アウディジャパンは2026年6月25日に、6代目となる「A6セダン」と「アバント」を発売した。「A6」シリーズにはEVの「A6 e-tron」もあり、エンジン車とEVの両方がラインアップしている。ところが同じ「A6」シリーズではあるが、プラットフォームも異なり、また乗り味も異なっているのだ。だが、いずれのモデルもブランドスローガンである「技術による先進(Vorsprung durch Technik)」の上に成り立っているモデルあり、アウディの中での位置付けや車格は「A6」シリーズに位置付けられる、というわけだ。
ステーションワゴン・タイプ「アバント」試乗体験記
今回、試乗してきたのはエンジンを搭載するステーションワゴン・タイプの「アバント」で、PPC(Premium Platform Combustion)プラットフォームを採用している。EVの「A6 e-tron」はPPE(Premium Platform Electric)プラットフォームでリヤ駆動とクワトロがラインアップ。ポルシェともプラットフォームを共有しているという違いがある。
そして、エンジンを搭載したPPCの「A6」シリーズは、もうひとつ紛らわしいのが「A5」との違いだ。新型「A5」は「A4」と統合しての位置付けになり、サイズもアップしたため、「A6」との違いがわかりにくくなっている。実際、販売ディーラーでも「A5」にオプションを追加して「A6」レベルの装備にするパターンもあるようだ。
しかし、今回「A6」に試乗してみると、「A5」とはかなり違う位置付けであることを感じた。「A6」はプレミアムアッパーミドルセグメントに位置付けられ、より上級なポジションになっている。それを乗ってみて感じるのはどこか? 主に五感に訴える味付けの領域で「A5」とは明確に違っているということだ。
一方で、ハードの違いについてみると、面白いことがわかる。プラットフォームは「A5」「A6」ともにPPCを採用し縦置きエンジンを前提とした内燃機関(ICE)車用の新世代プラットフォームで、基本設計思想と主要なハードウェア構成を共有するためのモジュラー・アーキテクチャーになっている。その上「A5」「A6」「Q5」など、それぞれ同じ骨格を使いながら、着せる服だけでなく、歩き方まで変えているあたりが興味深い。
さらに「A5」と「A6」はホイールベースも30mm異なっていて、かつてプラットフォームが同じであればホイールベースは自ずと同一になっていたのだが、そうした拡張性があるのも新世代プラットフォームの特徴だ。したがってボディサイズも異なり、「A5」は4835mm、「A6」は5000mmとかなり違う。だから、キャラクターとしては「A5」はプレミアムミッドサイズ・スポーツ、「A6」はプレミアムアッパーミドル・セグメントといった位置付けも異なってくるわけだ。
では、試乗してみて五感に訴える味付けの領域とは何か。「A6」を一言で表現するとすれば「美しい所作」が言い当てている気がする。発進するときも、速度を上げるときも、路面の段差を越えるときも、いちいち動作が大げさではない。クルマというのは、普通なら「いま段差を越えました」といった顔をしがちなのだが、A6は何事もなかったように通り過ぎていくのだ。
「どうです、いい乗り心地でしょう」とドヤ顔をするのではなく、「え? 段差ありました?」という顔をしているのだ。小憎らしいが、そうなのだ。もちろんドライブモードには「ダイナミック」もあり、モードを選択すればサスペンションは引き締まり、機敏に走るステア応答性能を見せてくれる。だが、持ち味は美しいことなので、コンフォートが似合うと感じさせるところがある。「あなたはそこじゃないでしょ?」とでも言ってそうだ。
「A5」には「A4」の血統がある。ダイナミックで、スポーティで、ステアリングを切れば、「はい、曲がります」と素早く反応する。そのスポーティさの中にプレミアムモデルらしい豪華さがある。「A6」が得意なのは、速さを見せつけることではなく、速いことを涼しい顔でやってのけることなのだ。このようにハードパーツではアウディのミッドサイズ・ファミリーで共有しているものの、それぞれのキャラクターに合わせてチューニングをし、味付けをしていくことで、明確な違いを創出しているのだ。
さて、その「A6」のパワートレインは、2タイプあり、ディーゼルとガソリンがある。ディーゼルは150kW、205PS 、2.0LのTDIクワトロで、ガソリンは、200kW、272ps、2.0LのTFSIクワトロの2タイプ。ともに、7速Sトロニックで、さらに48Vのマイルドハイブリッドになっている。そのMHEV plusは18kW、24ps 230Nmのトルクがあり、回生ブレーキ は25kWのエネルギーが得られる仕様になっている。
試乗車は、ガソリン2.0TFSI クワトロのMHEV plusだったが、エンジン音はすこぶる小さい。巡航や市街地では気にすればエンジン音を聞くことができるというレベル。アクセルペダルを踏み込んでエンジン音が高くなっても、遠くでエンジンがかかっているという音量だ。その静粛性からも品の良さ、育ちの良さを感じてくるわけだ。
そしてもう一つ、オプション装備になるがAWS(四輪操舵)がチョイスできる。リヤ操舵機能は車速によって、フロントタイヤと同位相(同方向)、逆位相(逆方向)に切れる動きをする。このAWSによって高速では直進安定性がより高まり、ハイスピードコーナリングでのスタビリティ、どっしり感、踏ん張りはドライバーに安心感を与える。
このハイスピードコーナリングは、リヤの踏ん張りが素晴らしく、ドライバーに「もう少し行けますよ」と背中を押してくる。困ったことに、こういうときのクルマの「もう少し」は、人間にとっての「かなり」である。また低速域では旋回性の良さや駐車場などでの取り回しの良さにも貢献するので、余裕があれば欲しい機能だ。ちなみに「A5」にAWSは設定されていない。新型「A6」のエクステリアは、アウディらしく、複雑な造形としながら組み立て精度の高さは健在で、複雑な面構成なのに、パネルの境界線は乱れない。プレスラインが一直線に繋がっているのだ。
そして、アバントのルーフラインはスリークで美しさを際立たせていると感じる。このエッジの効いたプレスラインとスリークなデザインは空力性能にも大きく影響し、空気抵抗はセダンが0.23、アバントが0.25とアウディのエンジン車史上最高のスペックになっているという。フロントエンドは低く、ワイドに構えた大型シングルフレームグリルと細めのヘッドライトデザイン、そしてフォーリングスという存在感あるデザインに「いいじゃん」とひとりごちる。
インテリアではMMIパノラマディスプレイを中心としたデジタルステージの進化がすごい。11.9インチのバーチャルコックピット(メーターパネル)、そして14.5インチのMMIタッチディスプレイに加え(センターディスプレイ)、助手席用10.9インチのMMIパッセンジャーディスプレイを全車に標準装備している。先端技術をインテリアにも搭載し、その見た目の美しさも併せて進化させているセンスが抜群だ。
またインテリアの落ち着きやシート、ダッシュボード、ドアトリムなどの雰囲気は美しい所作をさらに高みへと押し上げている気がする。ドアを閉め、走り出し、街を抜け、高速道路を淡々と走る。その一連の動作に、美しい所作がある。速さは十分にある。それでも「速いでしょう」と胸を張るようなところがない。速ささえも美しい所作のひとつにしてしまう。「A6」には、そんな育ちの良さがある。
■関連情報
https://www.audi.co.jp/ja/models/a6/a6/
文/高橋アキラ(モータージャーナリスト)
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