海外で高い人気を誇ったフィーチャーフォンのRAZRを、縦折りのフォルダブルスマホとして復活させたのが、モトローラのrazrシリーズだ。“カミソリ”という名のとおり、薄くてスタイリッシュな特徴をそのままスマホに受け継ぎ、日本でも徐々にその知名度を高めている。そんなモトローラが、razrブランドで初の横開きフォルダブルスマホを開発した。それが、「razr fold」だ。
同モデルは、3月にスペイン・バルセロナで開催されたMWCで正式発表され、日本でも8月に発売された。日本版は、おサイフケータイに対応するカスタマイズも施されている。“初物”ながら、高いスペックと薄型ボディを両立させており、カメラは、海外の評価機関「DxOMark」でフォルダブルスマホ1位を獲得している。
また、最大の競合とも言えるサムスン電子がGalaxy Z Foldシリーズへの採用をやめてしまったペン入力にも対応。他社のフォルダブルスマホの弱点を突くような機能をしっかり網羅してきた。一方で、初物ゆえにその実力がうたい文句どおりかどうかは未知数な部分もある。販路によっては割引もあるが、価格も約30万円と高額で失敗できない金額だ。それでも試してみたいということで、筆者は、本機を自腹で購入。2週間じっくり使ってみた。ここでは、そのレビューをお届けする。
初の横開きフォルダブルながらPixelを超える薄さ、背面素材も質感よし
モトローラ初の横開きフォルダブルとなるrazr foldだが、初物とは思えないほど、ハードウェアの完成度は高い。サイズや開き方は異なるが、ディスプレイやヒンジ(蝶番)など、フォルダブルを構成するためのノウハウを縦開きのrazrで培ってきたためだろう。razr foldは、他社が徐々に詰めてきた厚みに迫るサイズ感を、初号機でいきなり実現している。
開いた時の厚みはわずか4.55mm。閉じても10mmを下回る9.89mmで、一般的なハイエンドモデルのスマホよりもやや厚い程度にとどまっている。ストレート型モデルと並ぶほどの薄さになった「Galaxy Z Fold8 Ultra」や「OPPO Find N6」には及ばないが、フレームがわずかに丸みを帯びているためか、数値以上に薄く見える。ポケットにも、スムーズに収まる。
ディスプレイは閉じたときのアウトディスプレイが6.6インチ、開いたときのメインディスプレイが8.1インチで、フォルダブルスマホの代表格と言えるサムスンの「Galaxy Z Fold8 Ultra」よりもわずかながら大きい。アウトディスプレイは、端がややカーブしており、指を滑らせやすい。edgeシリーズでカーブディスプレイを採用しているモトローラらしい部分でもある。
モトローラらしさは、背面の素材にも発揮されている。razr foldはカラーによって素材が異なり、筆者が購入したBlackened Blueは、しっとりとしたレザー調の素材が採用されており、織物調の細かな格子状のテクスチャーが施されている。同社はこれを「ダイヤモンドピケ仕上げ」と呼ぶ。
一般的なスマホは、背面がガラスか樹脂であることが多く、一部のモデルはフレームとひとつながりになった金属を採用している。これに対し、モトローラはレザー風の素材やツルっとしたアセテート、さらには木材など、さまざまな質感にチャレンジするメーカー。razr foldにも、それが踏襲されている。見た目で差別化を図れるのはもちろん、指に吸いつくような質感で、端末をしっかりホールドできて落としにくくなる実用上のメリットもある。
また、背面からシームレスにつながり、隆起しているカメラユニットの処理も、同社の他の端末との共通点だ。単調になりがちなスマホのデザインを、個性的かつ実用的にまとめ上げ、モトローラらしさをしっかり打ち出せている点は高く評価できる。一方で、スペック面ではやや重さが気になる。重量は243gで、Galaxy Z Fold8 Ultraよりも30g近く重く、ポケットに入れた時の存在感が大きい。
これは、おそらくバッテリー容量が6000mAhと大きいことや、カメラのメインセンサーが大きいこと、さらには望遠カメラにペリスコープ構造を採用していることなど、複数の要素が関係しているとみられる。スペックを盛ったがゆえの重量と言えるが、フォルダブル特有の重量をどう解消するかは、後継機に残された課題になりそうだ。
優秀なカメラ性能、暗所も望遠もキレイに撮れる
代わりに、カメラはかなり優秀だ。メインのセンサーには、ソニーの「LYTIA 828」を採用。このセンサーは、1/1.28インチとスマホとしてはそこそこの大きさであるだけでなく、「Hybrid Frame-HDR」という技術に対応しているため、ダイナミックレンジが広い。ネオンやビルの照明がきらめく夜景の撮影や、逆光気味の背景が明るいシーンにとにかく強い。夜景の写真は、以下のとおりで明るい部分までしっかり飛ばずに写っている。
色作りや精細感も高く、暗所での撮影にも強い。やや暗めの室内で撮った料理写真も、ご覧のとおりだ。さらに、望遠カメラは1/1.95インチの5000万画素センサーを採用しており、ペリスコープ(潜望鏡)構造で光学3倍を実現。切り出しを行うことで、ほぼ劣化のない6倍ズームを可能にする。以下のように、6倍で撮っても写真はクッキリしている。
やや暗めの飲食店内で撮った料理の写真。暗めながら、色が失われておらず、被写体を自然に捉えている
1倍と3倍、6倍。6倍は高画素なセンサーから12メガピクセルぶんを切り出した写真になるため、デジタルズーム特有の劣化がない
さらに、AIによる補正を組み合わせて最大100倍までズームが可能だ。さすがに100倍まで引き延ばすと、少々写真とイラストの境界線上にあるような写真になってしまうが、看板などに寄って撮りたいときには活躍する。また、AI処理を加えたくない時には、設定でAIをオフにすることも可能だ。
フォルダブルゆえに、半開きの状態にして、次々と同じ構図の写真を撮っていくといった使い方にも対応する。講演のスライドや、子どもの運動会や発表会などでの劇やダンスを固定したアングルで動画撮影したい時に便利だ。少々残念なのは、角度をあまりつけられないこと。90度から少し深くしただけで、本体を閉じたと検知され、アウトディスプレイに切り替わってしまう。
解決策として、アウトディスプレイを使い、テントのような状態で立てかけて撮影することはできるが、半開きの状態よりもカメラが下にきて、ローアングルになりすぎてしまうきらいがある。半開きの状態で使えるのは、フォルダブルスマホの魅力の1つなだけに、もう少しギリギリまでアウトディスプレイを表示するよう、アップデートで改善してほしい。
大画面活用やペン対応には課題も、アップデートにも期待
フォルダブルならではという点では、大画面を生かす機能も多数搭載されている。例えば、アプリは3つを均等に並べて、うち2つを表示させつつ、もう1つを端に少し見える形で置いておき、ワンタップで切り替えることができる。ウィンドウタイプにして、別のアプリの上に重ねるように表示することも可能だ。
画面下のドックからドラッグするだけで、操作も直感的だ。ただし、画面下のドックには、4つのアプリと最近使ったアプリの3つしか表示されない。より多彩な組み合わせで使いたい時には、画面右端にドラッグで表示されるサイドバーを設定しておくといいだろう。
マルチタスクで少々気になったのは、画面分割で開いたアプリそれぞれの比率を変更できないこと。テキスト入力用のアプリとXのアプリを開き、Xの横幅は狭くしておくといった変更ができず、均等にしかならない。アプリによっては、より横幅を取っておきたいことがあるため、この仕様は少々使い勝手がよくない。また、画面下のドックも、横幅の割に狭いのでスペースが少々もったいない印象だ。
初物ゆえにまだ詰めが甘いのか、ソフトウェアには改善の余地がある。これは、「moto pen ultra」での入力も同様だ。大きな画面を使ってペンで入力できるのは便利な反面、それを生かすアプリが少ない。プリインストールアプリとして「メモ」が内蔵されており、それを使えば手書きはできるが、PDFに書き込んだ文字が出力時に反映されないなど、あまり利用シーンが考慮されていないような印象を受けた。
手書き自体は、Android標準の「Googleドライブ」アプリのPDFビューワーでもできるが、こちらはペン入力時にタッチでの入力を無効化できる設定がなく、やや書きづらさが残る。結果としてサードパーティのアプリに頼らなければならないが、どれがパームリジェクションに対応しているのか分かりづらく、探すのに手間がかかる。モトローラ側でアプリ開発者と連携して、オススメのものを紹介するといったことはやってほしいと感じた。
このように、詰めの甘い部分は残るものの、いずれもソフトウェアアップデートで解消できること。秋に予定されているというAndroid 17へのアップデート時には、ユーザーの意見をぜひ反映してほしい。ある程度の薄さで、かつペン入力に対応し、カメラがきれいで、おサイフケータイにも対応したフォルダブルスマホはなかなか選択肢がなく、razr foldは貴重な存在。ハードウェアの作りはいいため、継続的にブラッシュアップされることを期待したい。
文/石野純也




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