カシオ計算機の復調が鮮明になってきました。2026年4月~6月の営業利益は前年同期間の3.4倍に跳ね上がりました。カシオは今期通期の業績予想を早くも上方修正。営業利益を従来予想比でおよそ31%引き上げ、340億円としました。
注目したいのが北米事業で、40年前のG-SHOCKの魅力が再発見されるというムーブメントが起こっています。
G-SHOCK40周年記念も北米は不発という結果に
2026年4月~6月の北米エリアの売上高は前年同期間比で22%増加しました。北米の売上構成比率は17%で、時計事業の四半期の売上高は510億円でした。従って、北米エリアで87億円あまりの売上があったことになります。
国内の売上は82億円。前年の売上は国内の方が多かったものの、今では逆転しています。
コロナ禍でカシオは販売店の減少などに悩まされ、北米エリアでの売上低迷に苦しみました。一番のポイントは、コロナが収束した後も売上が戻り切らなかったことです。

※決算説明資料より筆者作成
2022年から2024年ごろに注力していたのが、G-SHOCKの中・高価格帯モデルでした。Gメタルと呼ばれる金属タイプのもののなかでも、「GMC-B2100」などのデジタルではなくアナログの高級志向のモデルの販売に力を入れていたのです。
G-SHOCKは2023年から2024年にかけて、40周年記念モデルを多数発売します。国内などでは一定の成果を出すものの、北米での反応は今一つでした。グローバルアンバサダーを起用した大々的キャンペーン「SHOCK THE WORLD」も北米での効果は限定的だったのです。
レトロブームでカシオの時計が再発見される
潮目が大きく変わったのが2025年でした。2025年1月~3月の北米エリアの売上が前年同期間比で12%増加したのです。その後も増加を続け、前年を割り込むことがなくなりました。
カシオは2024年5月にプロモーション戦略の軌道修正を発表しています。40周年記念はグローバルキャンペーン効果が北米エリアで不十分だったことから、地域ごとの流行や時流を見極めたローカライズ戦略を強化したのです。
そうしたなか、カシオは北米のターゲットを絞り込みました。「Gen-Z」です。日本でいうZ世代で、1990年代後半から2010年代前半に生まれた世代を指します。
アメリカのZ世代の間では、1990年代や2000年代の音楽・アナログ機器への回帰ブームが起こっています。若者たちはレコードやアナログカメラ、古いゲーム機などに“新しさ”を見出したのです。
カシオの時計はこのブームにフィットしました。G-SHOCKのスクエアモデル、データバンクウォッチ、「F-91W」などのいわゆるチープカシオと呼ばれるモデルです。
カシオはエントリーモデルの進化やマーケティングの強化を図るようになりました。こうして好循環を形成するようになったのです。
カシオはコロナ禍で販売店の減少を受け、北米での存在感を失いかけました。その状況を打開すべくG-SHOCKの40周年記念で大々的なキャンペーンを実施するも、不発に終わります。しかし、若者のレトロ回帰でカシオの時計の価値が見直されたというわけなのです。
ブームをカシオファンの入口にできるかどうか
それではレトロブームが終焉を迎えると、カシオは北米での勢いを失うのでしょうか。
短期的な影響は受ける可能性はありそうです。しかし、数十年に渡ってほとんど基本デザインを変えなかったカシオの時計が、突如として売れたという事実にこそ希望が持てます。
つまり、カシオの時計が持つ普遍性の魅力に消費者が気づいた可能性があるのです。
カシオの時計は機能性の高さやタフさに定評があり、機能美が評価されてきました。アメリカの若者がその魅力に気づくと、次のカシオの時計へと手を伸ばすことになり、結果としてLTVが伸びることになります。
G-SHOCKのなかでも、国内でよく売れているモデルに「GMW-B5000D」があります。1983年の初代初号機「DW-5000C」のスクエアデザインを継承しつつ、ステンレス素材でフルメタル化を実現したもの。レトロ感を残しつつも高級感と機能性を兼ね備えた時計です。小売希望価格は9万3500円と決して安くはありません。しかし、消費者をブランドのファンに引き込むことで、人気モデルへと押し上げることができるのです。
北米では足元でエントリーモデルへの人気が集まっていますが、中・高価格帯へとシフトさせることで中期的に成長させることもできるでしょう。
アメリカでは物価高を背景として、時計需要が二極化していることも追い風になりそう。しばらくはガーミンなどのスマートウォッチが人気で、カシオの苦戦の一因にもなっていました。今もガーミンは好調ですが、高額で手を出しづらい消費者も多くいます。低価格で機能性の高いカシオの時計に消費者の目が向きやすいタイミングでもあるのです。
カシオがこの商機を活かせるかどうかが今後の成長のカギを握るでしょう。若者を一過性の購入者からG-SHOCKのファンへ転換できるかが、北米復活の持続性を左右することになるのです。
文/不破聡
キオクシアの2026年4月~6月の最終利益は、前年同期間の46倍となる8421億円でした。2026年7月~9月の最終利益は同31倍の1兆2700億円になるとの見…




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