スバルの上級クロスオーバーモデルのレイバックにS:HEV=ストロングハイブリッドモデルが加わった。レイバックと言えば、2023年10月に登場したスバルの超人気AWDステーションワゴン、レヴォーグの車高を最低地上高200mmまで上げ、水平対向1.8Lターボエンジンを積んだ都会派SUV、クロスオーバーモデルだ。
スポーティな走行性能や上質さ、質感が高評価を得たのだが、一方、ハイブリッドが欲しい、派手なターボダクトをなくしてほしい、立体駐車場に入るパッケージにしてほしい、アウトドア派からはルーフレールを付けてほしい・・・などの要望もあったという。
スバル・レイバックS:HEV EX試乗記
そこでスバルは納得のいく価格で、少しでも早く、レイバックに、すでにクロストレック、フォレスターに採用され、絶大な評価を得ているS:HEV=ストロングハイブリッドモデルの開発に着手。2026年6月4日にスバル・レイバックS:HEVを発売したのである。コンセプトは「移動の質を高めるハイブリッドクロスオーバー」、「レヴォーグ譲りの質感の高い走り×S:HEVならではのロングツーリング×SUVの実用性」の実現であった。
エクステリアデザイン、とくにフロント周りはこれまでのレイバックとはよりシャープなヘッドライトを採用するなど別物。ターボエンジンを搭載しないことからターボダクトはなくなり、ボンネットはすっきり。ちなみに全長はS:HEVのクロストレックから譲り受けた骨格を用いるため、ターボモデルの4770mmより短い4735mmになっている(扱いやすい全幅1820mmはターボモデル同様)。そしてS:HEV=ストロングハイブリッドモデルの大きな特徴のひとつが全高で、最低地上高を200mmからそれでも走破性に十二分な180mmとすることで、立体駐車場への入庫が容易になる1550mmに低めているのだから、都会派クロスオーバーモデルとしての資質を大幅に向上させたことになる。
もちろん、S:HEVの搭載で燃費性能は14.1km/Lから19.0km/Lへと一気に向上。燃料タンク容量は63Lもあり、レギュラーガソリン満タンで900kmを超える航続距離を可能にしているのだから頼りになる(走行条件による)。
駆動方式はAWD。それにモーターによるレスポンスの良さが加わるのだから、大きな駆動力を発生させるとともに、機械式AWDゆえに、過度なスリップが起こりにくく、あらゆる路面での車両挙動が安定。雪道などで3輪がスタックしても残る1輪に全トルクを配分できるため、脱出性能にも優れている。スバルならではのXモード(SNOW/DIRTとDEEP SNOW/MUDの2モード)も搭載され、脱出性能をさらに高めてくれるのだから鬼に金棒である。
上質なインテリアはターボモデルと変わらないものの、11.6インチのタブレットのようなセンターインフォメーションディスプレイ&インフォテイメントシステム、多用されたソフトパッドなどが特徴的なインテリアとなっている。Premium Black S:HEV EXには本革シートが備わり、レイバックならではの上級感、質感の高さが演出されている。
なお、後席はラゲッジルームにS:HEV用のバッテリーを積むため、クロストレックの(S:HEVモデル)シートを用い(いち早く商品化するため)、ターボモデルにある4:2:4分割、リクライニング機構は備わっていない。リクライニング機構はともかく、後席4:2:4分割がなくなったことは、とくにスバルユーザーに多い愛犬家にとってはやや気になる部分かも知れない(愛犬の特等席はあくまで後席だが、短時間、大型犬をラゲッジルームに乗せる場合、中央の2部分を倒してアームレスト代わりにすることで、エアコンの風がラゲッジルームに届きやすく、また、飼い主と愛犬のアイコンタクトが可能になり、お互い安心できる)。
S:HEV化によるターボモデルとの実用上の違いはごくわずか。ラゲッジルームは床下にバッテリーを積載することでフロア上の容量はターボモデルの492Lから429Lに。床下のサブトランクを含めた容量も561Lから448Lに減少しているものの、依然、スーツケース4個、キャンプ用品、ベビー&ペットカートを積み込むのに十分なスペースが確保されているから、荷物の積載に関して大きな心配は無用だろう。なお、ラゲッジルームには、ターボモデルには望めない車内外で1500Wまでの家電製品が使えるAC100V/1500Wコンセント(S:HEV EXにOP)も用意され、アウトドアではもちろん、災害時にも大いに役立ってくれるのだ(ガソリンターボモデルにはない装備でぜひOP装着したい)。また、ラゲッジルーム側から後席を倒せるスイッチが新たに追加されている点は使い勝手の向上である。
スバルと言えば”ぶつからないクルマ?”の先進安全機能のアイサイトで有名だが、レイバックには基本の最新のアイサイト、アイサイトセイフティプラス、渋滞時ハンズオフドライブをも可能にするアイサイトXを標準搭載。出発前からドライブ中に至るまでの安心が確保されているから心強い。
さて、レイバックのターボモデルが大のお気に入りだったボクがレイバックのPremium Black S:HEV EXに乗って走り出せば(ボディカラーはブラックだけではない)、まずは高出力モーターによる21.3kg-mのトルクによって、S:HEV化による重量増(+90~100kg)もなんのその、の滑らかな加速を無音・無振動で加速を開始してくれる。そのため、パワーステアリングの操舵感はやや重め目で応答性はやや穏やかに躾けられ、ターボモデルの濃厚さとは違う軽快感ある操縦感覚、走行感覚が特徴的だった。今回は東京~河口湖を往復した試乗だったのだが、運転にかかわるストレスはさらに低減していると痛感。グランドツアラー性能にさらに磨きがかけられた印象だったのだ。
クロストレックでも大好評のファルケンの225/55R18サイズのオールシーズンタイヤを履く乗り心地は一般道、高速道路を含め、フラットそのもの。道路のジョイントを超えてもサスペンションがしなやかにいなし、ショックを吸収。ターボモデルに対する重量増もあり、カーブ、高速走行ではドシリとしたタッチが際立っていた。それもロングランでの疲れにくさに貢献しているに違いない。ボクはレイバックのターボモデルの上級サルーン並みの乗り心地の良さを大いに気に入っていたところだが、水平対向エンジン×AWDの燃費性能には満足しきれなかったというのが本音。その燃費性能を大きく高めたこのS:HEVモデルには、レイバックとして文句のつけようなし・・・というのが、愛犬とドライブする機会も多いボクとしては、後席が4:2:4分割でなくなった部分を除けば、本音である。
しかもだ。レイバックPremium Black S:HEV EXの価格は424.6万円。クロストレックPremium S:HEV EX(車両本体価格405.35万円、18.9km/L)に、レイバックS:HEVモデルに備わる本革シートを付けると433万4150円になり、な、なんと価格は逆転。どう見てもレイバックS:HEVモデルの買い得感が際立つのだ(クロストレックの現行モデルは生産終了に伴い、2026年9月14日に新規注文受付を終了とのこと。2Lエンジン車は終了。S:HEVモデルのみMCで継続か?)。もちろん、クロストレックのラギッドなエクステリアデザインも魅力的だが、都会にもアウトドアにも似合う上級クロスオーバーモデル、ロングツアラーとしての資質、魅力で上級のレイバックに傾く人がいることは間違いない。スバルがこのレイバックのS:HEVモデルに込めた「納得のいく価格」は、まさにユーザーフレンドリーなバーゲンプライスということだ。
文/青山尚暉
写真/雪岡直樹




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