家族で楽しむアウトドアレジャー。愛犬と一緒に開放的な屋外で食べる食事は、楽しみのひとつだ。特にBBQは手軽で美味しいアウトドアメニューである。酷暑の後はアウトドアでも過ごしやすくなるので、シルバーウィークには愛犬と楽しいBBQが楽しめるかも。
「愛犬と一緒に過ごす屋外のBBQでは、いつも以上に愛犬の行動には要注意して下さい。腸閉塞や食中毒、異物誤飲といった事故が結構起きていますよ」と、注意を呼び掛けているのがひびき動物病院院長の岡田響先生。「トウモロコシの芯を飲み込んでしまって腸閉塞になったり、肉が刺さっている串焼きを串のまま誤飲するとか、いつもは食べないで何かを飲み込んで、嘔吐下痢になる、などで来院される飼い主さんがいらっしゃいます」と言う。
いったん口にした食べ物を取り上げるのは難しい
家にいる時は問題なく過ごせる愛犬なのに、なぜアウトドアレジャーになると危険を犯すのか。「盗み食い」「食いちぎり」「ゴミ漁り」「おこぼれ」など、さまざまなケースが予想されるが、賢い愛犬たちは「美味しそうなものは隙を狙って食べてしまう」と飼い主さんが予想しておくことが大切だと岡田先生。
「何かを見つけてしまった時、飼い主さんがあっ!ダメと叫んで取り上げようとしたりすれば、犬たちは取られまいと、焦って飲み込んでしまうものなのです」と言う。
動物の本能的にも、食べ物は一番取られたくないもの。警察犬など、かなり訓練された犬でなければ、口に入れた美味しいものを取り上げるのは難しい。
事故が起きる原因について、岡田先生は犬と人とで、認識の違いがあると言う。「私たちヒトは食べられないゴミと思うものは、基本的に口にしません。例えばお肉のトレイの中にある肉汁が染み付いた紙や、ビニール、食べ終わった包み紙、串や割り箸などには、もともと食べられるという認識がありませんよね。でも、犬は肉の美味しい匂いがついたそれらは、食べられるものと認識してしまう。食べられないという概念あるいは認識がないから仕方がないのです。
それと同じように、人間が美味しく食べたトウモロコシは、食べ終わった“芯”をごちそうと勘違いして食べてしまいまうんです!」。
身の回りのものはなんでも食べる可能性がある!と普段から注意することは、外出時の愛犬との楽しい思い出づくりには必要なことと岡田先生。「事故にならないように気遣ってあげてほしいです」と言う。

秋に向けて注意すべき美味しい果物の「種」
桃や柿といった固い種をもつ果物も動物病院では危険な食べ物となる。「どのご家庭でも食べる機会がある、美味しい果物に含まれる種は愛犬の腸閉塞の原因となる危険なもののひとつです」と岡田先生。
「これも人と動物の認識の違いで事故が起きるのですが、たいてい飼い主さんの側にもそうした自覚がないので、事故になっています!
ワンちゃんたちは平常時にはフルーツを食べる機会があるかもしれません。リンゴやバナナなど、与えても大丈夫な果物は結構あります。
問題なのは、可食部分と食べては危険な部分をワンちゃんは理解していない、または理解できないという点です。それを飼い主さんが意識していないことが原因で、種を一瞬で飲み込んでしまい、誤飲誤食事故となるケースが多いのです」と教えてくれた。
私たち人間は、トウモロコシの芯や果物の種は食べないのが普通でも、愛犬にはその認識が無い。特に可食部分の実の甘く美味しい部分を食べた経験があれば、同じ臭いがするものは芯や種を取り出さずに食べて、飲み込んでしまう。
種の場合、大型犬でも梅干しの種サイズでも腸閉塞が起こることがある。閉塞が起きなくても、種が消化されずに何か月も体内に留まってしまい、胃腸を傷つけ続ける可能性もある。飲み込んでしまった場合は、基本的には取り出す必要があり、愛犬にとっては大きな負担となってしまう。
「トウモロコシの芯や桃の種は飲んだら手術になるケースが多いのです。万が一飲み込んでしまったら、あるいは飲み込んだ可能性があった場合は、すぐに病院に連絡をして下さい。種ではないけれど、過去にはBBQの汁がついた石ころも飲んでしまった子もいました」と岡田先生。
犬や猫(他の動物も)の異物で起きた腸閉塞は、死亡率も高く、海外の研究では(注1)対応が遅れて腸の壊死や破裂(腹膜炎・敗血症)を起こした場合の死亡率は30~40%程度と考えられている。10頭中、3頭が亡くなる割合だ。人間が交通事故にあう確率が0.2%程度なので、かなり高い数字である。
飼い主さんは事故を防ぐためにも「近くに置かない、取られない」予防
愛犬は美味しい匂いがするものは、反射的に食べてしまう。事故が起きないようにするには徹底して「与えない環境を整備する=犬が届くところにものを置かない」ことだ。これは愛犬をどれだけ厳しく躾けるよりも現実的で効果がある。
犬は飼い主さんに怒られるのをわかっていても、平気で食べてしまう。以前紹介したKEYUKAの蓋つきゴミ箱は優秀だが、倒して無理やり蓋を剥がして中身を取り出すような、賢い愛犬はいるはず。特にゴミ漁りの前科がある場合は、近くに置かず、いじられない場所に移す方が良い。
動物は一度味を覚えるとその行動を繰り返す
「今秋も心配される野生のクマ被害ですが、環境省などでは美味しい味を覚えることがないように、観光客が野生動物に食べ物を与えないようにして欲しいと、強く呼び掛けています」と岡田先生。
「ここでいきなり何でクマなの?と思われるかもしれませんが、クマはヒトが与えたお菓子や食べ物の味を覚えると、その場所に何度もやってきて、民家やスーパーに侵入したりして大きな被害を出しています。ニュースや報道で見るクマの行動を見てもわかるように、動物は美味しい味は決して忘れません。そしてそれを得るためにしつこく何度もチャレンジしてきます。だから野生動物には食べ物を与えては絶対にダメなのです。
クマと愛犬は違う動物で、関係ないと思う人がいるかもしれませんが、“与えない予防”が大事だということでは全く同じなのです。クマも味を知らなければ、人間の生活ゾーンにはここまで現れなくなるかもしれません。人が善意で味を教えてしまったことで、その味を求めて民家や商店をあさり、報道されているのです」と注意を促してくれた。
こうした人と動物との関係を教えてくれる講演会が、9月6日に開催される。テーマは「野生動物から見た人間社会」。横浜市獣医師会が主催する野生動物に関する専門家の講演で、参加費無料。興味のある人は横浜市獣医師会サイトまで。会場や開催時間など詳細はhttps://yvma.or.jp/science/p0175.htmlまで。ペットの問題行動に悩む飼い主さんにとって、参考になりそう。
注1
NationalLobrary of Medicine
Gastrointestinal foreign bodies in dogs and cats: a retrospective study of 208 cases
犬と猫の消化管異物:208件の症例の回顧的研究
AVMApublications
Factors associated with dehiscence and mortality rates following gastrointestinal surgery in dogs
犬の消化管外科手術後の裂開および死亡率に関連する要因
文/柿川鮎子




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