福沢諭吉が動物園という言葉を作ってから約160年。最初は珍しい動物を展示する庭園だったが、今では絶滅危惧種の保全や疾病動物の保護だけでなく、地域活性化や文化発信拠点へと進化してきた。秋の訪れとともに、生き物たちが生き生き活動する姿を楽しみながら、動物園と水族館の新しい姿を体験してみよう。
動物園が中心となった循環型モデル
川崎市内の未利用資源を、収益源に転換する地域循環モデルの実証実験、「夢見ヶ崎プロジェクト」がスタートした。三菱化工機と川崎市が中心となって、循環型社会の実現を目指した活動である。夢見ヶ崎動物公園(神奈川県川崎市幸区、園長浅井威一郎氏)で発生した資源を、経済活動にまで発展させた、全国でも珍しい事例である。
鳥類やレッサーパンダなどの食べ物の残り、あるいは食べられない皮など未使用部分(残さ)や動物の糞尿などを堆肥に変換する。その堆肥を園内や園内近くの農作業場で利用して、農作物をビールや和菓子など、地域オリジナルの商品を開発・販売していく。
もともと夢見ヶ崎動物公園は入場無料だが、開発したオリジナル商品の販売利益の一部は、動物公園に寄付される仕組みになっている。これらのプロジェクトを可能にしたのはkomham(コムハム:本社北海道札幌市、代表西山すの氏)が開発した、生ごみ処理機(スマートコンポスト)。ソーラー発電により電源を使わず、排水処理なして、高い分解力を誇る。同社が開発した微生物が、残さを分解して堆肥に変換させる。
さらに夢見ヶ崎動物公園のある幸区の施設やNPO法人などから、農作物作付け地の提供を受けて、作物を栽培している。育った作物の一部は動物たちの食べ物としても利用されるほか、地元の創業110年を超える老舗和菓子屋「菓寮 東照」が製菓材として利用し、新しいお菓子を開発中である。川崎を代表するブルワリー「東海道BEER川崎宿工場」ではホップを育てて、オリジナルのビールを発売予定となっている。
「夢見ヶ崎プロジェクト」に参加しているのはビールや和菓子メーカーの他にも川崎のソウルフード「元祖ニュータンタンメン本舗」や、川崎を拠点に日本初のプロダンスリーグ(D.LEAGUE)に参戦している強豪「KADOKAWA DREAMS」。地元インフルエンサーやご当地アイドル、さらには地域の子どもたちと幅広いメンバーから構成されている。
動物園が中心となった循環型プロジェクトは全国的にも珍しい取り組みで、設立以来、地元の人たちに愛され続けた、地元に根付いた動物園だからこそのプロジェクトである。上野や多摩動物公園などには見られない、親しみやすい展示と動物たちの生き生きとした姿を見に、来園して欲しい。可愛いインコもお迎えしてくれる。
しながわ水族館の特別展を楽しむ
動物園ときたら、次は水族館。日本で最初の水族館は、上野動物園内にできた観魚室(うおのぞき)である。四方を海で囲まれた海洋国家日本では、古くから魚を鑑賞して愛でる文化が根付いていた。江戸時代には庶民の間で鑑賞用の金魚の飼育がブームとなるなど、魚を愛する人は多い。
ファンの間では「しなすい」の愛称で知られるしながわ水族館(東京都品川区)は、今年10月、開館35周年を迎える。これを記念して、世界的ベストセラー絵本『はらぺこあおむし』の特別展「エリック・カールと いのちの色 ー同じ世界で、ちがう色ー」を12月25日まで開催している。
『はらぺこあおむし』の日本語版50周年をあわせて記念する取り組みで、「同じ世界に生きていても、いきものたちはそれぞれ違う“色”で輝いている」という水族館のメッセージを、実際の生き物の色で再現したユニークな取り組みとなっている。
水族館や動物園などでの企画展は、展示する生き物に関連したものが多い。上野動物園では9月にゴリラクエストというゴリラの日に合わせたイベントを開催する。今回のしながわ水族館の展示は絵本を取り上げている点がユニークである。大人も子どもも「いきもの」という広いカテゴリーから、多様性について学ぶことができる。
特別展会場となるクマノミルームを装飾し、会場内を「アートと色」、「擬態と観察」の2つのコーナーで構成されている。「アートと色」では生き物たちの鮮やかな体色や不思議な模様の秘密に迫り、「擬態と観察」では、周囲の環境に巧みに溶け込む擬態の技をじっくり観察できる仕組みである。
館内には特別展会場以外でも『はらぺこあおむし』のイラストが展示されているので、宝探し的に館内を歩くのも楽しそう。子どもたちには塗り絵コーナー、絵本が読めるライブラリーもある。絵本の世界に入り込めるような体験コンテンツが揃っていた。
来館したらぜひ飲んで欲しいのが併設されたドルフィンカフェの限定のコラボレーションドリンクである。「お腹いっぱい ふとっちょあおむしソーダ」「イルカ親子のお散歩ソーダ」は、大人にはちょっと恥ずかしいネーミングだが、思い切って注文してみて欲しい。さわやかな炭酸が身体を潤してくれる。涼しい季節、屋外ベンチで池を眺めながら飲むのがお勧めである。
最近の動物園と水族館では、特に動物福祉(アニマルウエルフェア)に則った展示や運営が課題となっている。生き物の姿が見えにくかったり、隠れた場所が設置されていたら、それは動物の習性を意識した工夫なのかも。見学中に、どこが動物に優しくなっているか、探す楽しみもある。進化する動物園と水族館の姿をこの秋、確かめてみては。
文/柿川鮎子




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