VTuberグループ「ホロライブ」の公式ゲーム「ホロライブドリームス(ホロドリ)」が9月に300万ダウンロードを突破、大ヒット作となりました。
このゲームがホロライブの新たなファンを獲得することができれば、運営会社であるカバーに多大な影響を及ぼす可能性が高く、ゲームがもたらす収益性の中身に注目が集まります。
サイバーエージェントは通期業績を上方修正
ホロドリはホロライブに所属するタレントの楽曲を題材とした音楽ゲーム。カバーとサイバーエージェントの子会社であるクオリアーツが共同で開発しました。
クオリアーツは恋愛ゲーム「ガールフレンド(仮)」や、バンダイナムコエンターテインメントとの共同開発で大ヒットした「学園アイドルマスター」を手がけている会社。モバイルゲーム業界の中でも、とりわけキャラクター造形に強い技術を持つことで知られています。キャラの魅力を最大限に引き出すことが得意な会社であり、ホロドリとは相性のいい会社でした。
ヒット要因の一つに、キャラクターを引き立たせる魅力にあふれていたことがあるでしょう。
クオリアーツの親会社であるサイバーエージェントは、ホロドリが200万ダウンロードを突破したとアナウンスした2日後に、2026年9月期の通期業績の上方修正を発表しました。売上高を従来予想比で8%、営業利益を最大で54%引き上げたのです。
上方修正の要因の一つとして「主力タイトルが想定以上の好調さで推移」していることを挙げています。ホロドリのように共同開発したゲームは収益分配型であることが多く、開発を担う会社への恩恵も極めて大きくなります。
ライトファンの開拓が欠かせないカバー
ゲームをリリースする前のカバーの業績は冴えませんでした。2026年4月~6月の売上高は前年同期間比8%減、営業利益は同33%減少しています。減収減益の主要因は、グッズなどの販売によって得られるマーチャンダイジング売上の減少。この事業の売上はおよそ22%減少しました。
2025年は「紫咲シオン」や「天音かなた」などの人気タレントがホロライブから卒業していますが、そのような卒業タレントによる売上の剥落の影響は甚大。カバーはタレントのマネジメントを経営課題として認識していましたが、マイナスのインパクトとして今期に顕在化したと見ることができます。
ホロドリのヒットはカバーに収益基盤の一つをもたらすのは間違いないでしょう。しかし、それ以上のポテンシャルも持っています。ゲームがホロライブやVTuberの新たなファン層を開拓し、市場拡大に貢献するという未来です。
ホロドリは全世界でリリースしたタイトルで、日本以外の国と地域でもダウンロードランキングで1位を獲得しています。国内外のファンを獲得できるチャンスが生まれました。
ゲームのヒットによってIPの影響力が拡大した例は過去にもあります。初音ミクです。2020年9月にリリースした「プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク」は世界累計3900万ダウンロードを記録したメガヒット作となりました。
このゲームは英語のグローバル版や韓国語版、繁体字版などを展開。海外で初音ミクというIPの認知度向上に一役買いました。2026年4月から5月にかけて行われた初音ミクなどのバーチャルシンガーの北米ツアーでは約10万人を動員しています。
ANYCOLOR減益という衝撃
カバーは次世代タレントの育成プロジェクトである「mekPark」を始動させています。2026年5月に「UNIT B」、翌月に「ACHRORA」がデビューしました。mekParkはホロライブの第一線で活躍するのは難しいものの、才能や将来性のあるタレントを育成しようとするもので、練習生たちがプロを目指す場所を指しています。
意欲的な試みですが、これはホロライブの既存のファンとは異なるファン層を獲得する仕掛けの一つだと見ることもできます。カバーはライトファン層を獲得し、成長へとつなげることが何より重要なのです。
VTuber市場は曲がり角に差し掛かっています。業績が絶好調だった「にじさんじ」のANYCOLORは、2026年5月~7月の営業利益が約9%の減少でした。利益の減少は期初から見込まれていたものの、大幅な増益を続けてきただけに衝撃的なものでもあります。
カバーと同じく、収益の柱であるグッズ販売に力がありません。
ホロドリによってVTuberの魅力が広がり、新たなファンが生まれれば、VTuberファンの裾野が広がって「にじさんじ」にも好影響を与えることになるでしょう。
カバーにとっての最悪のシナリオは、ホロドリのユーザーが既存のホロライブファンで固められてしまうこと。固定ファンがゲームに課金し、グッズや配信、ライブなどへの課金力が衰えると、カバーの稼ぐ力が低下するからです。ゲームに課金された分は、Googleなどのプラットフォーマーや開発会社に一部が還元されるため、カバーがすべてを手にできるわけではありません。ゲームが大ヒットしても十分な収益が得られない可能性があるのです。
ホロドリは成長限界が見え始めたVTuber産業の起爆剤となるのか。その真価が試される局面に入りました。
文/不破聡
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