タミヤは「MMシリーズ」というラインナップを持っている。これは主に戦車等の陸軍兵器を模型化したもので、1/35スケールのリアルなミリタリーキットとして世界的に知られている。
しかし、実はMMシリーズは1/35スケールだけではない。それよりも小さい1/48スケールも用意されている。
日本の住宅事情を鑑みると、MMシリーズは1/35よりも1/48のほうが合理的ではないかと思わせることがある(実際、そのような経緯で1/48シリーズは開発された)。ラインナップ数は1/35より遥かに少ないものの、日本在住のプラモデラーが手軽にMMシリーズを楽しむという視点で見れば1/48はむしろ「王道」とも言えるのだ。
子供たちはプラモを通じて「歴史」を表現した
タミヤにとって、1970年代は「MMシリーズで名を馳せた時代」でもあった。
日本は高度経済成長を経て、生活水準が格段に向上した。年々増える可処分所得を生かして様々な趣味に打ち込むことが時代のトレンドとなり、同時に娯楽自体がいくつものジャンルに細分化した。
それは玩具にも顕著に表れる。もはや「玩具」と呼ぶにはあまりにも本格的で、大人でも楽しめるような類の玩具が登場したのだ。プラモデルは、その最たる例である。
60年代までは、テレビと新聞と大衆誌がざっくりとした形で紹介するカルチャーだけが「カルチャー」だった。しかし、70年代からはそこに「消費者が自分で調査する」という要素が加わり、カルチャーはより深くマニアックなものになっていく。
第二次世界大戦のドイツ軍は、極めて広大な戦線を展開していた。どの戦線のどの師団にいるかで、戦車の種類や塗装が大きく変わる。また、第二次世界大戦が繰り広げられた約6年の間、戦場には次々と新しい戦車が投入されている。大戦初期の主役だったⅢ号戦車は長砲身化が試みられ、それでも戦闘力不足が否めないと判明するとドイツ軍はⅤ号パンター戦車やⅥ号ティーガー戦車を最前線に送り出した。したがって、1940年にティーガー戦車があるのはおかしい。
そうした歴史の流れを表現できるMMシリーズは、子供たちの心を鷲掴みにした。学校では教えてくれないリアルな第二次世界大戦を、当時の子供たちはMMシリーズを通じて学んでいた。
しかし、MMシリーズの流行は70年代後半から下火になっていき、80年代はさらに細分化・多彩化されたプラモデルカルチャーの前に長い立往生を強いられることとなった。
「細かい表現塗装」ができるギリギリのスケール
2000年代に入ると、かつてMMシリーズのキットを作っていた子供たちが大人になって帰ってきた。いわゆる「リターンモデラー」だ。
ここからMMシリーズの勢いが、かつてほどではないにせよ少しずつ戻ってくるようになった。が、リターンモデラーたちは1/35MMシリーズの箱を再び手に取ると同時に、2003年に発売が開始された1/48MMシリーズにも目を向けた。
日本の住宅事情を考慮した1/48MMシリーズは、嫁の目を意識しながらプラモデルを組み立てる既婚男性の悩みに対して決定的な回答を出してくれるものだった。
筆者は1/35ドイツ軽戦車38(t)E/F型と、1/48ドイツ軽戦車38(t)E/F型を両方持っている。これらのキットを比較してみると、1/48の小ささを実感することができる。
が、一方で1/48は「細かい表現塗装」ができるギリギリのスケールでもある。
たとえば、戦車には必ずと言っていいほど積まれているシャベル。このシャベルの取っ手を塗装し、さらに木目やニスの表現まで施す技法が存在する。1/35の場合、これは慣れれば割と難なくこなせるが、1/48では何とかギリギリ「シャベルの取っ手の木材らしさ」を表現できる具合だ。
ウェザリング(汚し塗装)も同様である。泥や錆、油汚れの表現は意外と精緻な技術が要求され、奥が深い。1/35で培ったウェザリングの腕前を、1/48で発揮することも可能だ。それを実現し得る最小のスケール、それが1/48という言い方もできる。
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戦車は「作りやすいプラモ」
小さいスケールのプラモデルは、初心者モデラーにとってはありがたいものでもある。
1/48は1/35よりも部品が一体化されているため、そもそもの部品点数が少ない。慣れれば比較的短時間で組み上げることができ、それでいて造形の緻密さは1/35に劣らないレベルだ。
プラモは「小さいものから始める」のが、レベルアップの近道である。
その上で、戦車模型は実は初心者に易しい、そして優しいものであることも付け足す必要がある。
戦車には明確な屋根(上面装甲)が存在し、それが何かと細かくてゴチャゴチャしている車内を完全に覆ってくれている。つまり、戦車とは造形面ではいくつかの四角形を組み合わせたような代物で、曲面が少ない分だけ塗装は非常に簡単だ。
1/48MMシリーズでプラモ制作の腕を磨く、という考え方は非常に賢明な判断と言える。ある程度加齢を重ねている人は老眼の問題も出てくるが、1/48MMシリーズは上級者向けどころか経験の浅いモデラーも十分に挑戦できる余地のある製品と言えるだろう。
文/澤田真一
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