDITでの8点」に相当するとされており、本調査の監修者である倉持穣先生により「AUDを含む高リスク飲酒群」 と記載を行っています。詳細は*3を。
[倉持 穣先生 コメント]
「体調不良」や「集中力低下」などにより業務に支障が出ている飲酒は、単なる「飲み過ぎ」ではなく、AUD(アルコール使用症/アルコール使用障害)のサインである可能性があります。
AUD(アルコール使用症/アルコール使用障害)は飲酒習慣のある人であれば誰にでも起こりうる生活習慣病の一つです。今回、業務支障経験者の4割が「AUDを含む高リスク飲酒群」に該当したという結果は、企業にとって重要な警鐘といえます。
企業には、AUDIT-Cなどを活用した早期発見に加え、偏見なく相談・受診しやすい職場環境を整える視点が求められます。飲酒による業務支障を、「単なる飲み過ぎ」ではなく、医学的対応が必要となりうる健康問題として認識することが重要です。
さくらの木クリニック秋葉原 院長 倉持 穣氏の総括コメント
今回の調査では、7割以上の会社員・公務員が飲酒教育を受けた経験がなく、部下の飲酒状況を把握している上司も少数でした。
また、日本では依然として「飲まないと仕事に支障が出る」と感じやすい“酒飲み社会”が残っており、業界や職種による飲酒文化の偏りも認められました。
特に中間管理職では、“気遣い飲み”など業務上・対人関係上の役割を伴う飲酒が増え、酒量だけが増えていくことが考えられます。
働き盛りであり、家庭を支える世代だからこそ、AUD(アルコール使用症/アルコール使用障害)への正しい理解と適切な飲酒習慣を意識することが重要です。
企業には、飲酒に対する正しい知識の普及や相談しやすい環境づくりが求められます。また本人も、飲酒量の増加や体調不良を自己管理不足として抱え込まず、必要に応じて医療機関へ相談することが重要です。
調査概要
企業・組織における飲酒実態調査 2026
調査対象:全国の20~60代の企業や組織に属する社会人(1,000名)
TOPIC3では上記に加えて、全国の20~25歳の男女で、2025年度(過去1年以内)に社会人になった方(200名)|合計1,200名
調査期間:2026年4月3日(金)~4月6日(月)
調査方法:インターネット調査
※「沢井製薬調べ」
*1:沢井製薬実施の調査にて「前日の飲酒が原因で業務に支障が出た経験」の有無について質問し、具体的な業務支障経験の選択肢を選択した回答者を指す。
*2:AUDは、Alcohol Use Disorderの略称を指す。アルコールの摂取を自らコントロールすることが難しくなり、心身や社会生活にさまざまな影響を及ぼす疾患。国際的には医療・精神保健の観点から広く用いられている診断名で、軽度から重度まで段階的な症状が含まれる。本記事では、一部の箇所を除き「AUD(アルコール使用症/アルコール使用障害)」と記載している。
*3:本調査では、国際的に広く行われている10項目のアルコールスクリーニングテストのAUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)から、飲酒量(Consumption)に関連した最初の3項目だけをテストする簡易スクリーニングテストAUDIT- C(全3問12点満点)の回答を収集した。AUDIT-Cでは、「男性6点以上」、「女性4点以上」が「AUDITでの8点†a 」に相当するとされており†b、本調査の監修者である倉持穣先生により「AUDを含む高リスク飲酒群」 と記載を行っている。
†a:参考:厚生労働省,標準的な健診・保健指導プログラム(令和6年度版)
別添2 保健指導におけるアルコール使用障害スクリーニング(AUDIT)とその評価結果に基づく減酒支援(ブリーフインターベンション)の手引き(令和6年2月27日更新)
0~7点:問題飲酒ではないと思われる
8~14点: 問題飲酒ではあるが、アルコール依存症までは至っていない
15点以上: アルコール依存症が疑われる
†b:尾崎米厚:問題飲酒の簡易スクリーニング方法の開発に関する研究。飲酒関連問題を発生させないような、節度ある適度な飲酒量の検討.平成24年度厚生労働科学研究費補助金循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業 “我が国における飲酒の実態把握およびアルコールに関する生活習慣病とその対策に関する総合的研究平成24年度総括研究報告書(研究代表者樋口進)“
*4:AUDITは、WHOが作成したアルコール使用障害のスクリーニングテスト。尚、独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターの研究では、AUDIT15点以上/40点を「過去1年間においてアルコール使用障害が疑われる者」としている。
*5:国際的に広く行われている10項目のアルコールスクリーニングテストのAUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)から、飲酒量(Consumption)に関連した最初の3項目だけをテストする簡易スクリーニングテスト(全3問12点満点)を指す。
構成/Ara




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