海外旅行では、キャッシュレス決済サービスは必須のものである。
19世紀、イギリスの実業家トーマス・クックが本格的なトラベラーズチェックのサービスを始めてから、国外旅行に出かける際は現金がなくとも快適に過ごせる仕組みが整備された。そして、それに先駆けて江戸期の日本では両替商のネットワークが為替を発行し、安全な街道の構築に大貢献していた。高額の現金を持った旅行者はどうしても犯罪に遭いやすく、治安維持のためにはキャッシュレスサービスの整備が必要不可欠であるということを我々の先人はよく知っていたのだ。
さて、筆者はこの記事をタイのパタヤで執筆している。パタヤは東南アジア有数のリゾート地であるが、実は外国人旅行者にとってはあまり良いキャッシュレスインフラが整っているとは言い難い。そこで今回は、『TAGTHAI Easy Pay』というキャッシュレス決済アプリを使ってみた。

クレカよりQRコード決済
パタヤには、各国から旅行者が集まっている。
筆者が今回渡航した時、パタヤにはアメリカ軍人が数千人単位で来訪していた。近隣の港に空母エイブラハム・リンカーンが入港したのだ。故に、5日間ほどは米軍人に端を発する経済効果が目に見える形で表れていた。
米軍人には、パタヤのキャッシュレス決済事情はどのように映っただろうか。意外にもクレジットカードが使える店が多くない、と感じたのではないかと筆者は邪推している。
レストランにしろバーにしろマッサージ店にしろ、クレカ決済ができる店は多いとは言えないのが現状だ。仮にできたとしても、3%の手数料を客が負担しなければならないことが殆ど。そう、クレカには決済手数料というものがある。これはタイに限ったことではないが、個人店舗がクレカ決済導入に躊躇する最大の理由はこの部分である。
代わってタイで積極的に導入されているのが、QRコード決済システム。クレカよりも低い手数料設定で、しかも国家主導で各QRコード決済サービスの「コード共通化」を進めたため、この国ではクレカよりコード決済のほうが浸透するに至ったのだ。
そして、外国人が利用できるコード決済サービスといえばTAGTHAI Easy Pay。正確にはTAGTHAIという観光情報アプリの中の一機能Easy Payである。タイ政府とカシコン銀行が提供するもので、外国人旅行者は両替前の現金をカシコン銀行ブースに持っていき、そこから現金のタイバーツではなくアプリに残高として入金するという仕組みだ。
屋台での支払いに大活躍!
たとえば、PayPayは紐付けの銀行口座やクレカから残高チャージをすることができる。筆者は長年のauユーザーだから、au PAYで「通信料金と合算」という手段で残高を増やすことも可能だ。
が、TAGTHAI Easy Payの場合はそうした「現金を触らないチャージ」はできない。あくまでも外国人旅行者が自国の通貨をブースのスタッフに渡し、そこからスタッフが残高チャージの手続きをするという一風変わった方式になっている。これはマネーロンダリング対策と思われる。なお、カシコン銀行のブースは空港に必ず設けられている。「緑の銀行」といえば、「ああ、あのブースか!」と理解してくれる人もいるはずだ。
どのみちこのTAGTHAI Easy Payを使えば、到着時の空港から先は現金を持ち歩かずに済む。盗まれる危険性から解放される、というわけだ。
9月4日、筆者はバンコク・ドンムアン空港から程近いホテルにチェックインした。時刻は午前4時。クタクタの体を引きずって、何か腹に入れるものはないかと辺りを見回す。見つけたのは夫婦2人が営む屋台だ。QRコード決済に対応しているという。
上の写真のような、自分の好きな総菜を取る方式の屋台はどうしても細かい会計になってしまいがちだ。仮に「合計は54バーツ」と言われても、下一桁の4バーツがなかなか出てこない。そんな時にこそ、TAGTHAI Easy Payの出番なのだ。
9月30日までに「アップグレード」が必要!?
このTAGTHAI Easy Pay、何とATMでの現金引き出しにも対応する。どうしても現金が不足した場合、カシコン銀行のATMに行けばアプリの残高からいつでも紙幣を用立てることができる。ATMなどはパタヤにはいくらでもあるため、いざとなったらスマホ片手にホテルの外を飛び出せば必ず緑のATMに出くわすはずだ。
ところが……TAGTHAI Easy Payにはこんなニュースも。2026年9月30日までに、カシコン銀行のブースでウォレットをアップグレードするようにというアナウンスが入ったのだ。それをしなければ、今年10月以降は残高があっても利用できなくなるとのこと。カシコン銀行の公式サイトでは、あくまでも「アプリのアップグレード」を勧めるアナウンスが記載されているだけでサービスそのものの終了ではないようだが……。
いずれにせよ、このTAGTHAI Easy Payは日本人旅行者の間でも非常に評価が高く、タイ滞在中の「必須の相棒」と言ってもバチは当たらないキャッシュレス決済サービスだ。
文/澤田真一
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