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現役世代の将来の備えに?三菱UFJ銀行が「エムット Excellent Club」で富裕層と次世代を囲い込む理由

2026.09.14

三菱UFJ銀行は富裕層向け会員サービス「エムット Excellent Club」を2027年3月にリリースすることを発表した。同時に、次世代へのスムーズな資産相続を狙ったデジタル相続プラットフォーム「エムットそうぞく」を2026年度下半期から提供を開始する。

〝富裕層〟と聞くと少し他人事に感じられる方がいるかもしれない。しかし、不動産や金融資産を保有する親世代から資産を承継する可能性を考えれば、30~40歳代にとっても決して無関係な話ではない。こういった会員サービスを知っておくことは、将来の資産承継を考えるうえでも参考になりそうだ。

総合金融サービス「エムット」が好調なスタートをしている

2025年6月から新たな金融サービスブランド「エムット」をスタートさせた三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、〝日常も人生もお金のあれこれ、まるっと。〟をキャッチコピーに、顧客のライフステージをトータルでサポートする総合金融サービスを展開しようとしている。

木村拓哉や石原さとみを起用した広告展開をはじめ、[三菱UFJ銀行]アプリのリニューアル、ポイントUPプログラムの拡充、ポイント決済アプリの提供開始などの効果も相まって、2025年度は三菱UFJ銀行の口座開設数が前年同期比で1.5倍、三菱UFJカードの発券数が1.8倍、三菱UFJ eスマート証券の仲介口座開設数が7.8倍、ウェルスナビ預かり資産残高が2.1兆円に達するなど、これまで以上に多くの顧客獲得に成功している。

富裕層と次世代の架け橋となるか?

そして、昨年の「エムット」発表に続き、第二弾として、富裕層向け会員サービス「エムット Excellent Club」、デジタル相続サービス「エムットそうぞく」が発表された。

「エムット Excellent Club」は三菱UFJ銀行の預かり金融資産残高が3000万円以上、または同行での資産運用残高が1000万円以上の個人を対象とした会員サービスで、2027年3月にスタートする。想定される会員数は75万人以上で、会員の預かり残高は50兆円以上に達する見込みだが、75万人という会員数はMUFGの約3300万人の顧客のうち、約2%程度に過ぎないものの、預かり残高は個人顧客全体の約5割を占めるという。

ここ数年、国内の金融サービスを取り巻く環境は、マイナス金利の時代から金利のある世界となり、各行では預金金利の引き上げ競争が展開されており、MUFGでは預金金利だけでなく、「+αの付加価値」を提供することで、他行との差別化を図る狙いだ。

登壇した三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役専務 リテール・デジタル事業本部長 兼 グループCDTO 山本忠司氏

「エムット Excellent Club」は会員資格を満たす顧客を招待する形で提供され、会員本人のほかに、配偶者および、三親等以内の個人も家族会員の対象となる。サービス開始時点では三菱UFJ銀行の金融資産が対象だが、今後、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券、三菱UFJ eスマート証券、ウェルスナビ、新たに開設するデジタルバンクなど、MUFG全体の残高合算で判定する方針だという。

預かり金融資産が3000万円以上という条件は厳しく聞こえるものの、今後、証券サービスが含まれ、iDeCoやNISAといった資産が対象になると、資産運用残高が1000万円以上という条件も数年の運用でクリアできる可能性もあり、今後、対象となる顧客層が広がる可能性もある。

ちなみに、三菱UFJ銀行では現在も「エクセレント倶楽部」という名称のサービスを提供しているが、今回の「エムット Excellent Club」は、現在の「エクセレント倶楽部」とは別の会員組織としてスタートする。

会員に有利となるクレジットカードを新たに発行

「エムット Excellent Club」では具体的にどんなサービスが受けられるのだろうか。まず、三菱UFJ銀行と三菱UFJニコスによるまったく新しいタイプの富裕層向けクレジットカードとして、「エムット Excellent Club カード プラチナ アメリカン・エキスプレス・カード」が発行される。

「エムット Excellent Club」の会員であれば、入会金・年会費が無料のプラチナカードで、三菱UFJ銀行の預かり残高に応じて、1%から最大1.6%(予定)という業界最高水準のポイント還元を受けられる。本格的な銀行預かり残高連動型クレジットカードとしては、国内初の取り組みとなる。クレジットカード積み立ては最大7.0%、ポイントアッププログラム適用時は最大20%還元も受けられる。

登壇した三菱UFJニコス 代表取締役社長 角田典彦氏

また、会員向けの専用リモートプレミアムアドバイザリーも提供される。三菱UFJ銀行、三菱UFJ信託銀行、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の厳選された専門家などで構成される金融のプロフェッショナルチームに、いつでもどこでも「顧問」のように直接、さまざまな相談をすることができる。

資産運用だけでなく、財産管理、相続、不動産など、幅広い領域について相談でき、これに加えて、外部の税理士法人と提携することで、税務相談も受けられる体制を整える。

このほかにも窓口限定「ウェルカム・セレクション」として、投資信託と円定期預金のセット申し込み時の円定期の金利優遇をはじめ、退職金を対象にした円定期や外貨定期預金などの預金金利優遇プラン、住宅ローンや自動車ローン、カードローンの金利優遇、来店時の優先案内、会員専用の封筒や紙袋の使用など、金利から顧客対応、オリジナル資材に至るまで、幅広い場面で会員を優待する体制を整える。

「エムットそうぞく」は将来の〝自分事〟への備え

ライフステージ総合金融サービス「エムット」は、「つかう」「たまる」「ふやす」「つなぐ」の4つの領域において、顧客をサポートするが、「つなぐ」の領域において、新たに提供されるのが「エムットそうぞく」だ。

高齢化社会が進んでいく中で、国内では2040年までに認知症患者数が、2022年から141万人増加して約584万人に、年間死亡者数も31万人増加して約168万人になると見込まれており、それに伴い、相続対策は重要なテーマになりつつある。相続は身近な課題である一方、手続きの面倒さや費用、心理面などのハードルもあり、どうしても後回しになりがちと言われている。「エムットそうぞく」はこうした課題を解決するデジタル相続プラットフォームとして提供される。

「エムットそうぞく」はオンライン上での手続きに対応し、来店することなく、相続に関する情報整理から具体的な備えまでを進められるよう設計されている。

まず、生前の早い段階から資産を受け取る家族を指定し、万が一のとき、どの家族がどの程度の割合で資産を受け取るのかをオンラインで指定し、あとは本人や配偶者、家族が電子署名をすれば、銀行からの電話での最終確認を経て、手続きが完了する。通常の遺産相続手続きが3か月程度かかると言われているのに対し、「エムットそうぞく」は最短1か月で手続きが完了する予定だ。

このほかにも「エムットそうぞく」では、家族に伝えたい情報や思いなどを整理し、対話内容の記録も可能な「家族共有ノート」をサービスとして提供する。将来的にはAIコンシェルジュによる支援、非対面による相続手続き代行、相続手続きの期日設定、ToDo管理など、生前の備えから相続時の手続きまでを一気通貫で支援するサービスへ拡充していくことを検討している。

メガバンクのサービス拡充はネット銀行対抗?

三菱UFJ銀行は国内最大級の預金・顧客基盤を抱えるメガバンクだ。証券サービスや信託銀行などを含め、MUFG全体で考えれば、他の金融機関を圧倒するスケールを持つが、同行が顧客のライフステージをトータルでサポートするサービスを提供する背景には、ここ十数年で拡大してきたネット銀行の存在が関係している。

かつては銀行と言えば、駅など、街の中心部に店舗を構え、就職時には各企業のメインバンクに口座を開設し、給与などを受け取っていた。ところが、ここ十数年で銀行の店舗は統廃合が進み、今や顧客との接点はATMやネット上のオンラインサービスなどへと変化している。受け取った給与やボーナスは証券サービスの拡充や決済サービスの多様化などにより、必ずしも銀行には定着しなくなりつつある。

これに対し、当初からインターネット上で展開されてきたネット銀行は、手続きの簡便さやわかりやすさなどから、若い世代を中心に利用が拡大し、新しい決済サービスやクレジットカードともいち早く連携を進めている。証券サービスも、大手証券会社などによる対面販売から、2000年代以降はインターネット経由のオンライントレードへと広がり、今やスマートフォンでの利用を前提とした証券サービスが台頭しつつある。

たとえば、前述の資産相続のシチュエーションにおいても、資産を承継する若い世代から「じゃあ、○○ネット銀行に振り込んでおいてください」と言われるケースもあり、結果として、三菱UFJ銀行の預かり残高の減少につながってしまう危惧があるという。

そのため、「エムット Excellent Club」では本人だけでなく、配偶者や三親等以内の個人にも家族会員としての資格を認めたり、「エムットそうぞく」ではあらかじめ資産を相続する家族に同行で口座を開設してもらい、ネット銀行に資産を流出させず、三菱UFJ銀行内でスムーズに次世代へ資産を承継してもらおうというわけだ。

逆に、これまで店舗を持たなかったネット銀行も新しい動きを見せている。たとえば、今年8月に住信SBIネット銀行から名称変更したドコモSMTBネット銀行(ドコモの銀行)は、8月21日から全国196店舗のドコモショップで「ドコモの銀行」の案内や口座開設などのサポートの受付を開始しており、早期に対応店舗を1000店舗に増やしたいとしている。

同様に、NTTドコモ傘下となったマネックス証券は、今年1月から一部のドコモショップ店頭で、マネックス証券の証券取引口座の開設やクレジットカード積み立ての設定サポートなどを受け付けており、こちらもマネックス証券の口座開設へ結びつけている。

そういった意味から考えると、今回の三菱UFJ銀行の発表は、メガバンクとして、ネット銀行やネット証券への対抗策の一環と見ることもできる。今後の金融サービス各社の動向が注目される。

【参考】エムット Excellent Club:三菱UFJ銀行

取材・文/法林岳之

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