宅配ボックスを買うと、自治体から補助金が出る。マンションのように共用の宅配ボックスがない戸建てにとっては、見逃せない制度だ。設けている市区町村は全国で70を超えるが、この事実はほとんど知られていない。予算が使われないまま年度末を迎える自治体もあるという。
この制度を使い倒すには、何を、どの順番で調べればいいのか。戸建て用の宅配ボックスを販売する株式会社Extageの担当者に聞いた。
予算の9割は、まだ使われていない
東京都板橋区は今年度、宅配ボックスの助成に1152万円を計上した。ところが7月末までの申請は143万円分。予算の1割強しか動いていないという。
補助の中身は、多くの自治体で購入費の半額、上限1万円前後。それが全国70以上の市区町村にある。これだけの枠が用意されていながら、なぜ知られていないのか。株式会社Extageの氏家聡介氏はこう推測する。
「大々的に告知されているものではないので、単純に知られていないというのが一つ。また、知ったとしても制度そのものが見つけづらいという問題もあるようです。行政の狙いは再配達を減らし、トラックが排出するCO2を削減すること。CO2削減の施策である以上、窓口は基本的に環境部門に置かれています。一方、使う側にとっての宅配ボックスは、あくまで便利な住宅設備にすぎません。だから、住宅の補助金だと思って探しても、なかなか見つからないわけです」
そして、運よく制度を見つけたとしても、そのまま買いに走るのは早い。制度の中身も自治体ごとに違う。まず確かめたいのは、工事の扱いだ。
「買って置くだけで補助金が出るところもあれば、工事をした場合にその工事費まで補助するところもあります。自治体によりけりですね」
例えば、石川県の制度は前者だ。対象は購入費だけで、設置費や工事費は出ない。裏を返せば、自分で置いても補助は受けられる。一方、先述した板橋区では区内の施工業者による設置工事を条件にしている。この場合、ネットで買って自分で置いただけでは対象にならない可能性が高い。同じ「宅配ボックスの補助金」でも買い方そのものが変わってくるため、購入前に必ず自治体に確認したい。
また、固定の方法にも幅がある。同社の製品には、地面に打ち込むアンカーボルトが付いている。コンクリートの地面か、ホームセンターで売っているコンクリートブロックに留める仕組みだ。
「背面にワイヤーを通す穴も設けています。これによって柱にワイヤーで留める簡易的な設置もできますので、地面に打ち付けなくてもお使いいただけます。ただ、アンカーボルトを打ち込むとなると力仕事にもなりますから、できる方とできない方がいらっしゃるかもしれません」
ちなみに、自治体が固定を求めるのは、箱ごと持ち去られるのを防ぐためだ。中身ではなく、箱そのものが盗まれる。袋式や折りたたみ式を対象から外している自治体も少なくない。
安いものを買うと、その日の2個目が受け取れない
制度の条件がわかったら、次は商品選びだ。とはいえ、宅配ボックスなど普通は買い慣れていない。どれを選べばいいのか。氏家氏が挙げた基準は2つ。ひとつは、荷物を何回受け取れるかだ。
「1回入れたら終わり、というタイプがあります。それだと、飲料水のケースのような大きい荷物がひとつ届いただけで、その日は埋まってしまうんです」
宅配ボックスは、配達員が荷物を入れて施錠した時点で開かなくなる。だから安価なタイプは、その日の2個目を受け取れない。まとめ買いをした日や、複数のショップから同じ日に届く日を思い浮かべると、これが地味に痛いことがわかる。同社の製品は上段がポスト、下段が大型荷物用で、配達員が下段を施錠すると、次の荷物は上蓋から投函される仕組みだ。
もうひとつは鍵の方式である。
「鍵にはシリンダー錠とダイヤル式があります。ダイヤル式は、番号を忘れて開けられなくなることがあるんです。設定したつもりの番号とずれていた、というケースもあります。それに、鍵を閉めるのはどうしても配達員の方になりますから、操作が難しいと締め忘れにつながってしまう。シリンダー錠なら、ボタンのように押すだけで閉まります。締め忘れの防止にもなると思います」
見落としやすいのは後半だ。鍵を閉めるのは自分ではなく、荷物を届けにきた配達員である。自分が使いやすいかどうかではなく、初めて見た人が確実に閉められるか。そこで選ぶ必要がある。また、板橋区は南京錠を認めていないなど、鍵は補助の要件にも関わるので要チェックだ。
1万円の補助で、選べる商品が変わる
では、いくらのものを買うことになるのか。ポストと一体になった戸建て用の相場を聞いた。
「相場は1万9000円から、2万円を少し切るくらいという印象です。弊社のものは2万3000円ほどですから、少し高めですね。ただ、2万円を切るものは複数投函ができなかったり、メールボックスがついていなかったりします。1万円ほどの簡易的なものもありますが、そちらは完全に1回の投函で終わりです」
ここで補助金が効いてくる。上限1万円の自治体なら、2万3000円の製品が実質1万3000円。1回で終わる1万円の簡易型と、3000円しか変わらない。補助金の効き目は、安く買えることよりも、選べる商品の幅が変わることにある。
国はいま、玄関前などに荷物を置いていく「置き配」を、宅配便の標準的な受け取り方にしようとしている。その受け皿になるのが宅配ボックスだが、国交省の調査によると中古戸建ての設置率は18%にとどまるという。8割の家には、まだ置き場所がない。
「国が宅配ボックスの設置を推し進めている今がチャンス。まず、お住まいの自治体にどんな制度があるのかを調べてみてください。1万円の補助が下りると分かれば、選べる商品の幅がぐっと広がりますから」
ネットで何でも買える時代。必須となった宅配ボックスをお得に買える”神制度”を使わない手はない。
【取材協力】
株式会社Extage
大阪市中央区。EC・D2Cを軸に、スキンケア、美容家電、健康食品などを企画・開発・販売する。2026年5月、EXCITECHブランドから戸建て向けのポスト一体型宅配ボックスを発売。
取材・文/桜井カズキ
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