自動車メーカーによる矢継ぎ早の電動車リリース、技術ニュースに慣らされている身としては、自動運転なんてもうすぐ! と考えがち。たとえばこれが、未開拓の国で、ガソリン自動車もほとんど走っていない環境であれば、自動運転のための環境を一気に整えることもできるだろう。ちょうど、電話線すら張り巡らされていない国が、一足飛びにスマホ社会になったように……。
すでにクルマ社会が確立されている日本ではどうインストールされるべきなのか? そのヒントのひとつが今回の取材で見えてきた。
「2030年には輸送力が34%不足!」の衝撃
8月24日、酷暑の真昼、大阪府門真市。創業者「松下幸之助記念館」もあるパナソニック エレクトリックワークス(以下、パナソニックEW)の門真拠点において、「自動運転時代の高速道路インフラ技術説明会」が開催された。パナソニックEWのライティング事業部と、自動運転技術開発会社「T2」の共同発表会だ。
主たるメッセージポイントはふたつ。
パナソニックによる(1)「高速を含む道路照明の新潮流『低位置照明』の概要」と、T2による(2)「自動運転トラックの概要」である。
なんだか話がムズかしくなりそう……とこの時点で「そっ閉じ」されると書き手として寂しい(笑)ので要点からお伝えすると、まず(1)については、
「今後、高所作業員の不足により高さ10メートル程度ある「ポール照明」の設置やメンテナンスに困難が発生することや、自然災害による倒壊リスク低減、および光害(光もれ)対策の解決策としての「低位置照明化です」とパナソニックEWライティング事業部の濱野博史部長。
道路照明の市場規模としてはおよそ年150~200億円規模とされ、低位置照明はその中での「ホット・トレンド」(!)だという。
(2)は「2030年には輸送力が34%も不足する恐れがあるトラックドライバー不足」に対処すべく進められている「T2」による自動運転化だ。
「T2の現状レベルとしては「運転手が乗車し高速道路限定ながら、神奈川~神戸間の高速道路500kmを走破」できる、自動運転技術「レベル2」(部分自動化)です。「レベル2」ながらT2の自動運転トラックはすでに神奈川~神戸間を日々一往復し、商用運行としてメーカーなど26社の商品を運んでいます」と、T2の岩井博史部長。
要するに、運転手は乗っているが高速道路を走る自動運転トラックの商用運行は始まっている。むろんドライバーは自動運転中の安全管理の他、一般道での運転を担うための乗車である。
自動運転トラックが頼るモノ
トラックの自動運転において、ガイドとなるのは白線(車線)である。むろん、自車位置測定の衛星測位システム(GNSS)も、他車や障害物を検知するLiDARもそれぞれの責任において活躍するが、トラックが目視(!)して頼るのは道路の白線である。くくって言えば、この白線が明瞭に認識できればより安全・安心な走行につながる。そこで注目されるのが、高速道路というインフラである。
パナソニックEWでは照明事業の一環として道路照明(屋外照明)を広く手掛けている。
道路照明とは夜間や薄暮など見通しのきかない状況下で、路面を明るく照らし、交通事故防止を目的とする装置。道路照明の必須要件としては、明るく見通しが良いこと、明るさのムラや眩しさを抑えることが挙げられている。
2024年、NEXCOは「今後高速道路については基本的に低位置照明を採用する」としたが、指針の背景には、先に挙げた課題がある。
これに対し、屋外照明で豊富な実績を誇るパナソニックEWは、低位置照明を開発するのみならず、さまざまセンサーを搭載することにより、とりわけ自動運転車に対する予防安全、リアルタイムの情報提供を実現しようとしている。この「自動運転・インフラ実証の連携とデータの利活用」において、パナソニックEWとT2は手を取り合っている。
理想的には、道路照明を単純な「照らす設備」から、「道路の新たな価値(情報の提供など)を創出するインフラへ」船出させようという野望なのだ。
いま飲んでいるネスカフェはもしかして……。
自動運転には「クルマ単体で完結する」方法と、クルマと道路が協調する「路車協調」の双方で進化が図られているが、今回の2社の取り組みは後者に属するもの。T2の岩井部長は「T2でも将来的には車両完結型を目指しているが、自動運転は99%の安全ではだめで、限りなく100%に近づけないといけない。それを踏まえると、現在のところ路車協調は合理的なアプローチだと考えます」と話す。
冒頭述べたように、日々クルマの電動化、自動運転の情報に触れていると、もう来年にも自動運転がやってくるように感じるが、控えめに言って日本社会での整備にはまだまだ時間が必要だ。それこそトヨタが富士で進める「ウーブンシティ」のように、いちから創った街区なら自動運転の実装ありきで計画できるのだが……。
ただし、定められたルートを往復する【トラックによる高速道路輸送】という条件下では、十分使えることが判ってきている。いまアナタが手にしている、アサヒ、キリン、サントリー、サッポロなどのビール大手や、グリコや月桂冠、ネスレなどのおなじみの商品たちは、もしかしたらT2の自動運転トラックが運んだものかも知れない……ん、自動運転ってやっぱり、もうすぐそこなのかも知れないぞ!
文/前田賢紀




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