連載50周年を迎える不朽の名作「王家の紋章」が、初となる本格的な原画展を開催中だ。会場内では、過去に発売された映像作品の上映やセル画の展示、エジプトの神々の中から、自分がどのタイプであるかを占う「アイシスのエジプト神話占い」も体験できる。直筆サイン入りのアートのほか、クスっと笑ってしまうユニークなグッズ販売も見逃せない。東京を皮切りに、10月に大阪、2027年1月に福岡へ巡回予定だ。
連載50周年の「王家の紋章」
「王家の紋章」は、細川智栄子あんど芙~みんさんによる少女漫画だ。1976年から「月刊プリンセス」(秋田書店)で連載がスタートし、今年、連載50周年を迎えた。単行本は、現時点で71巻出版され、連載が続いている。
ストーリーは、エジプトに留学中の主人公、アメリカ人少女キャロルが友人らと考古学を研究中、暗殺された古代エジプト王(ファラオ)・メンフィスの墓を発掘する。その直後、キャロルのもとに、メンフィスの姉・アイシスが現れ、その呪術によって古代エジプトにタイムスリップしてしまう。そこで、メンフィスに出会い、徐々に惹かれ合うようになる。
キャロルは、21世紀の人間としての倫理観や考古学の知識が、『尊い予言』と判断され、崇められるようになるが、その予言などの知識を得たいエジプト近隣の国の王などからも狙われるようになる。メンフィスとの間には愛が生まれるが、ふたりの行く手には、数々の危機が立ちふさがる。
少女漫画であり、古代エジプトの歴史漫画でもあり、タイムスリップという時空を超えた物語が、次はどうなるのかとわくわくさせられる。実家に、1巻からずらりと並べている筆者にとって、初めて原画が見られると、はやる気持ちを抑えながら、一般公開前日の内覧会に参加してきた。
連載50周年で初公開となる原画も
原画展の会場に入ると、筆者にとって懐かしいシーンが目に飛び込んできた。ストーリーの初期の作品から順に展示されている。王家の紋章の読者でなくても、ストーリーがわかるように簡単な解説もつけられていた。原画には、セリフが手書きで書きこまれ、単行本になったときは写植に変換されていることがわかったり、写植自体を切り張りしたりしている原画も見られた。
また、古い原画の中には、シミができてしまったものもあり、この原画展のために修復作業が行われたという。修復作業がどのように行われたのかの動画も上映され、その作業の細かさに驚き、見入ってしまった。
また、メンフィス王の姉であるアイシスによる占い「アイシスのエジプト神話占い」を体験することができる。3つの質問に答えると、自分がどのエジプト神かがわかるというもの。筆者も体験してみたら、「ホルス」という結果に。ちょっとうれしい!
作者のおふたりも改めて50年を振り返る
内覧会には、作者の細川智栄子あんど芙~みんさんも来場し、展示された原画を懐かしそうにご覧になった後、エジプト美術考古学の第一人者である吉村作治さんを交えたインタビューが行われた。吉村さんは、「王家の紋章」文庫版第1巻に解説も寄稿している。
「こんなに描いたのかしらって、忘れているものもあったり懐かしかったりしました。カビがあるとかも、出してみないとわからないですねえ。」と、やさしい口調でお答えになる細川智栄子さん。エジプトを舞台に漫画を描こうと考えたのは、2度の世界旅行で、飛行機からのエジプトの眺めがステキだったからという理由からだったそう。そんなきっかけから、50年も続けられるのは、姉妹で取り組んでいるからとのこと。ただ、姉妹だけに喧嘩することもあるのではないかという質問には、
「大きな喧嘩にはなりません。喧嘩していても締め切りがきますから。すると、喧嘩なんてしていられないんですよ。」(芙~みんさん)
長い間続けていられるのは、ふたりで協力し合えるからこそのようだ。そして、エジプトについては、ステキだったということからスタートした連載だが、研究者からは、どのように映っているのか気になるところ。
「目の描き方がすばらしいよね。年齢によって描き分けられていて。また、考古学者と神様の呼び名が違うこともあるんだけど、写実だけじゃないところもすばらしい。」(吉村さん)
エジプト研究60年という吉村さんは、この取材の数日後に、エジプトに出発されるということで、もしかしたら、今信じられていることがひっくり返るような発見があるかもしれないというお話も伺えた。すると、今後の「王家の紋章」のストーリーにも影響するかもしれない。となると、結末も気になるところ。
「あとどれくらいとか決めてないんです。でも、結末は頭の中にあります。ここでは、言いませんよ。秘密。」と、茶目っ気たっぷりのおふたり。まだまだ「王家の紋章」の世界に浸れそうだ。
原画展のオリジナルグッズ
原画展のオリジナルグッズも忘れずにチェックしたい。連載50周年記念の王家の紋章原画展図録をはじめ、直筆サイン入り金箔アートのほか、手軽に購入できるアクリルスタンドや、エジプト王になった気分でワインでも飲みたくなるグラスなど、さまざまなグッズが販売されている。
なかでも目を引いたのが、金箔をあしらったアート作品。純金箔を使用し、金沢の職人が一枚ずつ金箔を貼り込み、作品ごとに異なる表情になるという、伝統工芸の技術と漫画作品が融合した額装アートには、直筆サインも入る。
キャロルがメンフィスに解毒剤を飲ませるシーンが描かれたお薬手帳ならぬ「王薬手帳」カバーは、薬局に行くときにクスっと笑えて気分を上げてくれそう。薬局に行くときは、基本的に体調がすぐれないときだろうから。
アクリルスタンドは、21世紀の装いのメンフィス王とイズミル王子。ミニサイズのアクリルスタンドも6種類ある。
50年の連載で初めての本格的な原画展。作者のおふたりも来場者と同じルートで見学し、「アイシスのエジプト神話占い」にもトライ。なんとおふたりともホルスという結果に。「あら、同じね。姉妹だからかしら」というおふたりに思わずつっこみそうになったが、同じ思いで作品に取り組んでいるからこその結果だったのだろう。
50年来のファンにはたまらない、そして、初めて王家の紋章に出会うという人にも、ストーリーとともに原画を楽しむことができる展覧会。現在も、ペンで描いているという作品を、目の前で見られる貴重な機会なので、足を運んでみてはいかがだろう。
王家の紋章 原画展
https://ouke50th.fundom-event.com/
【東京会場】
開催期間:2026年8月28日~9月13日
開催会場:有楽町マルイ8F イベントスペース
【大阪会場】
開催期間:2026年10月9日~10月25日
開催会場:なんばマルイ5F イベントスペース
【福岡会場】
開催期間:2027年1月16日~1月31日
開催会場:博多マルイ7F イベントスペース
入場料:2,200円(消費税込み)
取材・文/林ゆり
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