対価を得て不特定の相手方と性交する「売春」は、売春防止法によって禁止されています。
売春の相手方となること(いわゆる「買春」)も禁止されていますが、罰則の対象とはされていません。規制が「売る側」に偏っているのではないかという問題意識の下、法務省の検討会において売春防止法の見直しが議論されています。
1. 現行の売春防止法における規制の概要
売春防止法では、対価を得て不特定の相手方と性交する「売春」と、その相手方となること(いわゆる「買春」)の両方を禁止しています(3条)。
もっとも、単純に売春や買春をすることが罰則の対象とされているわけではありません。罰則が科されるのは、次に挙げる行為などです。
・公の場での売春の勧誘等
・売春の周旋(=当事者の間を取り持つこと)
・人を欺き、または困惑させて売春をさせること
・親族関係による影響力を利用して売春をさせること
・売春をさせる目的で、人に財産上の利益を供与すること
・人に売春をさせる契約の締結
・売春を行う場所の提供
・管理売春
売春をする本人が処罰されるケースとしては、次の行為が定められています(5条)。
(1)公衆の目に触れるような方法で、人を売春の相手方となるように勧誘すること。
(2)売春の相手方となるように勧誘するため、道路その他公共の場所で、人の身辺に立ちふさがり、またはつきまとうこと。
(3)公衆の目に触れるような方法で客待ちをし、または広告その他これに類似する方法により人を売春の相手方となるように誘引すること。
これに対し、売春の相手方となる人(「買春」をする人)を処罰する規定は存在しません。そのため、売春防止法の規制は「売る側」に偏っているのではないかという問題意識が示されています。
2. 法務省の検討会における売春防止法見直しの議論
法務省は「売買春に係る規制の在り方検討会」を設置し、2026年3月以降、同検討会において売春防止法の見直しに関する議論が行われました。
2026年8月末の段階では、取りまとめ報告書の案が示されています。報告書案のうち「3 勧誘等に対する規制の在り方」において、「買う側」に対する罰則規定を設けることの是非に関する議論がまとめられています。
新たに罰則の対象とすることが検討されているのは、「買う側」による売買春の勧誘等です。
現行法では「売る側」の処罰規定のみが設けられているところ、委員の間では不均衡の是正などの観点から、「買う側」による勧誘等についても何らかの規制を設けるべきという意見で概ね一致したようです。
規制の方法としては、条例による規制に委ねるべきとの意見が述べられたものの、多くの委員は条例でなく法律で規制すべきと考えているようでした。
処罰の対象とする「買う側」の行為の具体的な内容については、委員間で必ずしも意見が一致していないことが読み取れます。
「売る側」と同様の行為を処罰の対象とする意見や、さらに処罰の範囲を拡大すべきとする意見が見られる一方で、誤認による処罰のリスクなどを懸念する慎重論も述べられています。
3. どのような「買春」行為が規制される見込みなのか?
現状の議論状況に鑑みると、路上など公の場で売買春の勧誘をする行為(いわゆる「立ちんぼ」など)については、「買う側」も近いうちに処罰の対象になる可能性があります。
具体的な見直し内容の検討は継続中なので、今後の検討会における議論が注目されます。
取材・文/阿部由羅(弁護士)
ゆら総合法律事務所・代表弁護士。西村あさひ法律事務所・外資系金融機関法務部を経て現職。ベンチャー企業のサポート・不動産・金融法務・相続などを得意とする。その他、一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。各種webメディアにおける法律関連記事の執筆にも注力している。東京大学法学部卒業・東京大学法科大学院修了。趣味はオセロ(全国大会優勝経験あり)、囲碁、将棋。
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