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災害報道で「不安」を感じるのはなぜ?心身のSOSサインと休み方

2026.09.14

災害に関するニュースやSNSの投稿を見続けるうちに、「胸が苦しくなる」「仕事に集中できない」「眠りが浅くなる」といった悩みを抱える人がいる。

自分は被災していないのに、なぜここまでつらくなるのか――。

災害報道に触れ続けることで心身に起こる反応と、日常の中でできるケアの方法について、心療内科医の田中奏多先生に聞いた。

不安に関係する脳の部位「扁桃体」とは?

日本では地震をはじめ、台風や大雨、大雪などの自然災害が身近に起こりうる。大きな災害が発生すると、テレビやSNSでは被害状況や現地の映像、支援に関する情報が連日伝えられる。こうした情報は安全確保や支援のために必要な一方で、繰り返し触れることで心身の負担になることもある。

「大きなショックを受ける出来事に触れると、脳と体は『警戒しろ』という反応を起こします。具体的には、不安に関係する脳の部位である扁桃体が過剰に活動しはじめます。危険が目の前にある状況では、この警戒心は命を守る大切な反応です。しかし現代では、メディアやSNSを通して、災害の情報を繰り返し目にすることで、実際に被災していない人や、遠く離れた場所にいる人にも似た反応が起こることがあります」

災害の影響は、実際に被災した人と、影響をほとんど受けない人に二分できるものではない。直接の被害はなくても、過去の記憶や報道から不安を抱える人もいる。災害が多い日本では、被災地から離れていても心身に反応が出る「中間の人」が少なくないという。

「現場にいない人が、映像を繰り返し観たり、被災した人に共感したり、状況を想像したりすることでも扁桃体は反応します。特に、過去に災害に関する怖さを経験している人は、小さな揺れや関連ニュースをきっかけに、当時の不安がよみがえり、体が反応しやすくなります」

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心と体のSOSサインとは?

扁桃体は自律神経を調節する脳部位と神経回路でつながっており、扁桃体が過剰に活動すると自律神経が乱れ、様々な体の不調が起こるというわけだ。では、具体的にどのような症状が出てくるのだろうか。

「心と体には、主に4つの変化が現れるとされています。ひとつ目は、不安や緊張が強まり、眠れない、食欲がわかないといった状態になること。二つ目は、自分が無力に思える、何もできないと感じるといった自信の低下です。三つ目は、大変な思いをしている人がいるのに普通に生活していいのかと自分を責めること。四つ目は、疲れやすくなることです。加えて、出来事が繰り返し頭に浮かぶ(フラッシュバック)、悪夢を見る、現実感が薄れる、動悸がする、関連する情報を避けたくなるといった症状が出ることもあります。仕事中に急に集中できなくなったり、イライラしやすくなったりする形で現れることも少なくありません」

こうした反応の多くは、災害という異常な出来事に対する正常な反応であり、時間の経過とともに自然に和らいでいく傾向にあるという。しかし、中には長期的に心や体の不調を感じる人もいる。

自分自身のSOSを感じた時にすべきこと

「このようなストレス反応からくる症状が4週間以上続く場合や、うつのような状態が2週間以上続く場合は、受診を検討する目安です。仕事や人間関係など、日常生活に明らかな支障が出ているかどうかも大切な判断材料になります。特に、『死にたい』という気持ちが浮かんだ場合は、決して軽視せず、すぐに心療内科や精神科への相談を検討してください」

あくまでも2週間や4週間は目安だ。日常生活に大きく支障が出ている状態が続く場合は、早めに医療機関に相談しよう。

「『被災していないのにこんなに辛いのはおかしいのでは』と感じる必要はありません。特に、感受性が高い人や、日頃から疲れていて心が元気ではない状態が続いている人などは、感情の波が大きくなりやすく、より影響を受けやすい場合もあります。自分の体の声を聴き、不安を感じている自分を否定しないであげてくださいね」

災害の影響からくる心身の不調は、決して心の弱さのあらわれではなく、脳の反応によるものだ。しかし、やるべきことがある人ほど「普段通りにしなければ」と不調を見て見ぬふりをしてしまいかねないという。

「忙しさや責任感で、心身の違和感を後回しにしないでください。『自分は大丈夫』と思い込まず、睡眠・食欲・集中力・疲労感の変化を見て、自分をケアするという意識が大切です。不安の軽減にはリラックスがとても効果的で、深呼吸や軽いストレッチ、温かい飲み物で気持ちを落ち着けることも役立ちます」

リラックスすることは、「今ここ」の瞬間に意識を戻していくことに近いという。SNSや遠くの場所で起きている出来事に気持ちが向き続けているときこそ、まずはリラックスをし、今の自分の体の感覚に意識を戻す。それが副交感神経を優位にし、落ち着きを取り戻す助けになるのだ。

「テレビやSNSを見る時間を意識的に区切ることも、不安の軽減に役立ちます。ニュースを見ないことは薄情なことではなく、自分の心身を守るための行動です。災害報道を見ても、不安に強くとらわれない人もいます。そういう人は、感情と事実を分けて受け止めたうえで、『大変そうだ。では自分は今何をすべきなのか』と、主体的な行動に切り替えられる点が大きいと考えられます」

災害報道に触れて不安になることは、決して特別なことではない。たとえ被災地から離れていても、心と体が反応することはある。だからこそ、情報から少し距離を置くこと、自分の体調の変化に気づくこと、必要なときに専門家へ相談することは、自分を守るための大切な行動になる。

田中奏多医師プロフィール

心療内科医・産業医として、メンタルヘルスのプライマリケアを担うベスリクリニックを共同創設、「薬に頼りすぎない心の医療」を実践している。ハーバード大学のTMSコース修了後は、企業の健康経営支援、うつ病に対するTMS治療、休職者の復職支援などを幅広く手がける。著書に『眠る投資 ハーバードが教える世界最高の睡眠法』がある。

取材・文/田村菜津季

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