26-27シーズンのJリーグが7日にスタートした。開幕直前には東京スカイツリーのJリーグ全60クラブ特別ライトアップを実施したり、7人組アイドルグループ「Travis Japan」を今季スペシャルアンバサダーに起用するなど、93年の発足時を上回るレベルの一大プロモーションを実施。その効果もあって、7~9日に開幕節は全国各地のスタジアムが盛り上がりを見せており、今後への大きな期待感を抱かせた。
野々村芳和チェアマンは「現状維持は停滞と同じ。これからもアグレッシブチャレンジし続けていきます」と常日頃から話しているが、その姿勢がより鮮明になった印象もある。そんなJリーグのトップの本音に引き続き迫った。
Jリーグ発足34年目でシーズンの欧州基準移行に踏み切った野々村芳和チェアマンの本音
93年の発足時から「春開幕・冬閉幕」というスケジュールだったJリーグが34年目にして「欧州基準」に移行した――。 26-27シーズンから欧州主要リーグと同じ…
今夏は清水、ガンバ、岡山、長崎の4クラブがJの助成金を使って欧州合宿を実施
――猛暑の真夏に開幕した新シーズンのJリーグですが、気温が下がっていくにつれて、パフォーマンス向上が期待されますね。
「それも1つの大きなポイントですね。気温と疲労の相関関係を分析・検証しましたが、今は4~5月から気温が高くなりますけど、そこから夏場までずっとリーグ戦をやっていた前のカレンダーに比べると、8月に始まって冬になっていく今のカレンダーを比べると、パフォーマンスは必ず上がると考えています。
その先にあるのは、世界に競技レベルで追いつくこと。今までだったら『30度超の猛暑の中で同じJリーグのクラブに勝てればいい』という発想でしたけど、我々が考えなければいけないのは、『イングランド・プレミアリーグと同レベルのパフォーマンスで戦えているか』なんです。
J1でプレーしている20歳のFWの選手は、プレミアで試合に出ている同い年のFWを基準に戦わないといけない。それに近い環境がシーズン移行によって生まれるのであれば、ぜひやろうということで、舵を切ったところもあります」
――Jリーグとしても世界基準のプレーに近づける一助として、今夏のプレシーズンに欧州でキャンプを行ったチームに助成金を出す試みを行い、J1では清水エスパルス、ガンバ大阪、ファジアーノ岡山、V・ファーレン長崎の4チームが対象となりました。
「そういったチャレンジは積極的にしていますし、我々の目指すべきところがクラブ側にも伝わったかなという前向きな感触はあります。ただ、そのために必要なお金をどう生み出し続けるかというのが一番難しいところ。当初の余力をつねに持てるように、リーグ全体としてどうやって収益を上げていくかが重要なんです。
前にもお話ししましたけど、2025年度のJリーグ全体の収入が2100億円を突破しましたが、その数字をもっと引き上げていくことが肝心です。『今、1000億円投資できます』という環境であれば、世界のビッグネームを10~20人呼んで、ピッチレベルのクオリティを一気に上げるといった劇的なアプローチができるかもしれませんけど、それは現実的には難しい。
今後、年10数%の成長を続けていくことで、世界レベルの選手も呼べるようになるでしょうし、ビジネス的にも成功に近づく。両面を向上させていくことにつながると考えています」
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今後のJリーグの理想形は「60クラブがそれぞれの地域で輝く」
――今、Jは60クラブで構成されていますが、年間売上100億円超の浦和レッズのようなビッグクラブもあれば、2026年にJFLから昇格してきたレイラック滋賀のような小クラブもあります。Jリーグとしては2022年には「60クラブがそれぞれの地域で輝く」という成長戦略の基本テーマも掲げられましたが、それも大事なポイントですね。
「そうですね。僕もチェアマンになってからの4年間で全クラブを回りましたけど、カテゴリーを上げることと同じように、地域で魅力的な存在になることの重要性を伝えてきたつもりです。
地域の人々や自治体、サポーターと同じ目標を共有していなければ、上のカテゴリーに上がっていくことは難しい。『我々の目標は昇格です』と言葉にするのは簡単ですけど、やはり地域を巻き込んで初めてそれが達成できる。そのことをこのタイミングで今一度、感じてほしいと思います。
2025年のJリーグの総入場者数は1350万3210人で過去最高を記録しました。約1400万人という数字は巨大アミューズメント施設と同じ規模。ある意味、『(Jクラブ)60個のアトラクションでどう楽しませるか』ということなんです。
いろんなアミューズメント施設に行くと、2時間待ちの大人気アトラクションもあれば、余裕があるところもある。でもその空いているところがあるから全体がより楽しめたりもする。全クラブが大都市にあるわけではないですから、2時間待ちのアトラクションを作る必要はないし、それぞれの個性や魅力があればいいんですよね」
――確かに首都圏のクラブと過疎地にあるクラブでは環境が違いますからね。93年の発足から34年が経過して、大小60のクラブがさまざまな姿になった今のJリーグを野々村さんはどうお感じになっていますか?
「初代チェアマンの川淵(三郎=JFA相談役)さんはこの状況を見えていたのかな…。
66年後の様子を自分は想像できませんけど、Jリーグは世界の中心の1つになっているのかなと思います。30年前の日本サッカーはこういう存在がなかったわけですからね。アジアの中で最も魅力的で、欧州からも、アメリカからも『あそこでサッカーがしたい』と思ってもらえるようなリーグになっていたら理想的。そのポテンシャルはあると思っていますよ」
全国のサッカーの露出は4年前に比べて600%。今後も集客増の施策を継続へ
――今後の発展を考えた時、ファン層拡大は必須条件になってきます。野々村さんがチェアマンに就任されてから、地上波の露出に力をかなり入れています。
「そうですね。露出獲得の投資はJリーグとしても注力している点で、毎年数十億円を投じています。その効果もあって、全国のサッカーの露出は4年前と比べて600%、6倍になっているんですよね。
瞬間的に収益を上げようと思うなら、有料放送に絞って放映権を売る方が手っ取り早い方法かもしれませんけど、10~20年後を視野に入れるとより幅広い人々にリーチしていくことが重要です。
『普段はサッカーを見ないけど、地上波でやっているからちょっと見てみるか』というように自然と目に入るようなタッチポイントを作ることがすごく大切。それが集客増にもつながっていると思います」
――シーズン移行直前の2026年前半に行われた百年構想リーグも「集客面が不安」と言われましたけど、J1は6・7%増加。J2・J3の方はJ2クラブの集客が9%減ったようですが、全体で見れば3・6%増という結果になりましたね。6月13日のオールスターゲームも盛り上がりましたし。
「(2026年頭からだと)1・5シーズンという変則的な形になるので、各クラブのスポンサー収入が若干減る可能性があると言われましたけど、賞金を増やして、勝ち星に応じて収入が増える仕組みにしたこともポジティブだったと思います。
今後も露出を増やす施策は考えていきますし、もっともっと集客を増やしていきたい。現状維持は停滞と同じだと僕は考えているので、つねに前進し続けていくつもりです」
――新シーズンからはAFCチャンピオンズリーグ(ACL)とのカレンダーが同じになります。ACLエリート(ACLE)に関しては、Jからは鹿島アントラーズ、柏レイソル、ヴィッセル神戸の3チームが本戦に出場。ガンバ大阪と京都サンガがプレーオフから参戦します。もう1つのACL2にはFC町田ゼルビアが本戦から出場という形になりますが、アジア王者をつかんでFIFAクラブワールドカップに出場することも大事な目標になります。
「僕自身は今年、町田が出たACLEの決勝に足を運びましたけど、あと一歩のところでタイトルを逃して、本当に悔しい思いをしました。『絶対に頂点を取りに行くんだ』という思いも湧き上がってきましたね。
優勝賞金も以前より上がりましたし、王者になれればビジネス的にも潤う。それはクラブW杯にしても同様です。そのターゲットに届くように、Jリーグとして最大限のサポートをしていきます」
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93年に掲げた「百年構想」の3分の1が経過し、Jリーグは第2章に突入した。この30年あまりは世界も驚く進化を遂げたが、その成長スピードをさらに加速させることが次なる命題だ。そのためにもより魅力的なサッカーを多くの人々に見せ、ビジネス的にも拡大を続けるしかない。そのけん引役である野々村チェアマンの動向からは今後も目が離せない。
取材・文/元川悦子
長野県松本深志高等学校、千葉大学法経学部卒業後、日本海事新聞を経て1994年からフリー・ライターとなる。日本代表に関しては特に精力的な取材を行っており、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは1994年アメリカ大会から2014年ブラジル大会まで6大会連続で現地へ赴いている。著作は『U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日』(小学館)、『蹴音』(主婦の友)『僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」(カンゼン)『勝利の街に響け凱歌 松本山雅という奇跡のクラブ』(汐文社)ほか多数。
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かつてのサッカー日本代表があと一歩のところで届かなかったアメリカの地に、夢の祭典が再び帰ってきた。現在の代表チームが目指すのは、あくまで〝優勝〟。出場すらかなわなかった32年前を知る世代からすれば、考えられないほどの高い目標設定だ。
わずか30年でここまで代表チームが成長し、日本のサッカー文化自体も発展を遂げられたのはなぜか? その足跡をサッカー協会、Jリーグ、外国人監督、元日本代表のレジェンドたち、スポンサー企業など様々な視点で読み解く。
さらに『アオアシ』をはじめ、サッカー漫画がいかに日本サッカーの躍進に貢献したのか、元日本代表レジェンドたちにも取材もしました。
日本サッカー協会会長 宮本恒靖
日本サッカー協会名誉会長 田嶋幸三
Jリーグ チェアマン 野々村芳和
名古屋グランパス監督 ミハイロ・ペトロヴィッチ
ガンバ大阪 代表取締役社長 水谷尚人
元サッカー日本代表 戸田和幸
元サッカー日本代表 遠藤保仁
元サッカー日本代表 福西崇史
元サッカー日本代表 中村憲剛
『アオアシ』作者 小林有吾先生
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