@DIMEでは4代目となった新型エルグランドの公道試乗記を機に、エルグランドの概要、詳細についてすでに報告済み。ここでは新型エルグランドのGグレードを一般道、高速道路、山道で走らせた試乗記をお届けしたい。なお、発売初期のグレード別受注状況では、このGグレードが57%を占めているという。
16年ぶりの全面刷新! 第3世代e:POWER×e-4ORCEを積んだ「威風堂々」の巨体
「LIMITLESS GRAND TOURER」を商品コンセプトとする4代目エルグランドは全車、新しい第三世代の1.5L発電特化型エンジン+前後モーターによるe:POWER、e-4ORCEと呼ばれる電子制御4WDを採用。ボディサイズは全長4995×全幅1895×全高1975(プロパイロット2.0装着車/非装着車は1965mm)、ホイールベース3000mmと威風堂々、大柄だ。
電動パワーユニットはそのe:POWER、進化したe-4ORCEで構成され、発電特化型1.5Lターボエンジン(ZR15DDTe)と、モーター・発電機・インバーター・減速機・増幅機の5つの主要部品をひとつにまとめた「5-in-1 e:POWERパワートレインユニット」を採用している。WLTCモード燃費は16.8km/L。燃料タンク容量は67Lと十分で、ガソリン満タンであれば900km近い航続距離も期待できるプレミアムロングツアラーでもある。
さて、ゼログラビティシートを奢る運転席に着座すれば、水平基調のインパネ、14.3インチの統合型インターフェースに、およそ16年ぶりに刷新された新型エルグランドの新しさを強く実感できる。東名高速道路・御殿場IC近くの試乗基地から山道に向かって、6種類あるドライブモード(エコ、日産ミニバン初採用のコンフォート、スタンダード、スポーツ、パーソナル / スノー)を目玉のスタンダードモードにセットして走り出せば、ミニバンならではの着座位置、視界の高さから、ボディサイズは感じにくかった。ただし、太いAピラーが、例えばT字路の右左折で視界を遮る場面もないではなかったのだが・・・。
乗り心地はゆったりとした重厚感あるもので、フラット至極。箱根の荒れた道でも無粋な振動、路面の継ぎ目のショックはしなやかにいなし皆無に近い。これは刻々と変わる路面に対応する電子制御のインテリジェントダイナミックサスペンションのおかげにほかならない。
100%モーター駆動のe:POWERだからウルトラスムーズな走行感覚は電気自動車そのもの。そして圧巻の車内の静かさ、乗り心地の良さに驚かされることになる。なにしろドアを閉めた瞬間から、外界と遮断されたかのような静謐さが車内に漂い、すれ違うクルマ、トラックのすれ違い音さえほぼ聞こえない。
さらに感動できるのが、エンジンノイズ(と振動)だけでなく、ロードノイズの遮断だ。「ライバルを圧倒する」と説明される車内の静粛性は、エンジン音とロードノイズを高精度に検知しリアルタイムで打ち消すANC=アクティブノイズコントロール(ON/OFF可)がその役割を果たす。車内のスピーカー6個、マイク7個によって風切り音はもちろん、エンジンノイズ(60%減)、ロードノイズ(50%減)、および振動まで打ち消し、さらに遮音に効く高剛性・高遮音ボディとともに、ワンランク上の高遮音ガラス(グレード別)を採用しているのだから、異次元の静かさに包まれるのだ。
実は、今回の試乗拠点までは国産BEV(電気自動車)で訪れたのだが、たしかにパワートレインのノイズがないがゆえに、路面によってロードノイズがことさら気になったのも確か。言い換えれば、ロードノイズが気になるBEVよりずっと静かに走ってくれるのが、ロードノイズさえ徹底遮断する新型エルグランド。これにはエルグランド用に専用開発された235/60R18サイズの、静粛性にも優れたヨコハマアドバンV61(市販のものはプレミアムSUV用)の採用も寄与していると思われる。
山道でも巨体を感じさせない! e-4ORCEと電子制御サスによる人車一体の走り
山道に入れば、まずは前席のゼログラビティシートのかけ心地の良さはもちろん、絶妙なサポート性が褒められる。とくに背もたれ部分の絶妙なクッション性(快適性)とともに背中がしっかりとホールドされるため、カーブを勢いよく曲がっても運転姿勢の崩れは最小限。車両側の安定感の高さもあって安定した運転姿勢のままカーブを走り抜けることができる。全幅1895mmはライバルより45mm幅広(1850mm)だが、実はミラー・トゥ・ミラー幅では55mm狭いそうで(開発陣談)、狭い山道を走行してもハンディはそうないかも知れない。
しかも、クネクネした山道ではステアリングのスムーズな操舵フィール、大柄なボディにして向きの変えやすさ、路面に張り付くような安定感=ロードホールディング性能とともに、姿勢変化の少なさにも驚かされる。e-4ORCE、そして1/100秒の制御を可能にする電子制御ショックアブソーバーを用いたインテリジェントダイナミックサスペンションの巧みな制御が功を奏しているからで、大げさに言えば、この巨体にして、人車一体感ある走りを、シートのホールド性もあって味わうことができたのだ。
山道を下り、制限速度120km/h区間もある新東名高速道路に入る。ドライブモードをスタンダードモードにセットしたままの乗り心地は依然として快適そのもの、素晴らしくフラットだ。そして80~120km/h走行時の風切り音、ロードノイズの遮断、車内の相変わらずの静かさは圧巻。もちろん、直進性も文句なく、プレミアムなドライバーズカーとしてのオールラウンダーな資質の高さを遺憾なく発揮してくれたのだ。
高速走行ではドライブモードを各種試した。コンフォートモードではふんわりとしたストローク感ある乗り心地となり、ジョイントの通過では僅かな揺れ残りはあるものの、これはこれで体に優しく快適だ。スポーツモードではさすがに乗り心地はビシリと引き締まり、ジョイント通過での揺れ戻しはほぼ皆無。そのぶん、音、振動のショックが僅かに伝わってくるものの、決して不快ではないことを確認した。個人的には、ドライバーとしてドライブモードを固定し、あらゆるシーンを走るのであればスタンダードモードが気に入った。
高速道路では最新のプロパイロット2.0のハンズオフドライブも体験。0~130km/h(標識の制限速度+10km/h)で作動し、クルマが流れているときにはもちろん、渋滞時にも役立つ先進運転支援機能と言っていい。その制御も熟成され、制御の確実さ、安心感は絶大。自動レーンチェンジまで提案、行ってくれるのだ。
そうそう、新型エルグランドの快適性を高める秘策のひとつとしてe-4ORCEとブレーキ圧を自動で調整するスムースストップ機能がある。ブレーキを踏み停車する最後にカックンとなりがちな挙動、揺り返しを制御し、止まる際までフラットな姿勢を保ってくれるのだから、同乗者、あるいは同乗する愛犬もすこぶる快適に乗っていられるのである。これはVIP用のショーファーミニバンとしても大いに有効な機能と言っていい(急ブレーキ時にはカットされる)。
ところで、こうしたLLクラスのプレミアムミニバンでは、とくに2列目キャプテンシートの居心地、かけ心地が商品力に大いに影響する(2列目ベンチシートの設定なし)。そこで高速走行時に、オットマンも備わる2列目席にも乗車してみた。するとどうだ。オットマンもあるゼログラビティシートのかけ心地の良さはもちろん、e-4ORCE、電子制御ショックアブソーバーを用いたインテリジェントダイナミックサスペンションによるフラットで快適な乗り心地、エンジン、ロードノイズ、風切り音の巧みな遮断による静かさは1列目席と変わらない。しかも、ライバルでは気になる人は気になるキャプテンシートのひじ掛けの微振動がほぼないのである。シート振動はボディ剛性、シートの取り付け部剛性、重量、重心の高さが影響するものだが、新型エルグランドの開発陣に聞けば、ダイナミックダンパー(15kHz)を2つ内蔵したシート自体の重量(約50kg/1脚)はライバルと変わらないものの、そのダイナミックダンパーのあるシートバック側にアームレストを備え、シートに入力するフロア振動を徹底的に抑えたことが功を奏しているという。
試乗した新型エルグランドにはOPのシートバックモニターまで備わり、画面にはUSB Video、USB Audio、HDMI、Miracast接続ができるから移動時間も持て余さない。
そして2列目席は降車性にも優れていることを乗降時に確認。これはセレナもそうだが、シートサイドのサポート部分(上からスラブ層/低反発クッション層/ウレタンベース)の上部、クッション性を感じさせるスラブ層を柔らかくしているのがポイント。おかげで、スルリと腰を滑らすことができ、足が地面につきやすいのである。
その2列目キャプテンシートには背もたれを倒しても(最大84度)目線が前を向くデュアルリクライニング機構、オットマン、折りたたみ式テーブル、ポケット、最大60WのUSB-C PDポートなども用意され、シートヒーターはもちろん、贅沢にもシートベンチレーションまで備わっているのだが、ショーファーミニバンとして使用するVIPであれば2列目席にシートマッサージ機能が欲しいと思うかも知れない・・・。
こうした約2時間、様々な道、路面を走り切ったのだが、乗り心地、静かさ、操縦性、制動制御の点において、ライバルを凌ぐほどの威力を見せつけられたというのが本当のところであった。
キャビン最優先の居住性。アルファード一強を崩す「走るプレミアムラウンジ」
ここからは、新型エルグランドの室内パッケージについて報告する。身長172cmの筆者のドライビングポジションを基準に実測すれば(OPのツインガラスルーフ装着車)、前席頭上に245mm、フラットフロアの2列目席頭上に160~200mm(シアターフロアのシートスライド位置による)、膝回りに最大550mm(2列目席スライド後端位置)のゆとりたっぷりの空間がある。下の画像は身長190cmクラスのテスターの着座だが、ご覧の通りの余裕である(1列目席は筆者のドライビングポジション)。
新型エルグランドに多人数乗車するとき以外は畳んで使うはずの3列目席に関しては、頭上に140mm、膝回りに最小170mm(2列目席スライド後端位置)という、大人でも十分に寛げるスペースが、前方視界が確保されていた。なお、2-3列目席スルー幅は165mm。身長172cm、体重65kgの筆者なら通ることができる隙間である。
ラゲッジルームについては、開口部地上高640mm(フロア段差なし)、3列目席使用時の奥行きはないに等しいが、2列目席を前出しすれば最大630mmの奥行きがあり、幅は1260mm。最低天井高は1150mm。大きな荷物を積むのであれば、3列目席を左右にハネ上げ、ベルトで固定することが必須になるだろう(格納はけっこう重い/キャビン最優先パッケージゆえ)。
こうして新型エルグランドに触れ、試乗してみると、16年ぶりの新型にかける日産開発陣の意気込み、意地がひしひしと伝わってくる傑作と思えたのも本当だ。2列目席周りにライバルほどの豪華さこそないものの、第三世代e:POWER、進化したe-4ORCE、電子制御ショックアブソーバーを用いたインテリジェントダイナミックサスペンション、アクティブノイズコントロールの合わせ技によって快適性、静かさで勝負し、プレミアムミニバンの価値を再定義したことが伺える。
最後にボディカラーについても言及したい。フジドーン/シゴク プレミアム2トーンは昨年のモビリティショーでもおなじみで、今回試乗したダークメタルグレー、そしてプリズムホワイト、シゴクなどを揃えているが、とくにビビッときたのが、試乗会場になかった、街中で見かけたミッドナイトブラックである。まさに黒1色、日本の伝統工芸である「組子」をモチーフにしたフロントグリルの迫力が際立ち、とんでもなくカッコ良く見えたのである。一般的にはグレーやホワイト(受注の40%)が無難だが、受注32%を占めるブラックも、ショーファーミニバンとしてだけでなく、一般ユーザーのちょっと攻めたプレミアムミニバンの所有という点で、新型エルグランドの存在感をシックに際立たせると思えたのであった。なお、標準車の価格はX e-4ORCEが689.7万円、G e-4ORCEが757.9万円である。
そして、日産モータースポーツ&カスタマイズによるAUTECH(オーテック)バージョンなどの特装車も用意されている。
これまで、国産LLクラスプレミアムミニバンはしばらく一強の時代が続いたものの、デザイン、快適性、e-4ORCEによるオールラウンダーかつ、まるで”電欠”なしの電気自動車のような上質極まる走りの資質を含め、想像以上の仕上がりを見せる新型エルグランドの登場によってその構図は大きく変わることは間違いない。国産LLクラスプレミアムミニバン選びにますますワクワクできるというわけだ。

文・写真/青山尚暉
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