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見渡す限り道がない!BMW「R1300GS」で挑んだモンゴルラリー、1026kmのオフロード大冒険記

2026.09.20

「Touratech Japan」一推し、自分のバイクでモンゴルを走る

発端は昨年、私がBMW R1300GSを購入してエンジンクラッシュバーを取り付けるためにツアラテックジャパンを訪れたことから。その時に社長の水谷太郎氏が一推しの企画、MDCR(モンゴル・デザート・チャレンジ・ラリー)を知った。水谷氏自らが2018年にGSでモンゴルを走った体験を元に、2024年からスタートしたアドベンチャー・ツーリングである。最大の特徴は自分のバイクで海外のオフロードを走れることだ。マップを頼りに目的地を目指すアドベンチャーDAYや、砂丘へのアタックなどが設けられ、競技ではないがチャレンジ・ラリーの名を冠している。

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すでにMDCR2026の申込みは開始され、もうすぐ定員に達するので興味があれば仮申込みだけでもと言われ、大型バイクでのオフロード経験ゼロにもかかわらずに参加を決めた。参加者向けの猿ヶ島での練習会が2月から、3回開催され、これがモンゴルよりハードな内容、練習は厳しく、本番は楽しくがモットーだという。5月25日にはバイクをコンテナに積み込んだ。今回のMDCRはグループ1とグループ2に分かれ総勢33名がモンゴルを走る予定だ。

猿ヶ島の練習会でメンバーと初顔合わせ。オフロードの基礎を学ぶ
5月にコンテナにバイクを積み込みモンゴルへ向けて発送

海外でマイバイクを走らせる冒険は、出発前から始まった

前回参加者に出発前に一番苦労したことを聞くと、荷物のパッキングが大変だったという。ヘルメット、ブーツ、ライディングスーツ、プロテクター、雨具、工具、交換用部品、防寒具、下着などを詰めると荷物はパンパンに。受託手荷物は23kgまで、これに機内持ち込み手荷物、ヘルメットは単体で持ち込めるという。パズルのような組み合わせで荷物を振り分けた。

今回、選んだのは「Osprey Sojourn Shuttle 100」。容積100Lで詰めやすくバックパックメーカーなので重量バランスがよく耐久性と信頼性が高い。機内持ち込み用は背負えるタイプの「Osprey Farpoint 40」。

左が機内持ち込み用40Lの「Osprey Farpoint 40」、右が100Lの「Osprey Sojourn Shuttle 100」
帰りのホテルで荷造りをしているところ、左上が「Osprey Farpoint 40」

見渡す限り道がない! モンゴルの大草原へ飛び出した

8月17日、ウランバートルのホテルをチェックアウトして、先に到着していたバイクと再会。右側通行の道路を間違えないように注意しながら、アドベンチャーバイクが隊列を組んで移動していく。モンゴルで走るのは、舗装路、未舗装路、そしてピストと呼ばれる何台ものクルマが走ったワダチ。ピストを外れて草原を走るオフピスト。石の多いガレ場、砂の多いサンド、ぬかるみや湿地帯など変化に富んでいる。

舗装路を外れて、草原に入ると突然、道がなくなり目的までは無限のルートを選択できる。目の前にはなだらかな丘があり、一列で走っていたバイクは横並びになって思い思いの速度で走り出す。一本道だった登山道が、好きなルートを選べる岸壁のフリークライミングに変わったような感覚。日本では道でない場所を走る機会自体がすごく少ないのだ。

約3ヵ月ぶりに自分のマシンと再会を果たした
チンギス・ハーンの騎馬像、高さ40mの前でメンバー全員でオフィシャルムービー用の記念撮影
撮影/山岸利幸氏
草原に入るとバイクは蜘蛛の子を散らすように走り出した
草原の丘に登ってランチタイム。Helinoxのグランドチェアで休憩。バッグ込で654gと軽量だが、背負うのが大変なので登場したのはこの時だけ
撮影/山岸利幸氏
ピストを走る。オフピストに比較すると穴や石がなく走りやすい

1日240kmのハードなオフロード走行

MDCRのスケジュールを見ると1日の予定走行距離が記載されている。バイク初日の慣熟走行が130km、翌日が150km、次が200kmと順調に走行距離は増え続けて5日目は240kmになる。これは東京から福島市までの距離であり、舗装路でなくピストを走るのだ。日本のオフロードツーリングでは、林道の距離より、往復の高速道路と舗装路の走行距離の方が多く、林道は20kmも走ればお腹いっぱいというパターンが多い。その10倍の距離を走れるかどうか、技術よりも体力が試される。

オフロード走行時はスタンディングといって、シートに座らずステップの上に立ってバイクを操作する。立ち上がることで遠くまで視界がひらけ、股や膝をサスペンション代わりにしてギャップの衝撃を抑える。体重移動で方向を変えやすくなり、ハンドルも抑えやすくなるなどのメリットがあるため、予想が立たないルートではスタンディング、フラットなダートなど路面が安定しているときはシッティングで走るのが原則だ。モンゴルの場合は、危険回避を考えると、ほぼスタンディングで走るのが理想。私は疲労回避のためシッティングばかりしていたため、複数のスタッフから、もっとスタンディングで走るようアドバイスを受けた。分かっちゃいるけどやめられないと思っていたが、立っていても座っていても疲労度は変わらないと言われ、スタンディングの際にふくらはぎを押していた非純正のサイドバッグを取り外すことでスタンディングに開眼、より安定した走行ができるようになった。

肝心の体力についてだが、ゲルに到着してシャワーを浴びて夕食、消灯。朝起きてコーヒーを飲む、朝食、出発。1時間走行して10分休憩をルーティンにして走り続けると体がその生活に慣れてくる。日本にいるときより快食、快眠で体調はすこぶる良かった。3回転倒して、雨に降られてゲルの入口が水たまりだらけのドロドロ道だった時は両足がつったが、最後は転ばずにゲルにたどり着けた。

スタンディングでピストを走ると牛、ウマ、羊、ヤギなど様々な動物に出会う
視線が高くなり、バイクの安定度が増すスタンディングポジション
撮影/政岡健太郎氏
広いピストでは70kmぐらい出せる。速い人は100km以上出ていると思う

250kg超えの巨体なのに走れる! BMW R1300GSの実力

MDCRの参加車両の規定に500cc以上のオフロードタイヤを装着したアドベンチャータイプのバイクが必須とある。アドベンチャータイプとは舗装路の長距離ツーリングと未舗装のダートや林道を走破できるバイクを意味する。そのルーツはBMWのGSシリーズにある。GSの最新モデルが「R1300GS」なので、MDCRに最適のバイクなのだ。参加者のマシンを見てみると18台中13台をBMWのGSまたはGSAが占めている。それ以外の車両はYAMAHA、KTM、Ducati、ハーレーダビッドソン「Pan America 1250」と定番のアドベンチャーモデルが揃った。

私のGSは参加車両中、2台しかないレアなASA仕様。つまりオートマチック・シフト・アシスタントでギアチェンジを自動化している。クラッチ操作不要で手元か足元でのシフトチェンジにも対応するが、オートマで走っていて問題なかった。ノークラなのでエンストの心配がなく、左手の操作がなくなるため大幅な疲労軽減を達成できた。超低速でも微妙なアクセルワークが効いて転倒の心配はなかった。電子制御システムのため転倒時に故障すると、その場での修理は不可能だが、クラッチレバーが折れて走行不能になるリスクがないのでどっちもどっちと思うことにした。

唯一、問題が発生したのは最終日の深いサンドで、6000回転まで回して一気にクラッチをつないで発進という方法が使えない。マニュアルモードからの発進も可能だがアクセルを開けると自動的に発進してしまう。予想通りにすぐにリアホイールが砂に埋まってしまい、代走してくれたスタッフに「ASAは地獄」と言わしめた。ここは想定よりもテクニカルな砂丘で他のマシンもスタックしまくっていたため通常のオフロードではASAのメリットはデメリットを上回ると感じた。

250kgを超える巨体は日本では取り回しが大変だが、360度を自由に走れるモンゴルでは安心安定してアクセルが開けられる。特に前後のサスペンションが優秀で草原に隠された穴や硬い草の塊をうまくいなしてくれる。複数あるピストの車線変更もステップを踏み込んだ体重移動で素早くマシンの向きが変えられる。水谷さん曰く、オンロードの走りも素晴らしいとのことで、世界的にも人気ナンバーワンの元祖アドベンチャーの実力を実感。私にとって有難いのは、何度転倒してもどこも壊れないことだ。ミラーは可倒式に、レバーはショートに交換、ステップは大型化して、付けられるガード類はなるべく付けている。トラブルと言えば石が跳ねてフロントフェンダーが割れたぐらいで、走行に支障をきたす故障は皆無だった。

サンドで転倒した瞬間。両手、両足がバイクから離れている。これがバイクの下敷きにならない転び方
サンドで後輪が埋もれた時にアクセルを開けると、さらに状態が悪化。一人では脱出できなくなる
スタッフによる代走でサンドから抜け出すR1300GS。ASAでの走行はエキスパートでも困難を極めた
撮影/政岡健太郎氏

走り終えた先に待っていたモンゴルの夜

モンゴルでの宿泊と言えばゲル。遊牧民の伝統的な移動式住居で、木製の骨組みと白いキャンバス地で覆われた円形のテントだ。羊毛で断熱されているため室内は予想外に温かい。MDCRでは初日と最終日のウランバートル以外は、ほぼゲルに宿泊した。キャンプ地にあるゲルは内部にベッドやテーブル、照明、コンセントが完備され、元祖グランピングと言えるほど快適。サイズは2名用から4名用まで様々だった。変化の乏しい風景を見ながら何時間も走り続けた果てに、白いゲルが視界に入ると今日の旅も終わりかと胸をなでおろしたものだ。

日没が迫るゲルキャンプサイト。ゲルを見るとホッとする
ゲルの内部にはベッドやテーブル、ストーブなどが置かれている
ゲルを利用して洗濯物を干す。ホッとする日常だ
朝食はバイキング形式のこともあり、キャビアやチーズが並んだ

バイクで走っているとき以外での楽しみは、食事と酒、メンバーとの会話、夕焼け、星空、朝焼け、コーヒーだった。最初はぎこちなかった参加メンバーもゲルで同室になるため段々と打ち解けてきた。特にマップアプリを頼りに決められた目的地をつないでいくアドベンチャーDayで結成されたチームで絆が深まった。18名のメンバーは通常、3つのグループに分かれて走行している。複数回参加者を含む速いペース、通常のペース、風景を楽しみたいのんびりペースである。私は未熟者なのでもちろんのんびりグループ所属で、アドベンチャーDayはこの中から5名の「チーム八兵衛」が結成された。名前の由来はリーダーが中華料理店のオーナーシェフで、その店名の八兵衛からとられた。チームで走行した時は隠れて見守るスタッフの心配をよそに、どんどんコースから外れても、元のピストに戻らず走り続ける楽天的な性格を発揮して、厳重注意を受けた。MDCR終了後もチーム八兵衛はLINEグループで繋がっている。

アドベンチャーDayに隊列を組んで走るチーム八兵衛

Insta360で記念撮影をする八兵衛さん
転倒した場合はチームメイトが駆け寄ってマシンを引き起こす
撮影/梶山新之介氏
チーム八兵衛、全員集合と思いきや1人足りないよ
撮影/金本幸洋氏

ツアー参加者の職業は企業の経営者が多数派で、あとはパイロット、バスの運転士、シェフなどの専門職で個性的な人が集まっていた。夕食後は消灯まで自由時間なので、お互いのゲルを行き来して、盛んに議論が行われていた。その内容はバイク談義にとどまらず、妻との接し方から、効率的な投資方法までバラエティに富んでいた。外に出ると満天の星空があり、天の川がハッキリと見えた。10時には消灯して、翌朝6時半にはスタッフが届けてくれるモーニングコーヒーで目覚める。そして朝食、8時か9時に出発。それの繰り返しで、段々とグレードの高いゲルになっていく。ゲルには早めに到着する予定になっており、モンゴルの祭に参加して、馬乳酒を飲んだり、モンゴル相撲を見たり、射的や弓矢を体験、夜はDJと屋外ディスコ、伝統楽器の馬頭琴に乗せてホーミーと呼ばれる一人二重唱のような詠唱法を聞いたりした。

お祭りの日におこなわれたモンゴル相撲は間近で見ると大迫力
雨がやんで丘の向こうに2つの虹が現れた
撮影/梶山新之介氏
ゲルの先に沈む夕陽が明日の天気を約束してくれる
馬頭琴の生演奏を楽しみながらの夕食
ゲルから一歩出るだけで天の川がクッキリ見える

1026kmを走って分かった「大人の冒険」の面白さ

R1300GSを手に入れたものの、その大きさと重さに恐れをなしてオフロードを走る機会はほとんどないだろうと思っていたのだが、MDCRに参加することで、いきなり1000kmのオフロード体験を楽しめた。チャレンジラリーの名称からイメージしていたのは、食事と睡眠時間以外は走り続ける過酷なものだったが、実際はゆとりあるスケジュールに手厚いサポート、転倒してもすぐにメンバーか、屈強な現地サポートのヘルプが入り、休憩地点では冷えた飲料水が配られホスピタリティは万全だった。パンクなどのアクシデントに関しても素早く対応されていた。

MDCRのリピート率は50%以上で、毎年申し込む人もいるという。私も次回なら、ここはもっとうまく走れるという想いがある。1回目はとにかく完走することが目的だったので、チャレンジしなかったが、2回目ならという気持ちで再度走りたくなる。なにより北海道の林道を走っても、モンゴルで味わったあの開放感は得られないだろう。そう薄々気付いている自分がいる。

1026kmを走りきってウランバートルに戻ったR1300GS
トリップメーターの走行距離は1026.8kmを示していた
現地のサポートメンバーが空港まで見送りに来てくれた
MDCR、9日間を終え帰国後の測定では、体重と骨格筋量が増え、体脂肪率は16.4%まで下がっていた

関連情報
Touratech

写真・文/ゴン川野

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