ヨーロッパ各地での熱波のニュースが日本でも話題になっています。私が住むオランダも同様。例年は夏でも日中の気温は20℃前後と比較的過ごしやすいのに、熱波がやってくると一気に35℃超えという日も!そういった日は冷たいものを飲みたい・・・!ということで、今年急激に注目を浴びたキッチン家電があります。それがこれ。

なんとこれ、家庭用のコールドドリンク製造機。その名もスラッシーマシン。スラッシーとは、小さい氷の粒が含まれるなめらかなシャーベット状のフローズンドリンクのことです。日本でも遊園地やコンビニ、フードコートなどで目にする機会があるのではないでしょうか。これが自宅で簡単に作れちゃう機械なのです。

流行のスタートはアメリカから、TikTokが火付け役に
家庭用スラッシーマシンの火付け役はアメリカの家電ブランドNinjaです。2024年に発売した「Ninja SLUSHi」はアメリカ国内で入荷するごとにすぐ売り切れてしまうという人気商品に。その流れを受けてオランダでも2025年春頃からTikTokやInstagramを中心に注目を集め、7月にはオランダの有力な食・料理メディアであるFoodiesが「注目すべきTikTok発のトレンド、今月のイチオシ商品」として取り上げました。ただ価格は350ユーロ(約6万円)とキッチン家電としてもかなり高価。使ってみたいけど高嶺の花、憧れの製品というイメージだったのです。
しかし今年2026年は、その人気に着目した各メーカーから手頃な価格のスラッシーマシンが販売されるようになりました。スーパーやドラッグストアなどでも「今週の目玉商品」として、キッチン家電が販売されることがあるのですが、そういったところには100ユーロ台のスラッシーマシンも並ぶようになったのです。

冷たい飲み物自体が、新しい流行?
しかし、これほどまでにスラッシーマシンの人気が高まったのは、単なるTikTokトレンドだけが理由ではないようです。まずひとつは「冷たい飲み物」自体に注目が集まっていることが挙げられます。私がオランダに来た10年前には、夏でもキンキンに冷えた飲み物を飲むという習慣自体が少なく、スーパーに並ぶソフトドリンクも常温販売のみ。しかしここ数年は冷蔵陳列ケースができ、「すぐ飲める冷たいビールやソフトドリンク」も購入しやすくなりました。(ちなみに自動販売機やコンビニのようなお店は大きな駅などにあるくらいで、普通の街中にはありません。)

また冷たいコーヒーもスターバックスのフラペチーノくらいしかなかったのですが、最近は他のお店でもフラペチーノに似たスラッシー状の甘いコーヒーや氷入りのアイスコーヒーを販売するところが増えてきました。今夏はこれまでオランダの市場では見たことがなかった、水と氷で薄めて飲むアイスコーヒーの素が新商品として発売され、家庭でもアイスコーヒーを飲む習慣が増えてきたことが伺えます。
そしてコールドドリンクのバリエーションも豊かになってきています。2021年には台湾のタピオカドリンクや、タピオカ以外にもゼリーやパールをトッピングするボバティーショップがオランダでも大ブームとなり、専門店が続々オープン。その後2024年頃からの日本のアイス抹茶ラテ、そして今年は韓国のコンビニ式の飲み方「パウチドリンク+アイスカップ」といった、アジア発の「アレンジ系コールドドリンク」が若者を中心に毎年新しいトレンドとして人気となっています。つまりただ冷たい飲み物というだけではなく、様々なコールドドリンクをカスタマイズして楽しむという習慣も急速に広がっているのです。

実用性だけじゃない、エンタメとしての需要
ヨーロッパの熱波のニュースはかなり深刻に伝えられますが、実は日本のように夏の間ずっと暑いというわけではありません。熱波が発生する数日間だけ、普段体験しないようなとんでもない暑さになります。そのためオランダでは一般家庭でクーラーがある家はまだ珍しく、公共施設やショッピングモールなどでさえも冷房完備というわけではありません。そういった暑い中ではやはり冷たい飲み物の需要は高まりますし、見栄えのいいコールドドリンクや、もっと美味しいもの、新しい味にも注目が集まりやすくなっています。

もうひとつの理由が、夏のおうち時間の充実です。オランダでは太陽の光が降り注ぐ春から夏にかけて、夕飯を庭やベランダに出て外で食べるという風景をよく見かけます。ホームセンターには庭専用のダイニングテーブルセットもずらりと並ぶほど。夏は夜10時過ぎまで明るく、家族や友人と屋外でのくつろぎの時間を大切にしたり、ホームパーティを楽しんでいます。ここに、コロナ流行時には外食に行けなくなった分、高級バーベキューコンロや家庭用ピザ窯といったプロ仕様のキッチンツールを家庭に導入したり、食事を作ったり提供する過程もエンタメ化して楽しむような流れが生まれました。2025年以降はインフレの上昇により、外食よりも家での食事の充実に目が向けられるようになっています。
こういった要素にも家庭用スラッシーマシンというのはぴったり当てはまりました。夏のホームパーティーを話題のスラッシーマシンで盛り上げたり、子どもたちの集まりにも大活躍したり。冷たい美味しさはもちろんのこと、出来上がる過程や自分で注ぐ体験も含めて「使ってみたい」と思わせる商品なわけです。また用意する側としても、氷を追加する手間がなくずっと冷たいまま提供でき、ゲストが好きな時に自分で注いで楽しめるというのはとても便利です。
このようにTikTokトレンドに加え、これまでなかったコールドドリンクの人気の高まりや家でのくつろぎをエンタメ的に楽しむという流れも、スラッシーマシンへの注目につながったといえそうです。日本でも夏にお庭やベランダバーベキューを楽しむおうちも多いのではないでしょうか。そんな時にスラッシーマシンがあったら、大人も子どもも盛り上がること間違いなしです!現在は日本でも同様のマシンが購入できるようです。新しいひんやりドリンクを試してみたい、好きな味のスラッシーを作ってみたい、いつもと違ったホームパーティーにしてみたい方という方。ぜひ家庭用スラッシーマシンを取り入れてみてはいかがでしょうか?
文/福成海央(ライター、科学コミュニケーター)
オランダ在住。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」会員。気になったらとりあえずなんでも調べるしなんでも書く。おもしろいこと好き。オランダの美味しいチーズとポテトも好き。




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