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「9月は米国株が下がる」は本当か?中間選挙年のアノマリーと、新NISAで積み立てている人がやるべきこととやらなくていいこと

2026.09.13

米国市場には「9月は株が下がる」という古い格言があります。S&P500は今年、年初来で1割超上昇し、7600~7800ポイントの高値圏で9月を迎えました。そこに米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ観測と、11月3日の中間選挙が重なります。この格言は統計として本物なのか、今年はどこまで当てはまるのか、そして新NISAで米国株の投資信託を積み立てている人は何をすればよいのか、今回、解説していきます。

9月の弱さは「気のせい」ではない

1928年以降のS&P500の月間平均リターンを並べると、9月は平均でマイナス1.1~1.2%前後と、12カ月のなかで最も低い月です。データの集計元によって小数点以下は異なりますが、「9月だけが負け越している」という結論はどの集計でも一致しています。

勝率で見ても同様で、9月にS&P500が下落した年は全体の55~56%と、他の月の平均(約39%)より明らかに高い。過去の月間下落幅ワースト40のうち9件が9月に集中しており、これは全月のなかで最多です。直近の傾向はさらに弱く、2017~2025年の9月の平均リターンはマイナス1.4%でした。2022年9月には9.3%の急落を記録しています。

もっとも、平均でマイナス1.2%というのは、「9月に入ると1%強下がる」という意味ではありません。上がる年が44%あり、その一方で下がる年の落ち幅が大きいために平均がマイナスに引きずられている、というのが実態です。「9月効果」は統計的には存在するが、個別の年を予測する道具としては精度が粗い。

なぜ9月なのか、決定打のない三つの仮説

一つ目は資金フローの季節性です。夏休みから戻った機関投資家が年末に向けてポートフォリオを組み直し、年初来で利益が出ていれば一部を確定させる。米国のミューチュアルファンドの多くが9月に決算期末を迎えることから、損失銘柄を売って税務上の損失を計上する動きも重なります。二つ目は家計の資金需要で、新学期の学費支払いなどで株式を取り崩す動きが指摘されます。三つ目は心理的な自己実現です。「9月は下がる」と信じる投資家が先回りして売ることで、実際に下落が生じるという説明です。

いずれも「もっともらしい」ものの、単独で9月の弱さを説明しきる力はありません。この理由の曖昧さは、逆に言えば「9月効果はいつ消えてもおかしくない」ということでもあります。

中間選挙年という上乗せ要因

米国の中間選挙は、大統領選挙の2年後、4年任期のちょうど折り返しにあたる年の11月に行われます。直近では2022年、その前が2018年で、2026年は2025年1月に始まった大統領任期の2年目にあたります。投票日は11月の第1月曜日の翌日と決まっており、今年は11月3日です。大統領の4年任期を軸にした「大統領サイクル」のなかで、この中間選挙年は歴史的にもっとも株式リターンが低い年とされてきました。1945年以降で見ると、S&P500の中間選挙年の平均上昇率は3.8%にとどまり、他の3年の平均10.9%を大きく下回ります。集計期間を1950年以降に変えても4%台で、傾向は変わりません。

より重要なのは年内の値動きの形です。1950年以降の中間選挙年では、S&P500はどこかの時点で年初来高値から平均約18%の下落を経験しています。そしてその底は8~10月に集中してきました。選挙の不透明感がピークを迎える時期と、前述の9月効果が重なる構図です。

ただし、この後には強い反発が続きます。中間選挙後12カ月間のS&P500は、1950年以降の全ケースでプラスとなり、平均上昇率は15%前後に達しました。中間選挙年の安値から12カ月後の平均上昇率は約32%です。歴史が示すのは、「秋に下がる」と「その後上がる」がセットになったパターンであって、「下がって終わる」ではありません。

2026年の固有要因とアノマリー以上に重いもの

今年の9月には、季節性とは別に、値動きを左右しうる固有の要因が三つあります。

第一にFRBの政策です。ウォーシュ議長は8月末のジャクソンホール講演で、インフレが2%目標を上回っていること、金融環境は引き締め的ではないことを明言しました。この講演を受けて、9月15~16日の会合での利上げ確率は市場の織り込みで3割台から6割台へ跳ね上がりました。「利下げ待ち」から「利上げ警戒」への転換が、わずか数日で起きたことになります。

第二に地政学です。米国とイランの武力衝突は開始から半年が経過し、原油価格の反発を通じてインフレ懸念と長期金利上昇の材料となっています。第三に株価水準そのものです。S&P500は4年連続の2桁上昇ペースにあり、高値圏での利上げという組み合わせは、過去にも株価の重荷となってきました。

こうした要因を踏まえると、今年の9月は「アノマリーが当たるか外れるか」という問いの立て方自体がずれています。もし下落するとすれば、その主因はカレンダーではなく、利上げ判断とインフレ指標です。過去の中間選挙年のデータは、そのときの落ち幅がどの程度ありうるかの「目安」として読むのが現実的です。

新NISAで積み立てている人が、やらなくていいこと

新NISAの「つみたて投資枠」で米国株型の投資信託を毎月買っている人にとって、判断の主軸は一点です。その行動は長期の資産形成に対してプラスなのか、それとも単に心理的な安心を買っているだけなのか。

やらなくていいことの一つ目は、9月を避けるための積み立て停止です。前述のとおり、9月の平均下落幅は1%強です。積み立てを1カ月止めて次月に再開したところで、リターンへの影響は誤差の範囲にとどまります。それよりも、一度止めた積み立てを「もう少し下がってから」と再開できなくなる機会損失のほうが大きくなりがちです。

二つ目は、下落を見越した売却です。中間選挙年に平均18%の下落があるとしても、それがいつ始まりいつ底を打つかは事後にしかわかりません。さらに新NISAでは、売却した分の非課税枠は翌年まで復活しません。年間の投資枠を使い切っている人ほど、売却のコストは高くつきます。

三つ目は、為替を読もうとすることです。米国株の投資信託の基準価額はドル建ての株価と円相場の両方で動きます。ドル円は9月初めに160円台をつけたあと、1週間で153~154円台まで円高が進みました。日銀が9月17~18日の会合で政策金利を1.25%へ引き上げるとの観測が強まったことに加え、日米当局が円安是正に動くとの思惑、そして中東情勢を背景にした「有事のドル買い」の後退が重なった結果です。

今月は日米の中央銀行がそろって利上げに向かう珍しい局面で、どちらの観測が優勢になるかで方向が変わります。FRBが利上げに踏み切ればドルが買い戻されやすく、日銀の利上げ幅が市場の想定を上回れば円高が加速しやすい。一方で、日本企業の対外直接投資やデジタル赤字といった構造的な円売り圧力は残っており、本格的な円高トレンドへの転換を主流の見方とするには早いという指摘もあります。この状況が今後も長期で続く保証はなく、為替を読んで積立額を変える判断は、株価を読む以上に難しいものです。

やるべきこと、確認しておくとよいこと

一方で、下落局面を前にして意味のある行動もあります。

一つは、自分の積み立て設定が「機械的に続く」状態になっているかの確認です。クレジットカード積立や口座振替が設定されていれば、相場を見ずに買い続ける仕組みができています。手動で毎月買っている人は、下落局面で手が止まりやすいため、自動化を検討する価値があります。

もう一つは、年間投資枠の残りと、生活防衛資金の残高を切り分けて把握しておくことです。下落局面で「増やす」判断をとる人がいますが、それが合理的なのは、当面使わない余剰資金があり、かつ年内の非課税枠に余裕がある場合に限られます。生活費や近い将来の支出に充てる予定の資金を相場に投じることは、下落が長引いた場合の選択肢を狭めます。「増やす」は正解でも不正解でもなく、資金の性質によって答えが変わる、という整理が実態に近いでしょう。

S&P500は過去のすべての下落局面から、いずれ高値を回復してきました。中間選挙年の安値から12カ月後の平均上昇率が32%だったという数字は、秋の下落が長期の積立投資家にとっては「買い付け単価が下がる期間」として機能してきたことを意味します。9月の弱さも、中間選挙年の荒れも、積み立てを続ける人にとっては通過点です。相場格言に反応して行動を変えることが、格言そのものより大きなコストになる場合がある。この点は、どの下落局面にも共通しています。

※本記事は情報提供を目的としたものであり、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任において行ってください。

著者名/ 鈴木林太郎 経済ライター テックと経済の”交差点”を主戦場にやさしく解説。企業・自治体の取材とデータ検証を重ね、現場の課題を言語化する記事づくりが得意。

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