占い師になりたい人が増えている。占いスクールの受講費の相場は50万円。高いところでは300万円と専門学校並みの金額を取る講座も珍しくないが、それでもスクールは乱立し、受講者は後を絶たない。人はなぜ大金を払ってまで占う側に回ろうとするのか。開校2年で累計約1200人を指導したというタロットスクール「UNLEASH」主宰・ゆうこ学長に、業界の内側を聞いた。
占い業界が、いま追い風の中にある。スピリチュアル関連の市場は毎年1割ほどのペースで拡大。書店には占いコーナーが常設され、関連本はベストセラーが相次いでいる。女性だけでなく、占いにハマる男性客も増えてきている。
「Netflixシリーズ『地獄に堕ちるわよ』が大ヒット。とはいえ細木数子さんがテレビで活躍していた時代、占いはまだまだいかがわしいもので、実際に悪徳な業者も多かった。しかし現在、星ひとみさんやゲッターズ飯田さんのような有名で面白い占い師さんがメディアに多数出てきたことで、業界の怪しい雰囲気がよりポップなエンタメとして受け入れられるようになってきました。
また昨今の社会情勢から、残念なことに将来に不安を抱く人も増えてきているのかなと思います。ポジティブな要因とネガティブな要因の両方で、占いの需要が伸びているんじゃないでしょうか」
伸びているのは「占ってもらう」側だけではない。「占う」側に回りたい人、つまり占い師志望者も増えており、「占い師をやりながら同時に講座をやっている人も多く、スクールの飽和から競争は激化しています」とゆうこ学長はいう。さらに、冒頭述べたように受講費の相場は50万円と高額。それでも人が集まるのはなぜなのか。
「稼ぎたい」の奥にある自立心
ゆうこ学長のスクールの受講生は女性が9割、40~50代が8割を占めるという。最年少は21歳の大学生、最年長は74歳。副業として始めたい人と本業を目指す人はほぼ半々で、志望動機で最も多いのは「稼ぎたい」。ただ、それは表向きの言葉らしい。
「私の受講者は主婦が中心。手に職を付けて夜職から転身したいなんて方もいらっしゃいます。一人ひとりきちんとヒアリングを行うのですが、いろんな背景があって本音は『自立したい』という方がほとんどです。印象に残っているのは、夫のモラハラに苦しんでいた超初心者の生徒さん。
決して推奨されることではありませんが、旦那さんのクレジットカードから受講費を払い、入学してきました。『必ずお金は返す。でもこうでもしないと、現状を変えられないんです』と。彼女は卒業と同時に倍率の高い占い館に採用され、さらに、初月で70万円を売り上げました。今では月100万円ほど稼いでいるそうです」
とはいえ、ChatGPTに生年月日を打ち込めば自宅で簡単に「占い」らしきものが返ってくる時代だ。いまから参入して、職業として成り立つのか。
「元も子もないことを言うと、カードの意味なんてAIでいくらでも出てきます。だから、今求められているのはただ占いができる人じゃない。大切なのは『この苦しさを誰かにわかってほしい』という方の話を聞ける、傾聴力です。本当に思い悩んだとき、同僚や友達と飲みに行きますよね。あれはAIでは解決できない。人間にしか作れない安心感にこそ、価値があるんです」
「知識」は無料の共有財産にする
では群雄割拠の中で、選ばれるスクールは何が違うのか。ゆうこ学長は「フォロワー3万人の有名占い師でも、生徒を30人集めるのに苦労する」と言うが、彼女のスクールは開校2年で累計約1200人が受講し、無料のオンライン勉強会には2日間で延べ2400人が参加したという。これは、業界では異例の数字といえる。人気の理由を尋ねると、意外な答えが返ってきた。
「タロットの知識って、本来は何十万円も払って習うものなんです。私はそれをインスタのリールで全部、無料で喋っちゃう。知識は共有財産にしてるんです。大切なのはその先で、いかにお客様とコミュニケーションを取って納得していただけるかという、より実践的な部分なので」
気になる受講費は非公開。ただ、相場よりかなり安く設定しているという。理由は彼女自身の過去にある。受講生の約半数は、他の講座で学んだうえで入り直してくる「学び直し組」だというのだ。
「高額なのに中身がない講座が本当に多いんです。何十万円も払ったのに、連絡が3日に1回しか返ってこないとか。私自身、タロットの講座に500万円くらい使ってきましたけど、教科書にあるキーワードを教えて終わり、ほぼ詐欺じゃんというところばかりでした。『選ばない理由』を極力なくしたいんです」
市場が伸びれば、中身のない高額講座もまた増える。その中で1200人が選んだのは、知識をタダで配り、対価は「実践」で受け取る教室だった。不安の時代に人が財布を開くのは、情報そのものではなく「導いてくれる人」なのかもしれない。
■ゆうこ学長
タロット指導者。婚約破棄を機に占いの世界へ。霊感頼みではなく心理学やコーチングを取り入れた地に足のついた占いを広め、5000名以上を指導。タロットスクール「UNLEASH」を主宰し、占いを自立の武器に変えるママ支援にも力を注ぐ。
文/桜井カズキ
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