〝教授〟の愛称で親しまれた世界的な作曲家・坂本龍一氏が世を去って3年余り。坂本氏が遺した機材や楽器などを次世代の創造へと託すプロジェクトがスタートする。
舞台となるのは、京都芸術大学「KUA」だ。今までにない新たなミッションについて、坂本氏のMR(複合現実)企画展が開催されている大阪の「VS.(ヴイエス)」で発表された。
「世界中の創造⼒を解放する。」
去る9⽉2⽇、グラングリーン⼤阪「VS.」にて発表されたのは、京都市内にある京都芸術⼤学(学⻑:佐藤 卓氏)の開学50周年に向けたプロジェクト。「世界中の創造⼒を解放する。」をモットーに、故‧坂本⿓⼀⽒の意志を継ぐ新プロジェクトが紹介された。
「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA – A laboratory for experimentation across sound, art, technology, environment, and society.」は、京都芸術⼤学キャンパスにある「⽠⽣⼭荘」を拠点に、2027年春の着⼯、2028年のスタジオ運⽤開始を⽬指すという。
坂本龍一氏は京都を何度も訪れていて、2000年代以降、京都芸術大学の教員らと共創を通じて関係を育んだという。
学校法⼈⽠⽣⼭学園 理事⻑の徳⼭ 豊氏は、「⼈と⼈との出会いを学びの場に変えていくこと」と話し、「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」の構想は、異なる分野の⼈々と対話し、学び、実験を重ねた坂本⽒の「創造の姿勢」を次世代へつないでいくものだと説明した。
「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」のスタジオ設計は、京都市京セラ美術館の改修で知られる建設設計事務所「AS」の青木 淳氏と品川雅俊氏が担当。
青木氏は以前から「自然のあるところを生活の拠点かつ創作の場にしたいと考えていた」そうで、品川氏も「⽠⽣⼭荘は常に変化を続けてきた場所で、次世代の方のクリエイティブに繋がるよう伝えるアーカイブにしたい」と語る。
リードアーティストには、映画『国宝』の音楽と主題歌を手掛けた原 摩利彦氏が就任。原氏はかつて坂本龍一氏と共作の経験もあり、この新たなスタジオでの未知なる音楽の創出に挑む。
想像力は他者を思いやる力
この日は、京都芸術大学の副学長である小山薫堂氏と、青木氏、品川氏、原氏とのトークセッションも開催された。
青木氏は「核となる部分は閉じず、外に向かって開かれた建築を目指す」、品川氏は「使っていくアーカイブこそ、新しくおもしろい」、原氏は「このLabは坂本⽒が提唱していた“コモンズ”であるべき」などとそれぞれ語り、⼩⼭は「想像⼒の根本にあるのは、他者を思いやる⼒ではないか」と締めくくった。
「『Sakamoto Ryuichi Lab at KUA』が学⽣、研究者、アーティストたちが⾃由に学び、考え、実験し、そこから新しい問いや表現が⽣まれていく場となることを強く願っています」と坂本龍一エステートからのメッセージも紹介され、その後、原 摩利彦⽒×蓮沼 執太⽒×東北ユースオーケストラ 「坂本⿓⼀の意志を受け継ぐ⾳楽家たち」による⼀⽇限りのスペシャルライブが開催された。
数年後には京都で設立される「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」。今までにない画期的な創造の場として、国内外から注目されそうだ。
まずは現在、グラングリーン⼤阪「VS.」で開催中の大規模MR(複合現実)企画展「Ryuichi Sakamoto & Tin Drum | KAGAMI+」を体験し、坂本龍一氏の創造力を感じて「Sakamoto Ryuichi Lab at KUA」に期待を寄せたい。
写真提供/KUA 京都芸術大学
●京都芸術大学
所在地:京都市左京区北⽩川⽠⽣⼭町2-116
https://www.kyoto-art.ac.jp/
●Ryuichi Sakamoto & Tin Drum | KAGAMI+
会場: グラングリーン大阪 うめきた公園 ノースパーク「VS.」
※10月12日まで開催中。
https://sakamoto-kagami.com/
取材・文/インディ藤田
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