ブタの腎臓の移植がヒトの腎臓の移植までの「橋渡し」に
ヒトのドナー腎を待っていた末期腎臓病の男性に遺伝子改変したブタの腎臓の移植を行ったところ、271日間にわたり透析を必要としなかったとする論文が、「The Lancet」9月12日号に発表された。
生きているヒトに対するブタの腎臓の世界で初めての移植は、2024年に米マサチューセッツ総合病院で行われた。患者は移植後52日で、移植とは無関係の心臓の問題により死亡した。
今回、遺伝子改変したブタの腎臓の移植を受けたのは、Tim Andrewsさん、66歳。移植は、2025年1月25日に行われた。移植された腎臓はただちに機能し、Andrewsさんは271日間、透析を受けずに生活することができた。移植14日後の生検ではT細胞介在性拒絶反応が認められたが、治療によって消失した。その後、移植された腎臓の機能は約6カ月間安定していたが、人獣共通感染症ではない細菌感染症の発症に伴い免疫抑制療法が減量された。その後、微小血管炎症と血管内皮障害が生じ、クロスマッチ試験では持続的に陰性であったにもかかわらず、血栓性微小血管症へと進行した。最終的に移植された腎臓は機能を失い、摘出された。
ブタの腎臓の摘出から82日後に、Andrewsさんは死亡したドナーから提供されたヒトの腎臓の移植を受けた。移植された腎臓はすぐに機能し、231日間の追跡でも、先行するブタの腎臓の移植によってヒトの腎臓の移植を妨げるような免疫学的感作が生じたエビデンスは認められなかった。
同病院の医師らによると、Andrewsさんの例は、生きているヒトへのブタの腎臓移植後に透析を必要とせずに生存した期間としてはこれまでで最長であり、その後にヒトの腎臓の移植へ移行した初めての例でもあるという。これまで、生きているヒトへの異種移植で移植臓器が2カ月を超えて生着した例や、ヒトの臓器が得られるまでの「橋渡し」として異種移植が利用された例は報告されていなかった。
論文の筆頭著者であるマス・ジェネラル・ブリガム移植科学センターのLeonardo Riella氏は、「現在、移植医療が直面している最大の危機は臓器不足である」とニュースリリースで指摘する。全米臓器分配ネットワーク機構(UNOS)によると、米国では常時約9万人が腎移植を待っており、1日当たり約11人が待機中に死亡している。Riella氏は、「末期腎不全患者にとって最善の治療選択肢が移植であることは分かっている。しかし、適切な時期に移植を行うためのヒトの腎臓が足りないのだ。われわれが思い描いているのは、異種移植によってこの不足を補うことだ。つまり、ヒトのドナー腎を待っている間、透析を受けずに済むようにする橋渡しとして、動物の腎臓を用いるのだ。長期的な安全性と耐久性が確立されれば、将来的には異種移植自体を恒久的な治療法として利用できる可能性がある」と述べている。
研究グループは、今回の実験的な治療への参加を決断したAndrewsさんを高く評価している。Riella氏は、「真の先駆者は患者たちである。こうした初期段階の研究に患者が進んで参加してくれることが、科学を前進させている。患者の信頼と勇気がなければ、われわれは今行っていることを実現できないだろう」と述べている。(HealthDay News 2026年9月9日)
Copyright (C) 2026 HealthDay. All rights reserved.
写真:Tim Andrewsさん(中央)とマサチューセッツ総合病院の外科医たち Photo Credit: Kate Flock/Massachusetts General Hospital
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(26)01295-X/abstract
Press Release
https://news.massgeneralbrigham.org/en/pig-kidney-xenotransplant-bridge-to-human-transplant
構成/DIME編集部
ブタの腎臓の移植がヒトの腎臓の移植までの「橋渡し」に
ヒトのドナー腎を待っていた末期腎臓病の男性に遺伝子改変したブタの腎臓の移植を行ったところ、271日間にわたり透析を必要としなかったとする論文が、「The Lancet」9月12日号に発表された。
生きているヒトに対するブタの腎臓の世界で初めての移植は、2024年に米マサチューセッツ総合病院で行われた。患者は移植後52日で、移植とは無関係の心臓の問題により死亡した。
今回、遺伝子改変したブタの腎臓の移植を受けたのは、Tim Andrewsさん、66歳。移植は、2025年1月25日に行われた。移植された腎臓はただちに機能し、Andrewsさんは271日間、透析を受けずに生活することができた。移植14日後の生検ではT細胞介在性拒絶反応が認められたが、治療によって消失した。その後、移植された腎臓の機能は約6カ月間安定していたが、人獣共通感染症ではない細菌感染症の発症に伴い免疫抑制療法が減量された。その後、微小血管炎症と血管内皮障害が生じ、クロスマッチ試験では持続的に陰性であったにもかかわらず、血栓性微小血管症へと進行した。最終的に移植された腎臓は機能を失い、摘出された。
ブタの腎臓の摘出から82日後に、Andrewsさんは死亡したドナーから提供されたヒトの腎臓の移植を受けた。移植された腎臓はすぐに機能し、231日間の追跡でも、先行するブタの腎臓の移植によってヒトの腎臓の移植を妨げるような免疫学的感作が生じたエビデンスは認められなかった。
同病院の医師らによると、Andrewsさんの例は、生きているヒトへのブタの腎臓移植後に透析を必要とせずに生存した期間としてはこれまでで最長であり、その後にヒトの腎臓の移植へ移行した初めての例でもあるという。これまで、生きているヒトへの異種移植で移植臓器が2カ月を超えて生着した例や、ヒトの臓器が得られるまでの「橋渡し」として異種移植が利用された例は報告されていなかった。
論文の筆頭著者であるマス・ジェネラル・ブリガム移植科学センターのLeonardo Riella氏は、「現在、移植医療が直面している最大の危機は臓器不足である」とニュースリリースで指摘する。全米臓器分配ネットワーク機構(UNOS)によると、米国では常時約9万人が腎移植を待っており、1日当たり約11人が待機中に死亡している。Riella氏は、「末期腎不全患者にとって最善の治療選択肢が移植であることは分かっている。しかし、適切な時期に移植を行うためのヒトの腎臓が足りないのだ。われわれが思い描いているのは、異種移植によってこの不足を補うことだ。つまり、ヒトのドナー腎を待っている間、透析を受けずに済むようにする橋渡しとして、動物の腎臓を用いるのだ。長期的な安全性と耐久性が確立されれば、将来的には異種移植自体を恒久的な治療法として利用できる可能性がある」と述べている。
研究グループは、今回の実験的な治療への参加を決断したAndrewsさんを高く評価している。Riella氏は、「真の先駆者は患者たちである。こうした初期段階の研究に患者が進んで参加してくれることが、科学を前進させている。患者の信頼と勇気がなければ、われわれは今行っていることを実現できないだろう」と述べている。(HealthDay News 2026年9月9日)
Copyright (C) 2026 HealthDay. All rights reserved.
写真:Tim Andrewsさん(中央)とマサチューセッツ総合病院の外科医たち Photo Credit: Kate Flock/Massachusetts General Hospital
(参考情報)
Abstract/Full Text
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(26)01295-X/abstract
Press Release
https://news.massgeneralbrigham.org/en/pig-kidney-xenotransplant-bridge-to-human-transplant
構成/DIME編集部
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