ふるさと納税の返礼品は、何も「モノ」である必要はない。
仮に返礼品を「モノ」だけに限定してしまった場合、そこに自治体間の大きな格差が生まれるのは火を見るより明らかである。観光客の受け入れは盛んだが、製品を作っているわけではない自治体はどうすればいいのか? そして、地域の見どころは何も「モノ」には限らないだろう。このような背景から、最近では花火大会のチケットを返礼品に設定する場合が相次いでいる。
花火大会の特等席は、魅力ある返礼品になり得る……のだが、一方で問題も発生しているようだ。
長岡市の花火大会では…
2025年12月のことである。新潟県長岡市の公式サイトが、以下のようなお知らせを公表した。
【重要】「長岡まつり大花火大会」観覧席チケット取扱終了のお知らせ
これによると、毎年夏に開催される長岡まつり大花火大会の観覧席をそれまでふるさと納税の返礼品として提供していたが、令和7年即ち2025年を最後にこれを取りやめるという内容だ。
長岡市では、ふるさと納税の返礼品として「長岡まつり大花火大会」の観覧席チケットを提供してまいりましたが、令和7年をもって取扱を終了することといたしました。
本件は、ふるさと納税制度の意義と花火大会の開催趣旨を踏まえて、総合的に判断したものです。これまでご寄附いただいた皆さまには心より感謝申し上げます。
(長岡市ふるさと納税)
このお知らせには、なぜ観覧席チケットの提供を終了するのかが書かれていない。それについては、地元メディアの新潟日報が詳しく報道している。
長岡市は毎年8月2、3日に開かれる長岡まつり大花火大会の観覧席チケットについて、2026年度から、ふるさと納税の返礼品にしないことを決めた。チケットの人気が高まり争奪戦になっていることや、返礼品によるチケット入手が転売目的となっている可能性があることを踏まえた。
(転売対策で決断…「長岡花火」ふるさと納税の返礼チケットを廃止、市民感情に配慮 新潟日報)
驚くべきことに、返礼品それも「モノ」ではないイベントの入場チケットを転売する者が存在するというのだ。
長岡まつり大花火大会は、全国有数の規模と巨大な正三尺玉の打ち上げでよく知られている。打ち上げ数は2日間で約2万発、東日本大震災が発生した2011年においても開催を敢行した。そんな花火大会だが、それ故に観覧席チケットは毎年高い人気を誇る。

※写真はイメージです。
こうした現象は、ここ10年の間に我々が何度も見てきた光景であり、未だにその解消する手段は確立されていない。
もちろん、この現象は何も長岡市に限った話ではないだろう。
もしも自治体がこのような「返礼品の転売」に一矢報いるとしたら、宝塚歌劇団や劇団四季の転売対策がそうであるように「転売チケットの無効化」や「容赦のない警察への通報」が考えられるだろう。なお、この記事を執筆している最中に劇団四季の公演チケットを不正に転売していた人物が警察に逮捕されるということが起きている。こうした強気の対応に出られるかどうかが、今後の「返礼チケット」の存続を左右するのではないか。
中止になっても返金不可!?
ふるさと納税の返礼品としての花火大会チケットという主題でさらに筆を進めると、これにはもう一つ大きなリスクが潜んでいる。
それは「中止の際に払い戻しの対象にならない」という点だ。
以下はふるさと納税サイト『ふるさとチョイス』の、2026年の世田谷区たまがわ花火大会観覧チケット返礼品に関するページの一文である。
※寄附金はいかなる理由があっても返金しません。花火大会中止の場合も返金及び代替品の発送は行いません。
(【2026】世田谷区たまがわ花火大会の有料観覧席チケット・ふるさと納税返礼品 ふるさとチョイス)
世田谷区に限らず、実際問題こうした対応を取っている自治体が多数派ではないか。
これを鑑みると、ふるさと納税の返礼品に花火大会のチケットを求めるというのはだいぶリスキーだということが分かる。花火大会というのは、悪天候や社会情勢に極めて弱い。たとえば、静岡県静岡市の安倍口花火大会は2018年、2019年と2年連続で台風に見舞われ、その後2020年と2021年はCOVID-19によるパンデミックが影響し、実に4年連続の中止を余儀なくされた。桟敷席のチケットを「購入」した場合であれば払い戻しはあるはずだが、「寄附」の結果としての返礼品の場合はどうか。
以上の理由から、ふるさと納税の返礼品としての花火大会チケットは確実性という意味ではどうしても疑問符がついてしまうのだ。
「非モノ系返礼品」のリスク
一方、自治体からすれば「モノ」ではない返礼品はいろいろと都合がいいという事情があるようだ。
「都合がいい」というのは、配送料が殆どかからないという意味である。
国が定めるふるさと納税に関する「5割ルール」とは、寄附総額のうち諸々の経費を5割以下にしなければならないものだ。しかし、最近の輸送費用の高騰が全国各自治体とふるさと納税事業に関わる業者を圧迫している。自治体が5割ルールに従わなければふるさと納税制度から除外されてしまうが、そのルールが結果として寄附金から利ザヤを奪っているという現状があるという。
それ故に、配送料が発生しない形の返礼品は自治体にとっての「希望の星」になり得るが、花火大会チケットのように転売や大会そのものの中止というリスクと抱き合わせになってしまっているという「引き換え」も露呈してしまっている。
参考
長岡市ふるさと納税
転売対策で決断…「長岡花火」ふるさと納税の返礼チケットを廃止、市民感情に配慮 新潟日報
【2026】世田谷区たまがわ花火大会の有料観覧席チケット・ふるさと納税返礼品 ふるさとチョイス
文/澤田真一
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