SceyeのHAPSが米国から太平洋を横断、日本上空で通信試験を実施
ソフトバンクとSceye, Inc.(スカイ、本社:米国ニューメキシコ州、以下「Sceye」)は、SceyeのLTA(Lighter Than Air)型(※1)の成層圏通信プラットフォーム(High Altitude Platform Station、以下「HAPS」)による、日本でのHAPS商用化に向けた試験サービスの提供に成功した。日本上空を飛行するHAPSによる通信試験に成功したのは、国内で初となる(※2)。
また、3次元通信ネットワークの実現に向けたHAPSとドローンとの通信の他、将来のサービス提供を見据えて、HAPSを活用したエッジコンピューティングの技術検証にも世界で初めて成功した(※3)。
※1 LTA(Lighter Than Air)型とは、空気より軽く、浮力を利用して飛行を維持するHAPSのこと。
※2 HAPSからスマホおよびドローンの通信試験に成功したのは日本初。2026年8月23日時点の公開情報に基づく(ソフトバンク調べ)。
※3 HAPS上にモバイルコアとウェブサーバーを搭載し、スマホからの通信を地上ネットワークを経由せずにHAPS内で応答処理し、その結果をスマホへ返す試験に成功したのは世界初。2026年8月23日時点の公開情報に基づく(ソフトバンク調べ)。
■ソフトバンク Sceye HAPS(2026年8月出発時の様子)
HAPSの長距離・長期間飛行と滞空性能を確認
今回使用したSceyeのHAPSは、2026年8月9日午後10時00分(日本時間)に米国ニューメキシコ州を出発。太平洋上空を約13日間、1万5000km以上の飛行を経て、8月23日午前7時11分(日本時間)に日本上空へ到達した。
その後、南海トラフ地震などの大規模災害を想定したエリアである高知県室戸市周辺の上空(室戸岬沖)において、成層圏の風向きや風速などの気象条件を踏まえて機体を運用しながら、指定された試験エリアで長時間にわたって半径最小5km以内で機体の位置を保持した。
これにより、SceyeのHAPSが長距離・長期間飛行して、日本の気象条件においても一定の範囲内で安定して滞空できることが確認できた。また、日本での試験終了後は太平洋上空を横断して米国に向けて飛行しており、9月2日現在も長期間の連続飛行による性能の確認を継続している。

■HAPSによる地上スマホの通信性能を実施
高知県室戸市周辺において、HAPSと地上のスマホ間の双方向の通信試験が行なわれた。
試験では、SceyeのHAPSに搭載した4G LTE相当の基地局を、地上ゲートウェイを介してソフトバンクのコアネットワークに接続。その結果、音声通話やテキストメッセージの送受信、SNSなどのアプリケーションの利用、ビデオ通話や動画の視聴といった大容量のデータ通信が安定して行なえることが確認された。

また、緊急地震速報や津波警報などの緊急速報メールシステムや、海上保安庁の協力の下、音声通話による118番緊急通報の確認なども行なわれた。
データ通信の試験においては、地上基地局との電波干渉を低減しながら、地上ネットワークと同等の通信性能を実現できることを確認。これにより、日本上空を飛行するHAPSから地上のスマホへ安定して通信サービスを提供できることを確認した他、HAPSの商用化に向けた設備やネットワーク構成などの運用に関する知見が得られた。

HAPSとドローン間の通信に成功
ソフトバンクは、HAPSを活用して、大規模災害時などに地上へ通信サービスを提供するだけではなく、ドローンなどの上空のモビリティへも安定した通信環境を提供する、3次元通信ネットワークの構築を目指している。
その実現に向けた取り組みとして、HAPSとドローン間の通信試験も行なわれた。今回の試験では、HAPSの通信環境下で遠隔制御によるドローンの自動飛行を実施。飛行制御やドローンからの位置情報の送信、映像伝送などを安定して行えることが確認された。
このようなHAPSの活用により、災害発生時の被害状況の確認や物資輸送、離島・洋上などでの監視、山間部を含む物流、送電線や道路などのインフラ点検、山林の監視など、ドローンを用いたさまざまなユースケースへの応用が期待できる。

■世界初、HAPSを活用したエッジコンピューティングの技術検証に成功
今後、AI(人工知能)の活用が情報の生成のみならず、フィジカルAI(※4)などの領域へ広がることで、通信ネットワークやデータ処理はさらなる低遅延化が求められてくる。
そこで、成層圏におけるエッジコンピューティングの可能性を確認するべく、HAPSに処理サーバーを搭載し、HAPS上でデータを処理する検証が行なわれた。
その結果、HAPS上のサーバーでの応答処理時間は往復平均68ミリ秒となり、インターネットを経由してクラウド上で処理する場合と比較して、通信の遅延を40%以上低減できることが確認された。
HAPS上にモバイルコアと処理用のウェブサーバsーを搭載して、HAPS内で応答処理してその結果をスマホへ返す試験に成功したのは世界初となる。
ソフトバンクでは「HAPSが提供する広域な通信エリアとエッジコンピューティング技術を組み合わせることで、フィジカルAI領域での活用やリアルタイムな映像解析など、広域性と低遅延性の双方が求められる新たなユースケースでの活用を目指します」とコメントしている。
※4 フィジカルAIとは、ロボットのセンサーやカメラ、外部のシステムから得た情報をAIが解析・判断し、その結果に基づいてロボットが柔軟で複雑な動きができるようにする技術のこと。
今後の展開について
ソフトバンクとSceyeは、今回のHAPSの試験サービスの提供によって得られたHAPSの飛行や運用、通信に関するデータや知見を生かして、運用体制の整備や通信品質の向上を進め、2027年以降の日本国内でのHAPS商用化を目指す。
また、ソフトバンクは6G(第6世代移動通信システム)時代を見据えて、衛星やHAPS、地上の通信ネットワークをシームレスに連携させることで、地上のみならずドローンなどの上空のモビリティに安定した通信環境を提供する、次世代の3次元通信ネットワークの実現を目指す。将来的には、HAPSによるエッジコンピューティングや、AI-RANなどの技術の活用を検討し、次世代の通信インフラとしてHAPSのユースケースを広げていくという。

構成/清水眞希




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