懐かしい駄菓子屋の“ワクワク感”
昭和人間には懐かしい駄菓子屋だが、残念ながらどんどん減ってきているのは今や仕方がないのだろう。駄菓子屋に並ぶ品々を作るメーカーの惜しまれる廃業も続いているようだ。
昨年5月末にはくじのように引くことができる「糸引き飴」の製造が終了している。
糸引き飴の遊び方は、束ねたタコ糸の先に大小さまざまな飴がついており、1回10円で糸の先を選んで引っ張って当該の飴をもらう。飴にはいろんな大きさや形、柄があり、一番多い小さめの飴が“ハズレ”とされているが、それでも子どもの口にはじゅうぶんなおやつだ。
いうまでもなく駄菓子屋は子どもの遊び場なので、商品のけっこうな割合がこのようなささやかなキャンブル要素との組み合わせて売られていた。今でもその一部は業務用のセットで売られていたりするので、特に昭和人間でなくともイベントや催事で体験したことがある人も少なくないだろう。
懐かしいくじ引き駄菓子の数々なのだが、よく考えてみればそのお金を出して普通に購入したとしてもたいした違いはなさそうだ。しかし“遊び場”としてギャンブル性があってこその駄菓子屋であり、子ども心としては単に購入するよりも“運試し”をしてから買いたいのである。
新たな研究からも、たとえ同じ価値のモノであっても“運試し”をしてから入手したほうがより高い価値を持つと感じられていることが報告されている。
結果が不確実な選択肢が選ばれやすい
米シカゴ大学、ストーニーブルック大学、ジョージタウン大学の研究チームが今年4月に「Journal of Consumer Research」で発表した研究では、人々は不確実性を伴う購入をする際、回避できたより悪い取引と比較し、無難な結果として得られたものを高く評価する傾向があることが報告されている。研究チームはこの傾向を「不確実性の波及効果(uncertainty spillover effect)」と呼んでいる。
研究チームが計1万2000人以上が参加した7つの実験を行って不確実性の波及効果を検証した。
興味深い1つの実験では、オンライン参加者600人のうち半数(Aグループ)が、宿泊先を探すシナリオにおいて1泊通常190ドルが102ドルの割引料金で提供されるホテルの情報を閲覧した。
残りの半数(Bグループ)は、通常料金が1泊124ドル、190ドル、209ドルのホテル3軒の情報を閲覧した。このグループの参加者にはこの3軒のうち1軒が102ドルの割引料金で提供されると伝えられた。どのホテルが割引になるかは予約後に判明する。通常料金が190ドルのホテルはAグループが閲覧したのと同じホテルである。
実験実施者は両グループに対し、ホテルを予約するか、引き続き探すかを尋ねた。ホテルの選択肢が1つしか提示されなかったAグループの参加者の76%が予約すると答えた。一方、いずれにしてもお得には泊まれるがどのホテルが割り当てられるのは分からないBグループでは約90%が予約すると答えたのだ。結果が不確実であった場合の方がホテルを予約する確率が高かったのである。
銀メダルより銅メダルのほうが嬉しい!?
研究によると不確実性は実際の結果を、回避できたかもしれないより悪い結果と比較する傾向があるため、最終結果に対する好みを高める効果を持つという。
たとえば、30%、20%、10%のいずれかの不確実な割引で商品を受け取れると告げられたとする。その結果が20%だった場合、20%は10%よりも良いので勝利したように感じられるのだ。逃した30%の割引と比べて失望するよりも、20%で満足する可能性の方が高いのである。
心理学における「反事実的思考」は、すでに起こった出来事に対し、「もし~だったら」「あの時~していれば」と、実際とは違う過去を想像する心理学の概念である。
この「反事実的思考」に基づくと、人々は不確実性のある状況下で手にした結果を、より悪い結果と比較することで価値を高める傾向があるようだ。
たとえば銅メダリストは銀メダリストよりも嬉しさを味わっているといわれている。銀メダリストは金メダリストと比較して悔しさを味わう一方、銅メダリストはメダルを取れなかった4位と比べて満足感を得ているのである。
不確実な見込みから得られるモノを好む
別の実験では、「確実性」を約束されたAグループの参加者には25ドルのギフトカードがもらえると伝えられた。
一方「不確実性」に晒されたBグループの参加者には、15ドルから35ドルの間のいずれかのギフトカードがもらえると伝えられ、その後、それが25ドルのギフトカードであることが知らされた。
両グループが手にした25ドルのギフトカードを賭けてギャンブルをするかどうか尋ねられた際、Bグループの参加者はAグループに比べて賭けに参加する確率が低かったのである。
研究者たちはこのことから、不確実性に晒されたBグループの参加者は、確実性が約束されたAグループよりも同じ25ドルのギフトカードを高く評価していると解釈した。
この研究結果は「不確実性の波及効果」を裏付けていると結論づけられている。これは「人々は常に確実なものよりも、不確実な見込みから得られるモノを好む」という現象である。
“三つ子の魂百まで”ではないが、どうやら駄菓子屋で味わった“運試し”のワクワク感は、いい大人になっても忘れられないようだ。
※研究論文
https://academic.oup.com/jcr/advance-article/doi/10.1093/jcr/ucag008/8651739
文/仲田しんじ
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