「池袋は変わった」と言われることが増えた。
西武池袋本店の大規模リニューアルとヨドバシの進出、駅前の景色の変化。
そして一方では、アニメイト池袋本店を中心に広がるアニメ・ゲーム文化が国内外から多くの人を集め、街の新たな顔として定着している。
かつて「百貨店の街」と呼ばれた池袋は、なぜここまで姿を変えたのか。そして、その変化は単なる世代交代なのか、それとも街の進化なのか。
今回は、西武百貨店、ヨドバシ、そしてアニメ・ゲーム文化という3つの視点から、いま池袋で起きている変化を読み解く。時代とともに役割を変えながら進化を続ける池袋。その現在地を探っていきたい。
「西武の街」は終わったのか? 東口で起きている変化
長年「西武の街」として親しまれてきた池袋東口は、いま新たな転換期を迎えている。
かつて池袋といえば、「西武」と「東武」という二つの百貨店を中心に発展してきた街だった。東口には西武池袋本店、西口には東武百貨店が構え、それぞれが街のランドマークとして多くの買い物客を集め、「東が西武、西が東武」というユニークな配置は、池袋を象徴するフレーズとして長く親しまれてきた。
しかし近年、その構図に大きな変化が訪れた。
2025年から西武池袋本店では大規模なリニューアルが本格化し、営業フロアの縮小や改装が段階的に進められてきた。そごう・西武は、同店で創業以来初となる全面改装を実施。2025年7月には3階のコスメティックスフロア、9月には地下1・2階の食品フロアがオープンするなど、現在も段階的にリニューアルが進められている。

さらに、同じ施設内にヨドバシカメラを核とする「ヨドバシカメラ マルチメディア池袋」も今年6月に開業。西武池袋本店とヨドバシカメラが共存することで、百貨店を中心とした従来の商業施設のあり方から、家電や専門店、飲食などを組み合わせた複合的な商業空間へと、池袋の東口エリアそのものが大きく変わりつつある。
一方で、この再編をめぐってはさまざまな声も上がっている。ヨドバシカメラの出店計画が明らかになると、「池袋のシンボルだった西武らしさが失われてしまう」「百貨店文化を残してほしい」といった惜しむ声がSNSなどで広がった。一方で、「駅直結で家電が買えるのは便利」「新しいテナントが増えれば街が活性化する」と歓迎する意見も少なくない。街の再編をめぐって、〝池袋らしさとは何か〟を改めて考えるきっかけにもなっている。
百貨店が街の顔だった時代から、多様な商業施設やカルチャーが共存する街へ。
東口で進む再編は、池袋が新たな時代へ歩み始めていることを象徴する出来事と言えるだろう。
ちいかわ、アニメイト、推し活……池袋が〝目的地〟になった理由
その一方で、池袋には百貨店とは異なる新たな〝街の顔〟も育ってきた。それが、アニメやゲーム、キャラクターコンテンツを軸としたIPカルチャーだ。
かつて池袋は「乙女ロード」の街として知られ、女性向けアニメやゲームのファンが集まる聖地というイメージが強かった。しかし現在では、その枠を超え、幅広い世代のファンが訪れる街へと変化している。
その象徴のひとつが、2023年にグランドオープンしたアニメイト池袋本店だ。
サンシャイン通りに移転したことにより、売り場面積が拡大しただけでなく、展示スペースやイベントフロアも充実し、「商品を買う場所」から「作品の世界を体験する場所」へと役割を広げた。イベントやポップアップショップ、展示などを目的に池袋を訪れる人も少なくない。


さらに現在の池袋では、こうしたコンテンツの拠点が一つの施設に集約されているわけではない。サンシャインシティ周辺や池袋PARCOなど、街のさまざまな場所にキャラクターショップや期間限定ストア、ゲームセンター、カプセルトイ専門店などが広がっている。
また、サンシャインシティでは、『ちいかわ』『クレヨンしんちゃん』『ポケットモンスター』など、幅広い世代に支持されるIPに触れられる場所も増え、2025年には「ちいかわパーク」も開業した。


そして、池袋PARCOに展開される「ちいかわらんど」や「ちいかわレストラン」も、その流れを象徴する存在だ。かつてギャル系ブランドなどが集まっていた地下2階も、時代とともに客足が変化していたが、こうしたIPコンテンツの展開によって、新たな人の流れが生まれている。
このような変化は、商業施設の中だけにとどまらない。
周辺のキャンドゥやセリアなどの100円ショップにも、アクリルスタンドの収納用品やカードケース、ディスプレイ用品など、推し活向けの商品が並ぶようになった。好きな作品のグッズを探すだけでなく、それを収納したり飾ったりするための商品まで一通り揃えられる。IPカルチャーは、街での消費行動そのものにも影響を与えているのだ。
こうした街の変化を支える要素として、もうひとつの強みとして見逃せないのが、アクセスの良さだ。池袋はJR東日本、東京メトロ、西武鉄道、東武鉄道の4社、計8路線が乗り入れる国内有数のターミナル駅でもあり、都内各所からアクセスしやすい。観光客やインバウンドの旅行者はもちろん、会社や学校の帰りに立ち寄る人にとっても、気軽に推し活を楽しめる街といえるだろう。
一つの施設だけを訪れて終わるのではなく、好きな作品やキャラクターをきっかけに、ショップや施設を巡る。池袋では、こうした「回遊型」の楽しみ方が定着しつつある。
かつては百貨店を目当てに人が集まった。しかし、今ではアニメやゲーム、キャラクター、推し活をきっかけに、街を歩く人が増えている。
今までの「買い物の街」から、好きなものに会いに行く「目的地」へ。その変化こそ、今の池袋を象徴している。
池袋は、「何を買うか」だけではなく、「何を見たいか」「何を体験したいか」によって訪れる場所へと変わった。それは、池袋が単なる「買い物の街」から、好きなものに会うための「目的地」へと変化したことを意味している。
池袋は変わった? まだ変わりきれていない? 街の現在地を考える
ここまで見てきたように、池袋では少しずつ街の姿が変わってきた。
かつて街の顔だった百貨店では再編が進み、駅周辺には新たな商業施設や高層ビルが増えた。一方で、アニメやゲーム、キャラクターコンテンツを目的に訪れる人も多く、「買い物をする街」から「好きなものを楽しみに行く街」へと、池袋を訪れる理由も広がっている。
では、現在の池袋は、すでに新しい街へと生まれ変わったのだろうか。
実際に街を歩いてみると、そうとも言い切れない。新しい施設のすぐ隣に昔からの建物が残り、再開発が進むエリアの近くには、長年営業を続けてきた店舗や娯楽施設もある。


その変化を象徴するのが、西口エリアだ。
2021年に閉店した池袋マルイの跡地には、新たなランドマークとなる「IT tower TOKYO」が誕生。さらに西口では大規模な再開発計画も進んでおり、今後、駅前の風景は大きく変わっていくとみられる。
一方、西口には長年親しまれてきたロサ会館もある。ロサ会館は映画館やゲームセンター、ボウリングなど、池袋のエンターテインメントを支えてきた場所だ。現在は建物の老朽化を背景にリニューアルが予定されている。

ここから見えてくるのは、池袋では「昔からあるもの」と「新しく生まれたもの」が単純に入れ替わっているわけではないということだ。長く親しまれてきた場所もまた、時代に合わせて姿を変えようとしている。
だからこそ、現在の池袋は「新しい街になった」というより、「新しい街へ移行している途中」と捉えたほうがしっくりくる。
百貨店、劇場、映画館、ゲームセンター、アニメショップ、キャラクターショップ、昔ながらの飲食店――。異なる時代に生まれたさまざまな場所が、ひとつの街の中に同居している。
渋谷や新宿のように、再開発によって街のイメージそのものが大きく変わったエリアと比べると、池袋にはまだ雑多な雰囲気が残っている。しかし、それは「変化が遅れている」ということではない。
むしろ、さまざまな文化や人を受け入れてきたからこそ、ひとつのイメージに染まりきらないことが〝池袋らしさ〟なのかもしれない。
「池袋に何をしに行くのか」という答えが、人によってまったく違う。その多様さは、現在の池袋を語るうえで欠かせない特徴だ。そして今後、西口を中心とした再開発が進めば、人の流れや街の使われ方もさらに変わっていくだろう。
池袋は、変わった。けれど、まだ変わりきってはいない。
過去から続く文化と、これから生まれる風景。その両方が同居する〝変化の途中〟にこそ、現在の池袋の面白さがあるのかもしれない。
取材・文/Tajimax




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