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子どものゲーム、SNS依存は〝意志の弱さ〟ではない?注意が必要な親の誤解が招く罠

2026.08.29

スマホや携帯機が定着したことで、ゲームはずっと身近な存在になった。魅力的な作品も豊富に揃うし、気が付けばスマホで一日中SNSを眺めてしまったという経験もあるだろう。

しかし、それで、子どもが勉強にまったく手をつけないとなれば、話は別である。

「やめなさい」と何度注意してもいっこうにやめない、と頭を抱えている子育て世代は多いはずだ。

非認知能力専門塾「Five Keys」を主宰する井上顕滋氏によれば、「ゲームやSNSは、そもそも大人でもやめられないように精巧に設計されている。そのため、親が必要以上にネガティブに受け止めるべきではない」という。

今回は、子どもがゲームやSNSをやめるのが難しい理由や、親が否定的に捉えすぎることのリスク、そして具体的な対応策について解説してもらった。

IT企業が脳をハック!? 大人も抗えない〝超強力な構造物〟の罠

井上顕滋氏
非認知能力専門塾「Five Keys」主宰。最先端の心理学や脳科学を融合させた独自の能力開発メソッドを確立し、2011年に小学生を対象とする日本初の非認知能力専門塾を設立する。これまでに講座などを通じて指導した小学生の保護者は6万人を超える。

そもそも親は、「ゲームやSNSを子どもが自分の意思でやめることは、極めて難しい」という不都合な事実を正しく理解することが重要だ。井上氏はその裏側をこう明かす。

「ゲームやSNS、動画配信プラットフォームなどは、IT企業の極めて優秀な技術者や行動経済学者、心理学者たちが結集して作られたものです。

人間の脳の快楽回路をハックし、1秒でも長く画面に留まらせるよう、視覚・聴覚・報酬システムを駆使して巧妙に設計した〝超強力な依存構造物〟に他なりません。

自己制御能力が発達し切った大人でさえ抵抗することが難しいものに対して、まだ脳が発達途上にある小学生が〝自分の意思でやめる〟というのは、そもそもハードルが高すぎる話なのです」

この依存構造は、今や社会問題としても顕在化している。

「現にアメリカの複数の州が、米IT大手のメタ社を相手取り、〝FacebookやInstagramに子どもを意図的に依存させた〟として大規模な訴訟を起こしています」

この決定的な事実を踏まえ、親は次のような新たな認識を持つことが求められる。

「子どもに『そろそろゲームをやめなさい』と言っても一向にやめなかったり、自分から画面を閉じようとしなかったりする姿を見て、〝この子はセルフコントロール力が弱いのではないか〟と落胆していませんか。

もし、お菓子や遊びなど他のことはきちんと我慢できるのに、ゲームやSNSだけは我慢できないのであれば、それは極めて正常な反応です。

親が過度に心配する必要はまったくありません」

では、本当の意味で自己制御能力に問題がある状態とは、どのようなケースを指すのだろうか。

「例えば、買い物に行ったときに『これを買って!』と地面に寝転がってバタバタと暴れるなど、日常生活のあらゆる場面において我慢が利かない状況であれば、セルフコントロール力に課題があると認識していいでしょう。

しかし、それらの日常的な我が儘と、世界最高峰のIT企業が莫大なコストを投じて構築した高度な依存性システムとでは、もたらす事柄の次元がまったく違うのです」

親のよくある失敗。子どもの自信を奪う〝家庭内の悪循環〟

ゲームやSNSをやめられない本当の理由を親が正しく理解していないと、家庭内で以下のような深刻な悪循環が起きると、井上氏は指摘する。

• ステップ1:親の誤解
親が「うちの子は自制心がない」「自己管理能力が低い」と間違ったレッテルを貼ってしまう。

• ステップ2:無意識の否定
親は無意識のうちに、子どもの自己肯定感やセルフイメージを下げるような言葉、表情、雰囲気を家庭内で出してしまう。

• ステップ3:自信の喪失
子どもは親の否定的な態度を敏感に察知し、「失わなくてもいい自信」まで喪失してしまう。

井上氏は、この親の向き合い方に強い警鐘を鳴らす。

「子どもは、ただ単にゲームやSNSの精巧な設計者たちによって『やめられない状態』に誘導されているだけです。

この背景を理解していないと、親は子ども個人に問題の原因を求めやすくなります。親が放つ空気感は、大人が思っている以上に子どもへ強い影響を与えるものです。

親の無意識の軽蔑やイライラを感じ取った子どもは、〝ゲームをやめられないのは自分がダメな子だからだ〟〝自分は意志が弱いんだ〟という、低いセルフイメージを固定化させてしまいかねません」

〝自分で決めさせる〟が鍵!親子で取り組む上手な付き合い方3つのステップ

まず親がゲームやSNSの依存構造について正しい認識を持つこと。その上で、子どもがデジタルデバイスとうまく付き合えるよう、親子で一緒に次の3つのアプローチに取り組むことを井上氏は推奨する。

1.物理的に距離を置く

「例えば、ゲームを遊び終わったら毎回コードをすべて抜き、専用の箱に片付けるというルールを設けます。次にゲームを始める際の手間(ハードル)を物理的に大幅に増やすのです。

人間は面倒なプロセスを嫌うため、この〝ひと手間〟がゲームを手軽に起動する回数を減らす強力な助けになります」

2.ペアレンタルコントロールを活用する

「ペアレンタルコントロール(保護者による利用制限機能)によって、使用時間に強制的な制限をかけることも有効です。

スマホだけでなく、人気の『Nintendo Switch』や『PlayStation』といったゲーム機でも簡単に設定できます。ただし、最も重要なのは親が一方的に時間を決めて押し付けないことです。

お子さんと事前によく話し合い、使用時間そのものは子ども自身に決めさせることをおすすめします。子どもは〝自分が決めた時間〟という納得感があるため、制限に対して被害者意識や不満を持ちにくくなります」

3.親子で合意したルールを一貫して徹底する

「一度決めたルールに対し、親の側が常に一貫性を持って守らせることが極めて重要です。

私がこれまで多くのご家庭を見てきた中で、〝子どもに振り回されすぎている保護者〟には、自身の発言や子どもに見せる背中、ルールを破られたときの対応に一貫性がないという共通点が多く見られました。

親の態度がその日の気分でブレると、子どもは迷い、より楽なほうを選択してしまいます。ぜひ親の側も努力して、常に一貫性のある凛とした対応を心がけてください」

ゲームやSNSは現代の生活と切り離せないからこそ、子どもの意志の強さに頼る根性論では決して解決しない。システムの特性を理解したスマートな防衛策と、親側のブレない姿勢こそが、子どものデジタル依存を防ぐ最大の鍵となるだろう。

親へのメッセージ

最後に、ゲームやSNSにばかり夢中になる子どもに悩む子育て世代に向けてメッセージをもらった。

「テクノロジーの進化に伴い、私たちの生活は変化しており、今後はAIやロボティクスによって、これまで以上に大きく変わっていきます。

どうか極端にネガティブにならず、時代の変化を楽しむ感覚で、日々笑顔で明るく過ごすことを心がけてみてください。

お母さんの明るい笑顔が、お子さんの心にとって一番大切な栄養となります」

まずは親自身が一度冷静になって、ゲームやSNSがどのようなものなのかを正しく理解することが重要だ。その上で、親子一緒に、ゲームやSNSを楽しみながら、距離を置くことにも取り組んでいくことがベストといえそうだ。ぜひ参考にしたい。

取材・文/石原亜香利

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