今秋、日本のキャッシュレス決済業界に大きなインパクトが加わる。
それは、JR東日本が満を持して送り出すteppayだ。
コード決済サービスは、今や日本人の日常生活に浸透している。PayPay、d払い、au PAY、楽天ペイ。その中に新しい銘柄が加わるのだが、それは言い換えると既に開拓されている分野に生身で突っ込むということだ。
teppayの目の前にあるのは、熾烈な競争である。ゆうちょPayのように、存在感を示すことができず敗れ去ったサービスも存在する。teppayはその二の舞を踏んでしまうのか、それともPayPayすらも凌駕するサービスに成長するのか?
その鍵を握るのは「加盟店」である。
teppay残高とモバイルSuica残高は別物
teppayは今秋にはモバイルSuicaの、来春にはモバイルPASMOの一機能として実装される予定だ。
teppayにはコード決済サービスの標準的機能と言える送金や、teppay JCB プリカを介したオンライン決済も可能としている。teppay残高とモバイルSuica残高はそれぞれ独立していて、teppay残高からモバイルSuica残高へのチャージは可能(モバイルSuica残高からteppay残高へのチャージは不可)。また、teppay残高は最大30万円までのチャージに対応している。これにはモバイルSuicaのチャージ上限2万円を補う意図も込められている。
見方を変えれば「苦肉の策」とも言えるが、ともかくこれでモバイルSuicaのアプリを高額の買い物に利用することができるようになるのだ。
手数料無料キャンペーン
が、ここで疑問が思い浮かぶ。teppayって、どこで使えるようになるの!?
コンビニ、飲食チェーン店、家電量販店等がteppayに対応する近未来は、割と簡単に実現できるかもしれない。が、問題は個人経営の店舗、イベントの時にだけ営業する出店といった「小さい店」でteppayが使えるかどうかである。
もちろん、JR東日本はすでに手を打っている。今夏からユーザースキャン方式の加盟店を募集し、決済手数料を期間限定で無料にするキャンペーンも打ち出した。
○東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR東日本」)は、モバイルSuicaのアップデートにより、新たなコード決済サービス「teppay(テッペイ)」を2026年秋より提供開始する予定です。さらに、2027年春には株式会社パスモと提携し、モバイルPASMOにおいても「teppay」を提供開始する予定です。
○提供開始に先立ち、JR東日本と株式会社ビューカードは、QRコードを設置するだけでteppay決済を導入できるユーザースキャン方式(MPM方式)の加盟店について、WEB申込受付を開始いたします。
○さらに、サービス開始を記念し、ユーザースキャン方式(MPM方式)のteppay決済手数料が最大12か月間無料となるキャンペーンを実施いたします。
○店舗の皆さまは、初期費用0円で導入できるこの機会に、ぜひteppayの導入をご検討ください。
(teppay加盟店の<ユーザースキャン方式>WEB申込受付を開始します JR東日本)
この取り組みは、かつてのPayPayの姿を思い出させる。
サービス開始間もない頃のPayPayは、それに加盟している個人経営店舗がまだ少なかった。一方で、家電量販店では最初期の段階から利用できたので、PayPayが実施するポイント還元キャンペーンも「大型家電購入のオマケ」のようなイメージがあった。
そこからPayPayは個人経営店舗にも革靴の裏を擦り減らす方式の営業をかけ、今や全国津々浦々の店舗で「ペイペイ!」という軽快な決済音が流れるようになった。こうした普及までの道程を、teppayもたどることになるだろう。
日本は「面」の国
teppay普及を左右するのは、「地方都市」と「JR沿線地域から離れた場所」ではないか。
日本は「都市の鱗」で構成されている島国である。たとえば、アメリカの場合は広大な平野と山脈を横切る「線」としての道路があり、それらが「点」としての都市を接続している。アメリカは「点と線」の国だ。
しかし、日本は都市を中心とした独立した経済圏が魚の鱗のように連続している「面」の国。その面の中を見てみると、都市中心部や鉄道駅からだいぶ離れた地域にもコミュニティがあり、人が住んでいる。アメリカのように、誰一人として住民がいない荒野は日本には存在しないと言っていいだろう。
JRの駅から離れた地域に住む人にも、teppayを利用してもらえるようにするにはどうすればいいだろうか?
躍進の取っ掛かりを探る
teppayには「地域限定バリュー」という機能がある。これは特定の地域や店舗限定の電子クーポンと表現すれば妥当だろうか。静岡県静岡市葵区の山間部の店舗や施設でのみ利用できるバリューを発行する、というような使い道も想定できる。そして、「特定の地域や店舗限定」を「特定の地域のタクシーやコミュニティバス」に置き換えることも可能ではないか?
こうした具合に各地域の事情に応じたサービスを展開していくことが、teppayにとっての「普及への階段」になっていくはずだ。
もちろん、それには個人経営の店舗がteppayに続々加盟することが必須条件になる。
少し言葉は悪くなってしまうが、teppayは地域に根付く店舗を足場にして躍進の取っ掛かりを探っていくことになる。そこで失敗すれば、teppayはコード決済サービスの強豪たちに押し潰される運命をたどるだろう。この新サービスがどこまで加盟店舗を確保できるのか。そのあたりが日本のキャッシュレス決済業界の今後を左右する要素にもなる。
参考
teppay
teppay加盟店(ユーザースキャン方式)のWEB申込受付を開始します JR東日本 PR TIMES
文/澤田真一
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