最近、SNSを中心に使われるようになった「ドパガキ」という言葉。「ドーパミン中毒のガキ(子ども)」を略したネットスラングで、ショート動画などで新しい刺激を次々と求めることや、長時間集中したりじっと待ったりすることが苦手になった子どもを指す言葉として使われている。
では、子どもがこうした状態になることには、どのような問題があるのだろうか。また、我が子を「ドパガキ」にしないために、親は何をすればいいのだろうか。
「ドパガキ」は医学用語ではない
まず押さえておきたいのが、「ドパガキ」という病気や医学的な概念が存在するわけではないという点だ。Ariメンタルクリニックの院長・田中有咲医師は次のように解説する(以下、カッコ内はすべて田中医師のコメント)。
「『ドパガキ』という言葉は、もちろん医学用語ではありません。ネット上で生まれたスラングで、HSPなどと同じように、基本的に医療従事者が診断名として使うような言葉ではありません。一種のエンタメ的な表現として捉えたほうがいいでしょう」
そもそも「ドーパミン」は、脳内で働く神経伝達物質のひとつ。「快楽ホルモン」などと表現されることもあり、SNSでは刺激的な動画を見ることなどを「ドーパミンが出る」と表現することがある。
「ショート動画は、短い時間で次々と新しい刺激や報酬を得られます。そうした感覚が『ドーパミンが出ている』と形容され、そこから『ドーパミン中毒の子ども=ドパガキ』という言葉が生まれたのでしょう。ただ、ショート動画を見ている子どもが医学的な意味で『ドーパミン中毒』になっていると証明されているわけではありません」
しかし、医学的に「ドーパミン中毒」とはいえなくても、ショート動画などによって次々と新しい刺激を求める行動が習慣化する可能性については注意する必要がある。
「人間の脳には『報酬系』と呼ばれる神経回路があります。新しい刺激や報酬を次々と求めることが習慣化し、その行動をなかなかやめられなくなるという意味では、依存症に近い状態になっていると考えることはできます」
スマホ依存やゲーム依存など、デジタル機器をめぐる依存的な行動は以前から指摘されてきました。短期間で報酬を得ることを繰り返すという点では、ギャンブル依存症との共通点を見いだすこともできるという。
ドパガキの背景にはADHDやうつの可能性も
さらに注意したいのは、一見すると「ドパガキ」のように見える状態の背景に、別の問題が隠れている可能性だ。
「例えばADHDです。新しい刺激がないと我慢できない、先を待てない、集中力が続かないといった状態には、ADHDの傾向が関係している可能性があります」
もうひとつ考えられるのが、うつ状態や不安障害だ。
「友人や家族とうまくコミュニケーションを取れず、現実世界がつらいためにネットの世界に入り浸っているケースも考えられます。その場合は、うつ状態や不安障害などが背景にある可能性もあります」
分水嶺は「日常生活に支障が出ているか」
では、どの程度までショート動画に夢中になったら注意すべきなのだろうか。
ひとつの目安として、田中先生は「日常生活に支障をきたしているかどうか」を挙げる。
「これはさまざまな精神疾患について言えることですが、日常生活に支障をきたしているかどうかは非常に重要です。例えばショート動画を見ることを優先するあまり学業がおろそかになったり、不登校になったりしている。大人であれば仕事に集中できない。さらに食事や入浴、睡眠の時間まで削って見続けている。そこまでいけば、注意が必要な状態だと考えたほうがいいでしょう」
さらに怖いのが、生活習慣の乱れから生まれる悪循環だ。夜遅くまでスマホを見続ければ睡眠不足になり、生活リズムも崩れてしまう。その結果、抑うつ状態や不安、イライラ感などが強まり、現実生活がさらにうまくいかなくなってスマホの世界へ逃げ込む。そんな循環に陥る可能性もあるのだという。
では、我が子をそうした状態にしないために、親は何ができるのだろうか。
我が子を「ドパガキ」にしないための5つの方法
1.「何時間見たか」だけでなく生活への影響を見る
まず意識したいのが、単純にスマホやショート動画の視聴時間だけで判断しないことです。
重要なのは、学校生活や睡眠、食事、入浴、家族とのコミュニケーションなど、本来の日常生活に影響が出ていないか。動画を見ている時間そのものよりも、動画を見るために何を犠牲にしているのかを見ることが大切です。
2.睡眠や食事など基本的な生活習慣を崩さない
ショート動画そのものだけでなく、そこから引き起こされる生活習慣の乱れにも注意が必要です。
特に睡眠不足が続けば、抑うつ状態や不安、イライラ感などが強くなり、それがさらにスマホへの依存的な行動を強める可能性があります。
まずは睡眠や食事、入浴など、毎日の基本的な生活リズムを守ることが重要です。
3.スマホ以外の「ストレス発散先」をつくる
依存症全般への対策として大切なのが、ストレスを発散できる場所をひとつに集中させないことです。
運動する、音楽を聴く、本を読む、趣味を楽しむ、人と話す等々。スマホ以外にも「楽しい」「気分転換になる」と思える選択肢を複数持っておくことで、ストレスを感じたときに毎回スマホへ向かうことを防ぎやすくなります。
4.リアルな人間関係を持つ
特に子どもの場合、友人や家族とうまくコミュニケーションが取れないことが、ネットの世界に入り浸る原因になっている可能性もあります。
スマホを取り上げることだけを考えるのではなく、家族との会話や友人との交流など、現実世界で人と関わる機会を持つことも重要です。
5.子どもに「別の世界」を見せる
「子どもの場合、自分が今見えている世界がすべてになりがちです。だからこそ、周囲の大人がほかの世界に目を向けるきっかけを作ってあげることが大切だと思います」
スポーツをしてみる、外へ遊びに行く、本を読む、音楽に触れる、家族で出かける――。重要なのは、単に「スマホを見るな」と禁止するだけではなく、スマホの外にも面白いものがあることを体験させることです。
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我が子がショート動画ばかり見ていても、単にスマホを取り上げるだけでは根本的な解決にならないこともある。「なぜ見続けているのか」に目を向け、必要に応じて専門家に相談することも大切だ。

取材・文/峯亮佑
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