旅先で農作業を手伝う代わりに、農家から宿泊場所を提供してもらう。そんな、宿泊費をゼロにしながら、旅を楽しむスタイルが注目されている。
この、旅行者と農家のマッチングプラットフォームを運営するのは(株)Perma Future。4年前に「農業ワーケーション」としてスタートし、今は「農旅(のうたび)」の看板を掲げて利用者を増やしている。サービス名は、「No 農 No Life」から転じて「ののの」という。
今回は同社代表を務める池田航介さんに、サービスの仕組みや利用方法などについて伺った。
農作業が終わったら完全な自由時間
――具体的に、どのような仕組みとなっているのでしょうか?
「とてもシンプルです。1日あたり3~4時間、農家の作業をお手伝いします。その対価として農家側は宿泊場所を提供します。作業が終わったら、まったくの自由です。地域の観光地を巡るのも、部屋にこもってリモートワークをするのもOKというわけです。
私どもは、このサービスに登録・参加される農家をホストと呼んでいます。現時点で、全国から150軒近くのホストが参加されています。数は少ないですが、漁業、林業、酪農に従事されているホストもいます。
利用方法は、公式サイトを見て、旅行の目的地そのほか条件の合うホストを探し、LINE公式アカウントを通じて申し込むだけです。その後、必要に応じてやり取りを行って、正式な申し込みとなります。その際、プラットフォーム利用料として7700円をお支払いいただきます」
池田さんによれば、基本的に無料となるのは宿泊費のみ。ホストの最寄り駅までの交通費も含め、それ以外は自己負担となる。食事も自炊となるが、農家から作物や料理を供されることもあるという。
種まきから収穫まで作業は様々
――利用する側の視点では、まず「お手伝い」の内容が気になるかと思います。どういった作業を求められますか?
「もっともニーズが多いのが収穫作業です。短期間に一気に収穫しますから、臨時の人手が不足しやすいのですね。農家によって細かく異なりますが、ほかに種まき、草取り、選別、出荷、販売など様々な作業に対するニーズがあります。
時期についても、収穫の秋に限らず、多くは年間を通して仕事があります。地域によっては、冬にみかんを収穫するところもありますし、雪かきを手伝いに含めるところもあります」
公式サイトを見ると、参加日数は「5泊6日-」というふうに「-」をつけているホストが多い。つまり、表記の日数を超える長期滞在も歓迎というわけ。例えば、山形県の「あぐりライフデザイン」では、12~3月の大根の乾燥、タラの芽の栽培に始まり、11月の大根と青菜の収穫まで、1年を通じて何かしらの作業がある。自分が得意と思う作業や好きな季節に合わせてスケジュールを組むとよさそうだ。ただ、作業時の衣類や軍手などは自前なので、持参する荷物のキャパには注意する必要がある。
宿泊は空き家や空き部屋が主体
――サービスの利用者は、どういった施設に泊まれるのでしょうか?
「全体の約7割は、農家が所有している空き家、あるいは空き部屋です。アパートを所有していて、その部屋を貸し出すところもあります。残りの約3割は地域の民宿を含めた宿泊施設となります。JAや行政が用意することもあります」
旅行というよりむしろ、ワーケーション重視で利用する場合、テレワーク環境が整っているかチェックしておきたい。デスクはちゃぶ台しかないのか、Wi-Fiが通っているのか、行ってから後悔しないよう、申し込む段階で要チェック。
利用者の大半は学生と若手社会人
――利用者は、どんな方が多いですか?
「若い方の比率が高くて、全体の約半数は学生です。夏休みなど長期の休みを使って参加されるパターンが多いです。その次に多いのが若手の社会人。社会人になって数年経ち、転職活動中であったり、地方で次のキャリアを模索している方が結構いらっしゃいますね。
就農を視野に入れ、まずは実地体験という方も見受けられます。互いに気に入ってホストに就農した方も何人かいます」
池田さんによれば、「若手が多い」イコール「中高年はダメ」ではないという。若くないと務まらないような重労働はないので、セカンドキャリアを考えるミドル層も含め大歓迎とのことだ。
「休日は農業」を一つの選択肢に
――初めて利用する場合、あらかじめ留意しておくべき点はありますか?
「あくまでも農作業を手伝うことで、宿泊施設を無料で使えるという点を理解していただくことが一番大事です。そこが観光農園と違うところです。
かといって、重く受け止める必要もありません。私どもは、農業を含む第一次産業の敷居を下げるという理念のもとで活動しています。何日かの休みがあったら、農業を一つの選択肢としていただいたら嬉しいです。
また農家は、人手不足に悩んでいるところが本当に多いですし、若い世代と交流したい、関係人口を増やしていきたい、地域を盛り上げたいというニーズもあります。興味があれば、気軽に利用していただければと思います」
文/鈴木拓也
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