2026年9月8日の東京外国為替市場では円が大幅高となり、一時153円80銭台と、2月18日以来となる高値をつけた。その要因の一つとして、アメリカのベッセント財務長官による日銀に早期利上げを促す発言、さらに日銀の高田創審議委員も利上げペースの加速を示唆したことが指摘されている。
では、このような円高の進行は、今後の日本株やドル円相場にどのような影響を及ぼすのか。
三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト・市川雅浩氏から分析リポートが届いたので、概要をお伝えする。
足元の円高進行は日銀のビハインド・ザ・カーブ懸念の後退による悪い円安の修正が主因
ドル円は9月2日の1ドル=160円39銭水準から、8日の152円89銭水準まで、わずか5営業日の間に7円50銭程度、急速にドル安・円高が進行した。今回のレポートでは、円高の進行が日本株に与える影響について考えてみたい。
それにあたっては、ドル円レートの水準自体に注目することも大切だが、どのような背景で円高が進んだのかを整理することが、まずは重要だろう。
今回の円高進行は、日米金融当局者の発言をきっかけに、日銀が物価抑制のために適切な利上げを行ない、ターミナルレート(利上げの最終到達点)が切り上がっていくとの見方が市場に広がったことが1つの大きな要因とみている。
この見方が広がったことで、日銀の利上げが後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」とインフレの悪化に対する懸念が大きく後退。いわゆる「悪い円安」の修正が進んだ結果の円高と考えることができる。
■悪い円安の修正が進んだ結果の円高であれば、日本株にとっては必ずしも懸念材料ではない
悪い円安の修正が進んだ結果の円高であれば、日本株にとって必ずしも懸念材料ではないと考える。実際、前述の9月2日から8日までの期間、日経平均株価は1.5%上昇しており、東証株価指数(TOPIX)は下落したものの、下落率は0.8%にとどまっている。
このように、現時点では急速な円高の進行が、日本株に深刻なダメージを与えているという状況には至っていない。
なお、翌日物金利スワップ(OIS)市場の「2年先1年」金利は現在、今後2年間で25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の利上げ5回を織り込んでいる状況にある(図表1)。

ただ、この織り込みはやや行き過ぎのように思われ(弊社は来年までに25bpの利上げ3回を予想)、今後、下方修正され、円安要因になることも想定される。ただ、日銀のインフレ抑制への信認が維持される限り、悪い円安にはならないとみている。
■短観や東京商工リサーチのアンケートを踏まえると現状程度の円高なら企業への影響も限定的か
次にドル円レートの水準に目を向けたい。日銀が7月1日に公表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)において、2026年度の事業計画の前提となっている想定為替レートは、全規模・全産業で152円57銭、大企業・製造業の輸出企業で151円49銭だった(図表2)。

ドル円は9月8日に152円89銭水準までドル安・円高が進行したが、企業が業績の下方修正を急ぐほどの円高水準ではまだないと思われる。
また、東京商工リサーチTSRデータインサイトによると、2026年6月に実施した「為替に関するアンケート調査」では、望ましい為替レートとして、全体で平均136円80銭、製造業かつ資本金1億円以上の大企業で平均140円60銭という水準が示されていた(図表2)。
これを踏まえると、悪い円安の修正による、現状程度の円高であれば、企業にとってはむしろ好ましいとも考えられる。
構成/清水眞希




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