ふるさと納税というのは、言い換えれば「自治体同士の過酷な競争」である。
どの物品をいくらで提供するか。基本的にはそうなのだが、問題は国がいろいろと規制や条件を設定しているという点だ。これに違反すれば、まさにF1レースのように出場権を取り上げられてしまう。自治体にとっては、極めて熾烈かつ一瞬の気も抜けない競争に違いない。
が、逆に言えば創意工夫により「今までに見たことのなかったふるさと納税」を確立させることもできるという意味である。今回はふるさと納税サービス『あとふる』について取り上げながら、ふるさと納税という仕組みそのものの発展性について考えていきたい。

返礼品は「旅行先でのモノやコト」
旅行では、必ずその地域の「もの」を消費する。
それは土産物であったり、料理であったり、アクティビティーであったり。ホテルを利用しただけでは「旅行」とは言えず、現地で遊んだり満腹になったりしてこその旅行である。では、そうした「体験」そのものをふるさと納税の返礼品にしたらどうだろうか?
『あとふる』は、後納型ふるさと納税サービスである。「後納型」とは一体何か? 以下は2025年6月10日にPR TIMESで配信された『あとふる』のプレスリリースだ。
株式会社電算(本社:東京都中央区、代表取締役社長:河野 純、以下「電算」)は、地域訪問中の消費行動を起点に寄付を行う新たなふるさと納税サービス「あとふる」の提供を開始しました。
(中略)
「あとふる」は、利用者が地域を訪問した際に「泊まった」「食べた」「買った」といった地場での体験を、あとからふるさと納税の返礼品(3割相当)として指定し、残りの金額を寄付(7割相当)として納められる新しい仕組みです。
対象施設・店舗のレシートを「あとふるアプリ」に登録すると、金額にもとづき追加寄付額が自動算出され、アプリ上でそのまま決済が可能です。これにより、ふるさと納税が成立します。
(地域消費起点のふるさと納税サービス「あとふる」を自治体向けに提供開始 株式会社電算 PR TIMES)
要は、旅行にかかる費用のレシートをアプリに登録することで、それ自体(レシートに記載されている商品やサービス)を返礼品にしてしまうという仕組みだ。これはもちろん、『あとふる』対象の店舗での買い物・施設利用に限るものである。寄付金相当分の決済は、アプリと紐付けのクレジットカードで行う。広義の意味合いでのキャッシュレス決済アプリと言えるかもしれない。
現在、この『あとふる』が全国から熱い視線を浴びている。
想定される3つの利点
自治体や地域から見て、この後納型ふるさと納税サービスは以下3つの利点を見出せる。
まずは、通常のふるさと納税のような「品物を配送する」場合に必ず発生する送料を省くことができる点。これは上のプレスリリースにもこう書かれている。
自治体にとっては、返礼品の発注や発送管理といった返礼品送付に関する一連の業務が不要となり、ふるさと納税制度にかかる業務負担を大幅に軽減できます。また、初期費用・月額費用は不要で、寄付額に応じたプラットフォーム利用料と決済にかかる手数料および消費税で導入可能です。
(同上)
このあたり、実は全国自治体で大きな問題になっている。ここ最近の送料の高騰がふるさと納税の利益率を減らし、さらに国が定めた規制に接触してしまうケースも出てきたからだ。送料という、極めて頭の痛い問題をそのままショートカットできるのが『あとふる』である。
2つ目の利点は、地域の店舗にデジタルプラットフォームの導入を強く促すことができるという点ではないか。
地方では、都市部と比較してキャッシュレス決済やデジタル金融アプリに理解があるとはまだまだ言い難い。「地元の人は使わないし、私も使わない。だから、キャッシュレス決済は必要ない」という人も少なくないのが現状だ。そうした考えの個人経営店舗に対して、自治体がデジタル金融アプリとしての『あとふる』の導入をプッシュすればどうか。そうした面での地域のDX化が促進されるはずだ。逆に言えば、そのようなきっかけがなければ自治体が個人経営店舗に対して特定のデジタルプラットフォームの導入を促すのは難しいということだ。
3つ目の利点は、『あとふる』に対応していること自体が極めて強烈なPRになるという点である。
旅行者から見れば、『あとふる』をきっかけに「自分もふるさと納税を利用してみよう」という考えに至るかもしれない。むしろ、そうなる可能性は高いと言える。それは自治体にとっては、広告費をかけなくとも(返礼品に関する広告費には国が規制を定めているが)我が地元のふるさと納税をPRできるということではないか。
ふるさと納税の形が変わる!?
「物品を配送する形」のふるさと納税は、どうしても地域格差が出てしまう。
その地域にしかない農産物がある自治体は、非常に有利な立ち位置からふるさと納税を展開できる。が、中にはそのような目立った特産品を持っていない自治体もあり、結果としてだいぶ不公平な競争になってしまっているのでは……という声が今でも存在する。
そうした現状を、『あとふる』はどのように変えるのか。この記事を執筆している今も、『あとふる』に対応する自治体が増え続けている。その動向からは目が離せない。
参考
あとふる
地域消費起点のふるさと納税サービス「あとふる」を自治体向けに提供開始 株式会社電算 PR TIMES
文/澤田真一
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