日本で電気自動車の販売がいまひとつ伸び悩んできた理由のひとつが、価格や充電インフラとともにあった一充電走行距離ではないか。2010年に発売された日産リーフは24kWhバッテリーを搭載して一充電走行距離は当時のJC08モードで200km(現在のWLTCモードで160km、実走行距離130km程度)。電気自動車をより身近にしてくれた日産サクラはWLTCモードで180kmである。それでも日常使いなら問題なく、自宅で充電できれば内燃機関車のようにいちいちガソリンスタンドに足を運ぶことなく、電気自動車ならではの静かでスムーズな走りを味わうことができるのだが・・・。
が、ひとたび、遠出をするとなると話は変わってくる。満充電で出発したとしても、高速道路のSA/PAなどでの経路充電、ドライブ先の宿や道の駅などでの目的地充電も、電気自動車の一充電走行距離によっては必要になってくる。ガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車などなら往復無給油でこなせるルートでも、電気自動車の場合、航続距離、バッテリー残量によって、基本、30分とはいえ、充電の時間、手間がかかってしまう。
もっとも、車種、急速充電器の能力によっては、バッテリー残量10%から80%まで22分、たった10分の充電で200km走行分の電力が充電できることもあるのだが・・・。
人間だけの電気自動車のドライブならまだいい。高速道路のSA/PAで充電している間、施設内で買い物、飲食していれば、30分の充電時間などあっという間だ。しかし、我が家のように愛犬と暮らし、ドライブ旅行は愛犬同伴が基本・・・というケースでは、SA/PAの施設内に愛犬と入ることはできず、充電している間、テラス席にいるか、ドッグランがあればそこで時間をつぶすしかない。雨の日、猛暑の日でも、である。もちろん、電気自動車は電源ONでも排気ガスをまき散らすことがないため、充電中、電源ONの車内でエアコンを効かせつつ、愛犬とともに待機することもできる。飼い主2人乗車であれば、交代でトイレに行き、買い物に行くこともできるのだが、飼い主1人だとそうはいかない(たとえ電源ONでエアコンを効かせていても、愛犬だけを車内に残すのは飼い主としてのマナー違反、危険だからである)。
長い間、愛犬と暮らし、旅行、ドライブも愛犬同伴が基本の我が家が、これまで電気自動車に手を出さなかったのは、そうした理由があるからだった。電気自動車の静かでスムーズかつ低重心で安定感ある走りは、極めてドッグフレンドリーであることを熟知しているにもかかわらず、である。
ところが、ここ最近、そうした心配が無用になってきている。まだまだ高級・高額車が中心とはいえ、片道200km程度、往復400km程度のドライブ旅行でも、満充電で出発すれば、途中充電、目的地充電が不要の一充電走行距離を誇る電気自動車が続々登場しているのだ。
現在、電気自動車の一充電走行距離の最長レベルを誇るのが、発売されたばかりのBMW iX3だろう。そのBMW iX3 50 xDriveの満充電時の一充電走行距離は何と最大906km!!( BMW iX3 50 xDrive M Sportは最大835km) 。真夏のエアコン使用時、冬のヒーター使用時でも650km程度以上の一充電走行距離になるのだ。これなら片道300kmのドライブ旅行先まで足を伸ばすことが可能になるのだから安心だろう(走行条件による)。
つい最近、東京・南青山と日光中禅寺湖間を、東北自動車の最高速度120km/h区画を含む高速道路、急こう配のいろは坂の山道を使って往復したばかりのボルボEX90はEVレンジ=一充電走行距離650km(WLTCモード)に達し、往復約380kmをもちろん無充電で走破できたのだが、南青山に帰着したときの残り走行距離が220kmも余っていたのだから驚きだった。このまま勢いで南青山から箱根芦ノ湖往復、軽井沢(片道)まで行けるほどである。これぐらいの一充電走行距離があれば、日常的な使用はもちろん、東京を起点とした場合、人気の観光地、軽井沢(往復360km)、那須高原(往復400km)、箱根芦ノ湖(往復210km)、伊豆高原(往復300km)など余裕で走り切れることになる。
国産の電気自動車も航続距離が伸びている。最新のトヨタbZ4XはFWDで最大746キロ(4WDは最大
687km)。兄弟車のスバル・ソルテラのFWD車も最大746kmである(AWD車は687km)。実走行距離を500kmとみても、上記の軽井沢、那須高原、箱根、伊豆高原の往復を無充電で走り切ることが可能となる。途中充電の時間と手間、電欠の心配なしで走れることから、電気自動車の魅力を目いっぱい楽しみ、100%モーター駆動による快適なドライブを満喫することができるに違いない。最新の日産リーフもB7 Xグレードの場合、一充電走行距離は、初代の4倍(JC08モードとWLTCモードの換算例)に迫る702kmに達している。
ちなみに一充電走行距離最大746キロのbZ4XのZ FWD車の車利用本体価格は550万円。国からのCEV補助金は満額の130万円(令和7年度補正)と高額で、4年間の保有義務はあるものの、実質車両本体価格420万円で、ロングレンジを誇る先進感ある電気自動車が手に入ることになる。今やロングレンジの電気自動車は、BMWやボルボのような1000万円級のクルマばかりではないということだ。
こうしたロングレンジの電気自動車のメリットは、安心して長距離を走れることだけではない。急速充電を使う経路充電、目的地充電が不要になることで(走行条件、距離による)、自宅に200Vの普通充電設備があるのが前提だが、急速充電よりずっと安い電気料金で、電気自動車を運用できるメリットまでもたらしてくれるのだ。
BMW iX3が900kmオーバーの一充電走行距離を実現したことから、これから国産電気自動車も、さらに一充電走行距離を伸ばしたモデルを登場させると予想する。航続距離の長さが、電気自動車に対するハードルをグッと下げてくれることは間違いないと思える。そして、これから電気自動車の所有を検討しているのであれば、自身の行動半径、遠路、訪れる可能性のある場所の距離を把握し、一充電走行距離とのマッチングを見極めるのもいい。筆者の場合は、愛犬とよく訪れる軽井沢往復(と軽井沢周辺のドライブ)400kmを無充電でこなせる一充電走行距離を目安にしている。もっとも、よく訪れるホテルには充電設備が設置されているのだが・・・。
文/青山尚暉




DIME MAGAZINE































