2026年10月から「東京ディズニーランド」と「東京ディズニーシー」の1デーパスポートの価格改定が行われ、大人の上限価格が1万900円から1万2400円になります。
運営会社のオリエンタルランドは強気の値上げを繰り返してきました。SNSなどでは高すぎると否定的な声があるものの、経営的には大成功を収めています。
持続可能なテーマパークの在り方の一つを、示しているのかもしれません。
テーマパーク内での顧客の体験価値を上げることに成功したか
オリエンタルランドの2026年4月~6月の売上高、営業利益は過去最高を更新しました。「東京ディズニーリゾート」を中核とするテーマパーク事業の売上高は前年比で12%も増加しています。
「東京ディズニーシー」は25周年の記念イベント「スパークリング・ジュビリー」を2026年4月15日から開催しています。オリエンタルランドの執行役員・霜田朝之氏は、第1四半期の入園者数が強かった主要因にこのイベントの集客力の高さを挙げました。

また、2026年4月6日から6月30日まで販売した「首都圏ウィークデーパスポート」も来園者数の底上げに寄与。「首都圏ウィークデーパスポート」は首都圏在住者に対して、平日限定で利用できるものです。通常価格よりも大人であれば1000円安くなります。
こうした取り組みもあり、25周年記念を迎えた「東京ディズニーシー」だけでなく、「東京ディズニーランド」も集客は堅調でした。
また、グッズや飲食売上が増えたことでゲスト一人当たりの売上高も増加。来園者と一人単価の相乗効果により、テーマパーク事業は1割以上の増収を達成しているのです。
ここでのポイントは、ゲストの単価が増加していること。「東京ディズニーリゾート」での顧客の体験価値が上がり、更なる出費につながっている可能性が高いのです。
混雑の緩和でアトラクションの平均待ち時間は半分以下に
オリエンタルランドがチケット代を引き上げた狙いの一つに、混雑の緩和がありました。「東京ディズニーリゾート」は、2018年に来園者数が2パーク合計で3255万人を超え、ピークを迎えました。2025年は2753万人で、ピーク時と比較をすると15%程度縮小しています。
人数が減少したことで、アトラクションの待ち時間はどれほど変わったのでしょうか。「ディズニーリゾート待ち時間情報」は過去の平均待ち時間情報を掲載しています。それによると、2018年1月1日の平均待ち時間は60分で、2025年1月1日は24分でした。平均待ち時間は半分以下になっています。アトラクションの待ち時間は顧客が拘束されて満足度が下がるだけでなく、グッズや飲食の購入機会を減らすものでもあります。待ち時間が長いことは、顧客・テーマパーク双方にとってネガティブな影響が大きいのです。
オリエンタルランドのチケット代引き上げは、量から質への転換であり、価値が高いと感じるものに惜しみなく出費をする傾向が高まった現代らしい取り組みだと言えるでしょう。
コアファンの獲得・育成が新事業の展開にも必要に
よく、若者の「東京ディズニーリゾート」離れが言及されます。確かに来園比率は下がっています。18歳から39歳までの比率は2018年に50%を超えていましたが、2025年は40%まで下がりました。来園者数全体と掛け合わせると、2018年の来園者の若年層は1657万人、2025年は1109万人。人数も3割以上減少しています。
もちろん、チケット代の高騰が要因の一つになっている可能性はあります。しかし、それだけには留まらない根深い課題も潜んでいそう。ウォルト・ディズニーが持つコンテンツの影響力が、かつてほど強くはないのではないかという問題です。
1990年代は数々の名作が生み出されました。「美女と野獣」「アラジン」「ライオン・キング」「ポカホンタス」などです。
2000年代に入って「塔の上のラプンツェル」「アナと雪の女王」などのヒット作が生まれましたが、近年は「ウィッシュ」などやや勢いに欠ける作品も目立つようになりました。
コンテンツや情報発信の方法が複雑化・多様化し、それに合わせるように人々の価値観も多種多様なものへと変化しました。ディズニーのような王道コンテンツに世界中の注目が集まる時代ではなくなりつつあります。
オリエンタルランドは価格改定に合わせるようにして、学生限定の「カレッジパスポート」を2026年7月1日から9月30日まで販売しています。通常価格より1500円~1900円割引になるというもの。こうした価格軸の取り組みにより、若年層の来園者数を底上げできるのかは注目のポイントとなるでしょう。ただし、利用期間が1ヶ月間のため、効果は限定的である可能性があります。
オリエンタルランドは、2028年度から「ディズニークルーズ」をスタートさせる予定。料金は1人当たり10万円から30万円を想定しています。こうした動きを見ても、オリエンタルランドはライトファンからコアファンの獲得、育成へと舵を切っている印象を受けます。
文/不破聡 ©Disney




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