日本自動車販売協会連合会が発表した「燃料別メーカー別登録台数(乗用車)」によると、2026年1~7月に販売されたEVは6万1090台で全体の3.9%(軽自動車は含まれていない)。購入補助金の拡充が追い風になったこともあり、メーカー別のEV登録台数を見ても各社前年同月比200%は当たり前。トヨタは前年同月比6000%超えを記録するなどEVへの注目度は高まるばかりだ。
キャンピングカー業界で注視されているのは、2026年春に本格デビューを果たしたKiaのEVバン「PV5」(カーゴ619万円~、パッセンジャー679万円~)の存在。
国のEV購入補助金は当然国産車のほうが手厚いが、大人2人+乳幼児が横になれるサイズというと残念ながら国産車では見当たらないためだ。
この夏、「PV5」を扱うキャンピングカービルダーであるトイファクトリー(https://toy-factory.jp)が東京・南町田グランベリーパーク内「トイファクトリー東京店」に正規ディーラー「Kia PBV 東名横浜」を併設。「PV5」を常設展示するほか、すぐそばの「EURO-TOY相模原」では試乗ができると聞き、運転や使い勝手、充電の疑問を教えてもらうべく訪ねてみた。
車内の居住空間はハイエース以上
試乗のために訪れた「EURO-TOY相模原」は、デュカトなど正規輸入車キャンピングカーの専門店。事前予約しておけば、「PV5」の試乗車を用意してくれるのだ。
「PV5」には1ナンバー/2人乗りの「カーゴ」と3ナンバー/5人乗りの「パッセンジャー」がありどちらも基本サイズは同じで全長4695×全幅1895×全高1925mm。
「ハイエース」のロングボディ・ワイド・ミドルルーフ(全長4840×全幅1880×全高2105mm)と似たサイズ感で、それぞれバッテリー容量によって「スタンダード」290V/総電力量51.5kWhと「ロングレンジ」402V/総電力量71.2kWhを選択できる。
フル充電で走行できる距離は「スタンダード」で377km、「ロングレンジ」なら521km(WLTCモード)。もっとも、エアコンの使用や道路状況によって走行距離は大きく変動するので、実際には7割程度と考えた方がよく「スタンダード」は約250km、「ロングレンジ」が350kmが現実的な走行距離の目安と言える。
ガソリン車に比べると頼りなく感じるが「日本全国のガソリンスタンド軒数とEV充電スポットの数はほぼ同じで、それほど困ることはありません。
ガソリン車と違って充電には時間がかかりますが、PV5は急速充電に対応していて30分で30~80%ほど回復します」と教えてくれたのはトイファクトリーの土屋円さん。土屋さん宅ではずいぶん前から自家用車としてEVを利用しているそうで、充電スポット探しの不便さを感じたことがないとのこと。
「なによりキャンピングカーと比較すると、走行充電や後付けのクーラー、FFヒーターなどを装着しなくてもそのまま快適に過ごせるのがEVの魅力です」(土屋さん)
荷室は幅1524mm。
「ハイエース」のスーパーGL(3000/1840×1705×1390mm)と比べても、開口部が大きく、全体が直線で構成されているためか遜色なく感じる。車中泊カーとして考えた場合、サブバッテリーやクーラーなどを後付けしなくてもいいため荷室を丸ごと居住空間に利用できるのも強い。しかも大型の床下収納付きだ。
「災害時はPV5から家電へ給電できます。旅もそうですが、防災面でも頼りになるんです。
車内はエンジンを停止してもエアコンを使って快適にすごせますが、窓が大きいのでシェードを使うなど断熱性を高める工夫は必要かもしれません」(土屋さん)
ベッドキット装着で車中泊カーに変身
「PV5パッセンジャー専用ベッドキット」を装着すれば、1850×1400mmの就寝スペースが生まれる。
大人2名が余裕で過ごせるサイズで、小さな子であれば川の字で寝ることも可能。
本来の床下収納部分を生かせるので、ベッド下の収納力も十分だ。
そしてベッドに寝転んだまま手が届く位置にUSBポートやコンセントがあるのも実用的。
狭い道、渋滞も思ったほど苦にならない
一通り車両の説明を受けた後、いよいよ試乗タイム。
最初に「トイファクトリー東京店/Kia PBV 東名横浜」店長・中野恭兵さんの運転で出発し、車線中央走行アシストやスマートクルーズコントロールなど運転を快適にする設定を教えてもらう。
その中にはEVならではの “ブレーキ強度”の設定もある。
「昔の自転車のライトはタイヤの回転を利用してモーターをまわして点灯させるのですが、それと似たような感じでアクセルを戻したときの抵抗で充電しています。渋滞時や高速道路など状況に応じて強度を変えれば、運転が楽になりますよ」(中野さん)
「LV1」では減速が極めてスムーズ。停止時の揺れが少ないので疲れにくいし、繊細な操作をせずにすむので運転が格段に楽になる。
「i-Pedal」にするとアクセルペダルから足を離すだけで減速、停止する。ブレーキを踏まなくていいので疲れにくいし、踏み間違いもない。ただし、だらだら渋滞ではブレーキによる揺れが強め。
さらに「高速道路や渋滞時などはスマートクルーズコントロールにしてもいいんですよ」と教えてくれるが、設定違いの特性を活かすには短時間ではつかめない。それなりに慣れが必要だ。
自分で運転して感じたのは思ったよりもコンパクトに感じること。
「両側の窓が下の方まで伸びていることもあって、大きさを感じずに運転できるんです」(中野さん)
試乗コースはめちゃくちゃ狭いわけではないが、対抗車や歩行者はそれなりに多く、緊張する場面もあったが両側面の視界の良さにはかなり助けられた。
サラウンドビューモニターを搭載しており、狭い場所での駐車をアシストしてくれるのもありがたい。
それにPV5が生まれた韓国は右側通行なのだが「日本向けにはウインカー/ワイパー操作を日本の環境にあわせてくれています」(中野さん)とのことで混乱せずにすむ。見逃しがちだがこれも大きなポイントだ。
車両は5年または10万km、バッテリーは8年または16万km保証

地震や豪雨などの災害時、EVがあれば情報収集のためのスマホ充電や暗闇の不安を解消できる。
「PV5」ロングレンジが満充電ならクーラーを一晩稼働しても余るほどの容量だ。ベッドキットのほかに水と非常食、そしてポータブルトイレを積み込めば優秀な防災アイテム。短期間の車中泊避難で頼りにできる。
冬のはじめの大雪による高速道路大渋滞に対応できるかなど課題はあるが、「PV5」のバッテリー保証期間は8年または16万km。思いのほか長く、ビジネスや旅でとことん使えそうだ。
「バンコンやバンベースのキャンピングカーは納車までかなりの日数が必要ですが、PV5の納車は最短1カ月。韓国から取り寄せる場合でも4カ月ほどで納車できます。それに駐車中でもクルマのエアコンを使えるのでロングレンジ+ベッドキットの合計約800万円で快適な車中泊カーになります。ハイエースのバンコンでクーラーなどを装備するとおおよそ1000万円になるので、車中泊カーとしてはかなりお買い得とも言えるんです!」(土屋さん)
トイファクトリーをはじめ、各地の正規ディーラーで試乗会を開催しているので気になる人は参加してみては。
文/大森弘恵




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