梱包作業の必需品といえば、緩衝材の『プチプチ®』だろう。普段何気なく口にしているこの呼び名は、実は製造・販売を行なう「川上産業」の商標である。同社は2026年10月1日より、社名を「プチプチ株式会社」へ変更することを発表している。
フリマアプリの定着に伴い、『プチプチ』を使い慣れている人も増えたはずだ。しかし、実は意外と知られていない画期的な使い方や商品が存在する。
そこで川上産業のマーケティング担当者を取材。ライフハック術やトリビアを紹介する。
プチプチへの社名変更の狙いは?
今回、取材に応じてくれたのは、マーケティング課の〝プチプチくん〟。なんと社長非公認のキャラクターであり、現在はSNSのみで活動しているという。その舞台裏をこっそり聞いてみた。
――どうして社名を「プチプチ」に変更するのでしょうか?
「当社はこれまで、気泡緩衝材『プチプチ®』を通じて、物流・製造・ECなど幅広い現場で『守る』役割をご提供してまいりました。
それは包装材の製造・販売に留まりません。現在では使用済みプラスチックの回収・再生、建材、防災、海外展開など‶資源・暮らし・社会を守る〟ことへと広がっています。
今回の社名変更は、広く知られる『プチプチ』という名称を社名に掲げることで、製品ブランドとして培ってきた信頼を企業価値へと広げる取り組みの一環と考えています。
何をしている会社なのか、どのような価値を社会に届けているのか、より直感的に伝えたいという狙いがあるのです」
――ファンシーな見た目とは裏腹に、ビジネスパーソン然とした丁寧な口調なんですね。
「恐縮です(照)」
プチプチに表・裏はある?
――ずっと疑問だったのですが、『プチプチ®』は粒のある凸凹の面と、平らな面のどちらが表で裏なのですか? また、それによって緩衝性能に違いはあるのでしょうか?
「プチプチは表・裏の決まりは特になく、粒の面も粒のない面も、どちらも緩衝性能は変わりませんので、その日の気分で決めていただいて構いません。
プチプチは1回巻いただけでも高いクッション性を得られますが、心配なときは2周くらい巻いていただければと思います」
表裏の決まりはないものの、実用面において〝粒の向き〟を意識すべき具体的なケースがあるという。
「ただ、『プチプチ』を袋として利用するときは、粒のある面が内側だと、モノによっては袋に入れる際に粒に引っかかってしまうことがあります。そのため、スムーズに梱包できるよう粒の面をあえて外側にした袋を希望されるお客様も多くいらっしゃいます。
反対に、プチプチの袋に直接宛名ラベルなどを貼りたい場合は、粒の面が外側だと接着面積が少なくなり、配送中に剥がれてしまう恐れがあります。その場合は、ラベルが密着しやすいよう粒の面を内側にした仕様が好まれます。
もしどちらの懸念も解消したい場合は、気泡の粒を両側からフィルムで挟み込んだ、両面フラットな〝3層品〟の『プチプチ®』もご用意していますよ」
利便性を追求したい場合は、この両面フラットな3層品を取り寄せてみるのも一案だろう。
プチプチの意外な用途とは?
緩衝材としての枠を超え、実は日常生活や緊急時に役立つ意外なライフハック術が数多く存在する。
■車内での緊急防寒や寝袋として活用する
「当社の社員の実体験ですが、冬の寒い時期に高速道路の事故渋滞に巻き込まれ、暖房の効かない車内で約4時間も待機せざるを得ない事態に陥りました。
その際、車載していた寝袋用の『プチプチ®』を身体に巻き付けたところ、抜群の保温効果を発揮し、凍えることなく防寒できたという事例があります」
■災害時や日常生活の〝寒さ対策〟に用いる
避難所の冷たい床に敷くことで底冷えを防ぐシートになるほか、住宅の窓ガラスに直接貼ることで外気を遮断する簡易的な断熱材としても機能する。屋外の水道管に巻けば、冬場の凍結防止対策にも有効だ。
■植物の保温や簡易座布団として活用する
寒さに弱い観葉植物の鉢植えに巻くことで、冬越しの保温効果が期待できる。また、その優れたクッション性を活かし、アウトドアやイベント時などの簡易的な座布団として敷くのも実用的だ。
■防災時のランタンや雨の日の防水ワザに
スマートフォンのライトや懐中電灯の光源に『プチプチ®』を被せるだけで、光が柔らかく拡散し、周囲全体を照らすランタンへと早変わりする。
さらに、雨の日にランナーが靴紐の結び目の下に挟み込んでおくことで、靴内部へ雨水が染み込むのを防ぐ防水ハックとしても重宝されている。
想像以上にバリエーション豊かな活用用途があるものだ。災害時への備えはもちろん、普段の生活でも今すぐ試せるアイデアが詰まっている。特に座布団としての使用は筆者も個人的にやってみたくなった。
ファミリーは約1000種類も!知っていると得するかもしれない製品3選
上の系統図をご覧いただきたい。『プチプチ®』のバリエーションはなんと約1000種類!? 標準タイプだけで20種類以上もあるという。
アルミプチや防サビプチ、保温保水プチなど、他の素材と組み合わせたり、機能を持たせたりしたプチプチや、素材を厳選した環境配慮、ギフト用、封筒タイプ、コンテナや簡易ブースといった大型タイプもある。
どれも気になるが、プチプチくんにおすすめの3つをピックアップしてもらった。
1.『スパスパ』
「ハサミ不要で、手で切れる気泡緩衝材です。ハサミ使用時の異物混入防止につながります。『プチプチ®』をつぶすように、『スパスパ』をスパッと切るときも独特の気持ち良さがあります」
2.『エアピロン』
「必要なときに必要な分だけその場で空気緩衝材をつくるマシンです。
山形県朝日町にある空気神社で行なわれる『空気まつり』では、このマシンを使って神社の空気を『エアピロン』に詰め、‶空気のお持ち帰り〟をしています。
そのほか、ライブ会場などに設置いただければ、推しの熱気を思い出としてお持ち帰りできるのでおすすめです」
3.『生分解性プチ』
「100%生分解性プラスチックでできた気泡緩衝材です。土壌に埋めた後、土中で水と炭酸ガスにまで分解されます。地中の生態系にも配慮した、環境対応包材です」
プチプチのおもちゃは癖になるらしい
同社は玩具メーカーのバンダイとタッグを組み、『プチプチ®』のおもちゃも開発している。
2007年に、プチプチを無限につぶせる『∞プチプチ(ムゲンプチプチ)』をリリースし、大ヒットを記録。『∞プチプチAIR(ムゲンプチプチエアー)』(1078円)は、2021年にリニューアルを果たした進化版だ。
本物に近い感触とともに、破裂音まで楽しめる。普通の音だけでなく、「ピンポーン」や「にゃー」などのレア音7種を収録しており、ストレス発散に良さそうだ。
そもそも、プチをつぶしたくなるのには理由があったそうだ。プチプチくんが解説してくれた。
「思わず気泡をつぶしたくなる現象は、心理学的に『アフォーダンス』と呼ばれています。これはアメリカの知覚心理学者によって定義されたといわれる言葉です。
例えば、ボタンがあると押してしまう、取っ手があったら引き出してしまうなど、モノや空間など周囲の環境が人に与える影響のことだそうです。『プチプチ®』をつぶしたくなるのもその一種です」
身近な存在でありがら、知らないことがたくさんあるものだ。防災や緊急時のハックのほか、おもちゃも含めて、改めて『プチプチ®』を新鮮な視点で活用してみてはいかがだろうか。
取材・文/石原亜香利
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