
新幹線を利用するためにマイカーを使う。これだけ書くと、かなり矛盾した印象になってしまう。
が、「マイカーを駅前の駐車場に置いて、そこからは新幹線を使って遠出する」と書けば当たり障りのない印象になるだろうか。もちろん、そうした行動を可能にするには駅との親和性が高い駐車場が必要不可欠である。
具体的には、Suica等の交通系ICカードを活用することで駐車場料金が安くなるという仕組みの確立である。これは単に「公共交通機関を利用しよう」という施策に留まらず、21世紀中頃の都市設計をおぼろげながら映し出すものだ。
交通系ICカードによるまちづくりを目指す
JRグループは、JR九州の一部路線を除けばクレカタッチ決済乗車に消極的と見ることができる。
これはつまるところ、「交通系ICカードによるまちづくり」を目指しているためだ。
交通系ICカードは、今や単なる決済デバイスではない。日々利用データが蓄積し、時には意外な事実をサービス提供者に突きつける。それを生かしたJR沿線地域の再開発を行えば、より合理的な都市が実現するはずだ。
「JRグループは、交通系ICカードが形成した膨大なビッグデータを有し、それはクレカ発行会社では太刀打ちできないレベルである」
そうした言説がテクノロジーライターの間で存在し、またそれはタッチ決済乗車に注力している陣営からは否定されてはいるが、ここではその言説が強い説得力を有している店に注目したい。この20年で溜めに溜めたデータは、箱に封印された怪物のように成長しているはずだからだ。
以上の理由からJRグループ、特にJR東日本とJR西日本は今後もタッチ決済乗車より自社発行の交通系ICカード(JR東日本はSuica、JR西日本はICOCA)を軸にした開発に注力していくと思われる。
ペーパーレスチケット普及への取り組み
6月1日、JR仙台駅の『タイムズ仙台駅屋上駐車場』で『交通ICパーク&ライド』のサービスが開始された。
これは、Suica等の交通系ICカードで新幹線を利用した場合、駐車料金に優遇措置が施されるというものだ。
このたび東日本エリアで初めて、新幹線利用者を対象にした「交通ICパーク&ライド」を開始します。
「タイムズ仙台駅屋上駐車場」に駐車し、新幹線eチケットサービスまたは「タッチでGO!新幹線」をSuicaなどの交通系ICカードでご利用の際、駐車料金精算時に新幹線・仙台駅で降車した交通系ICカードを精算機で認証することで、駐車料金の優待を受けることができます。
従来、新幹線利用による駐車料金の優待を受けるには、降車駅で発行される紙の新幹線の利用証明が必要でしたが、本サービスの開始により利用証明の発行の手間や紛失リスクが軽減され、よりスムーズに駐車料金の優待をご利用いただけます。
(タイムズ24、東日本エリア初の新幹線利用者向け「交通ICパーク&ライド」を仙台駅にて6月1日より開始 パーク24株式会社 PR TIMES 黒字は筆者)
『交通ICパーク&ライド』の導入をきっかけに、該当駐車場の優遇措置が導入された……というわけではない。要するに、紙の利用証明をデジタル化する取り組みなのだ。
この取り組みは、新幹線eチケットサービスもしくは『タッチでGO!新幹線』の利用が前提。実はこのあたり、今の時点でペーパーレス化が進んでいるとは言い難い部分でもある。
乗車券と特急券の2枚重ねで自動改札機に入れる光景は、2026年の今でもよく見かける。JRの『みどりの窓口』縮小・廃止問題も、このあたりの事情を鑑みないと話が見えてこない。『交通ICパーク&ライド』は、ペーパーレスチケットと強く結びついた副次的サービスであり、ペーパーレスチケットの普及率を押し上げる効果をもたらすであろう重要な施策なのだ。
既存の概念を作り替える
ともあれ、この取り組みは一般ユーザーにとっても多大な恩恵がもたらされる。
新幹線は、渋滞を回避しながら高速で目的地を目指せる交通手段。特に夏休みや年末年始は、車道では高確率で渋滞が発生する。旅行者にとって、新幹線はなくてはならないものだ。
その上で、今現在のトレンドや社会課題についても考慮しなければならないだろう。
タイムズの『交通ICパーク&ライド』自体は、登場したばかりのサービスというわけでは決してない。また、概念としてのパーク&ライドは1960年代から存在する。が、キャッシュレス決済サービスが登場してから社会インフラとして定着し、さらにCO2の排出問題が全世界の共通事項になると、パーク&ライドに「世界的環境問題に対する答えを出しつつ、一般市民にとってより便利なインフラを提供する」という意義が実装されるようになった。
こうした仕組みが全国的に広がっていくと、自家用車の主用途が「遠出のための乗り物」から「自宅から半径10km以内へ行くための乗り物」に変わっていくのではないか。
テクノロジーの進化は既に存在する概念を発展させ、新しいものに作り替えてくれる。我々の生活は、少しずつではあるが着実に便利になっているようだ。
参考・画像
交通ICパーク&ライドとは? タイムズ
タイムズ24、東日本エリア初の新幹線利用者向け「交通ICパーク&ライド」を仙台駅にて6月1日より開始 パーク24株式会社 PR TIMES
文/澤田真一
窓口混雑の解消に期待大!誰でも最短1分で購入できるという「新幹線eチケット購入機」とは?
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