三菱自動車のパジェロが復活した。
2026年9月2日にワールドプレミアを受け、12月の発売を予定する。
国内向けとしては2019年以来となるビッグネームの復活に話題沸騰中だ。
しかも今回はラダーフレーム構造を復活させており、〝本格オフロード四駆〟として帰ってくる。
世界的に人気のSUVは数多い。しかし、ラダーフレームを採用する本格オフロード四駆は限られる。
メルセデス・ベンツのGクラスやジープ・ラングラー、フォード・ブロンコといった海外ビッグネームや、トヨタ・ランドクルーザー、レクサス・LX/GX、スズキ・ジムニーなど国産勢がラダーフレームを採用する。
ボディ全体で強度や剛性を確保するモノコックボディと比べ、ラダーフレームはボディに多少のダメージを受けても、フレームが無事であれば走り続けられる。その安心感、タフさが本格オフロード四駆の存在意義となる。
さらに、新型パジェロは従来のパジェロシリーズの伝統を踏まえつつも、プレステージ性と先進的なデザインを加えている。
三菱自動車の岸浦社長も「歴代のフィロソフィーを受け継ぎながら、プレステージという新たな要素を加えた」と胸を張る。
しかも、それが美しい。ストレートに〝カッコイイ〟のだ。
機械式のダイバーズウォッチのようなタフさとプレステージ性
ただ移動するだけなら、安価で燃費性能に優れ、十分なスペースを確保したクルマが実用的だろう。
でもそれだけがクルマに求められる価値なのだろうか?
パジェロのような本格オフロード四駆を求めるユーザーは、タフで美しい相棒としてのクルマを必要としているはずだ。
たとえば機械式腕時計はどうだろうか? 時間を知るだけならスマホがあれば十分だ。でも、機械式腕時計には、プレステージ性や美しさ、フィロソフィーが求められる。
タフさとプレステージ性を両立した伝統ある腕時計ブランドは、世界中で高い人気を誇る。ロレックスやオメガ、タグ・ホイヤーといったビッグネームはすぐに思い浮かぶだろう。さらに、オーデマ ピゲ、ブランパン、パネライといったブランドも美しいダイバーズウォッチをラインアップする。
タフさならカシオのG-SHOCKが有名だ。こちらはクオーツではあるが、高級機械式腕時計とは違う圧倒的な存在感を持つ。しかし、プレステージという観点では、機械式腕時計のダイバーズウォッチに軍配が上がるだろう。
本格オフロード四駆はダイバーズウォッチに似ている。そして、新型パジェロがラダーフレームを再び選んだことは、ビッグネームの原点回帰であり、伝統とプレステージ性を兼ね備えるための必然だった……そう思えるのだ。
パジェロの伝統
三菱自動車は1953年にジープをノックダウン生産し、1956年から完全国産化を果たした。以来、その生産を通じて本格的な悪路走破性を習得した一方、ジープは実用一点張りで快適性という言葉とは無縁だった。
そのような中、1982年5月に誕生した初代パジェロはフロントにダブルウィッシュボーン式の独立懸架サスペンションを採用し、オフロード性能に加えて舗装路での操縦安定性を確保した。
また、デザインは内外装を水平基調でスクエアなものとした。これにより、4WDを特殊な業務用の道具から「レクリエーショナル・ビークル(RV)」という新しいライフスタイルへと昇華させたのだ。
また、1983年7月にロングボディ車を加え、さらに1985年にオートマチック車を追加するなど、乗用RVとしての魅力を高め、1987年には本革シートなどを採用した「エクシード」が登場。初代パジェロは約65万台の販売を記録し、2代目以降へとバトンタッチしていく。
さらにパジェロは、1994年に軽自動車の「パジェロミニ」を、1995年に「パジェロジュニア」(後に「パジェロイオ」へ進化)をラインアップ。パジェロを頂点としたフルラインアップを形成した。
懐古だけじゃないエクステリアデザイン
1991年1月に2代目パジェロへ生まれ変わった後も、1999年には3代目、2006年には4代目へとさらなる進化を遂げた。
3代目では従来のラダーフレーム構造から、ラダーフレームを内蔵した「ビルトインフレームモノコックボディ」へと進化。乗用車としての魅力を高めながらも、伝統の名の下で、デザインがコモディティ化していったことは否めない。
今回登場した5代目となる新型パジェロは、初代モデルの水平基調でスクエアな、塊感のある力強いプロポーションを受け継ぎながら、力強いフェンダーや立体感あふれるボディに生まれ変わっている。
デザインを担当した吉峰氏は、「日本から新しいパジェロを生み出す。日本にはパジェロがあると。単なる復活ではなく〝独創進化〟だ」とコメント。その言葉通り、パジェロらしさを持ちながらも、美しく新しいデザインに仕上がっている。
特に美しさを感じたのはフロントフェイスだ。
押し出しの強さを持ちつつも、LEDによるシャープなライトはクールな印象を与え、「日本の剣道に通じる内面の強さを表す」(吉峰氏)という言葉に納得する。
ボンネットはH型の形状となり、フェンダー部を高くすることでアグレッシブさを生みながらも、必要以上にボンネットを厚くせず、軽快さも感じさせるデザインが秀逸だ。
サイドビューも美しい。初代パジェロの水平ラインとロールバーから着想を得たCピラーを採用。
ただし、Cピラーを一部ブラックにすることで軽やかさも表現されている。
また、フロントフェンダー後方のフロントガーニッシュは、クラシックなデザインの中にアクティブさを表現する、小気味よいアクセントだ。細部へのこだわりがプレステージ性を生んでいる。
テールライトもT型のレイアウトとし、フロントデザインとの一貫性を感じさせる。LEDによりデザインの自由度が上がる一方で、フロントデザインとリアデザインがちぐはぐな印象のクルマも散見される中、統一感のあるデザインへと華麗にまとめている。
そして、ルーフラインもH型で中央部が薄くなり、縦方向の不要な厚みを抑えつつ、フロントボンネットからの流れを感じさせる。また、リアゲートも多角形とし、中央部を盛り上げながらサイドを絞り込むことで、重厚さの中にスポーティな印象を生んでいる。
さらに、ウエストラインから上部をブラックアウトし、リアゲート下もディフューザーのような印象を持たせるブラック基調で、不要な重い印象を消すことにも成功している。
フロントからサイド、リアへと一貫性のあるデザインにより、立体的な造形となった新型パジェロは、「独創進化」というコメントにふさわしい、2030年代に向かうパジェロの未来を予感させる美しさと、どこか懐かしいトラディショナルな魅力を見事に融合させた逸品といえる。
大型ディスプレイを使いながらもシンプルで50sモダンを感じさせるインテリアも美しい
インテリアデザインも完成度が高く感心させられた。
これまた初代パジェロのインテリアをオマージュした水平基調のインストルメントパネルを採用。
ただし、アナログのメーターから2枚の14.3インチ大型ディスプレイで構成されるモノリスディスプレイへとパーツが進化していることで、現代にふさわしい先進性を感じさせる。
インストルメントパネルやドアトリムに日本の伝統工芸「木目込み」にインスパイアされた縫製技法によるソフトマテリアルを用いるなど、細部まで仕上げに隙はない。
水平基調のデザイン、縫製にこだわった素材などの組み合わせにより、新型パジェロのインテリアはどこか50sモダンのデザインを意識させる。初代パジェロに「エクシード」が誕生してRVがゴージャスなインテリアを得たように、新型パジェロもまた、SUVのインテリアを新次元へと高めてくれる、そんなデザイナーの強い意志を感じる。
カラーリングの上質さも見逃せない。プレステージ性を感じさせるアーマーカッパーメタリックに加えて、ファントムブルーメタリックはマットな質感が好印象で、大人のカジュアルな魅力に満ちている。
タフな足回りとタフなエンジンがパジェロの命
デザインの秀逸さに感動を覚える一方、本格オフロード四駆としての走行性能も必見だ。
新型パジェロはボディサイズが全長×全幅×全高:4920×1925×1910mm、前後トレッドを1630mm、ホイールベースを2870mmとし、最低地上高は230mmに設定。30.4度のアプローチアングル、22.6度のランプブレークオーバーアングル、25.8度のデパーチャーアングルを実現している。
前後重量配分は52:48と最適化され、高剛性のラダーフレームに、フロントはダブルウィッシュボーン式独立懸架、リアに5リンク式リジッドを組み合わせ、優れた悪路走破性を発揮する。
エンジンは2.4Lのディーゼルターボエンジンを搭載。最大トルク480N・m(一部470N・m)を発生し、8速ATと組み合
10月1日より予約注文開始。刮目せよ!
新型パジェロの発表に合わせ、予約注文を10月1日から開始するとアナウンスされている。車両価格などの詳細は今後に注目してほしい。
車両の発売は12月を予定する。
パジェロらしい伝統の先へ。美しい本格オフロード四駆が欲しすぎる
初代パジェロの発売当時を知り、SUVの歴史を見守ってきた筆者にとって、新型パジェロの復活は衝撃的だった。三菱自動車は「復活ではなく独創進化」と言うが、筆者も強く同意する。初代以降、初めて〝新しいパジェロが生まれた〟という気持ちでいる。
2代目以降、伝統は継承されていても、挑戦という感じではない印象だった。そのためか、パジェロの存在感は徐々に薄れ、後発のSUVに人気を奪われていった……そんな苦々しい印象を抱いていた。
そこに現れた新生パジェロは「独創進化したパジェロ」という三菱自動車の思いを具現化した、見事なモデルチェンジだと思っている。
ヘッドライトを丸形にしてLEDを埋め込み、旧来のパジェロを印象づけるデザインでリリースする方法もあったかもしれない。しかし、初代パジェロを知る者としては「挑戦者」という立ち位置が、パジェロにはふさわしいと思っている。
ライバルはトヨタ・ランドクルーザーやメルセデス・ベンツのGクラス、そしてランドローバーなど強敵ぞろいだ。しかし、美しいデザインとタフな本格オフロード四駆を武器に、独自の地位を築き上げてほしい。
気になる価格は未公開ながら、購入欲は高まるばかり。本格オフロード四駆の新たな道のりに期待したい。
取材・文/中馬幹弘




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