今年の7月末から8月にかけて、「多摩動物公園」で飼育していたライオン3頭が熱中症とみられる症状で死亡。今月8日にはフィジー出身のラグビー選手が熱中症で死亡した。「サバンナに住んでいたライオンや、フィジー出身の屈強なラグビー選手ですら命を落とすほど日本の夏は過酷なのか」と驚いた人は多いのでは。
ライオンもラグビー選手も熱中症で死亡する、今年の暑さ
この影響は、完全室内飼いの猫であっても例外ではない。今の時期、動物病院には熱中症で搬入される飼い猫が増えているという。総務省消防庁の統計データによると、人間の場合も熱中症で救急搬送される人の約4割(約35~40%前後)が「住居(家の中)」で発生している。人間でも室内で熱中症になるのは高齢者が多いので、最近増えて居る高齢猫は特に注意が必要だという。
わが家の愛猫も、今年で12歳。人間でいうと64歳と、立派なシニア期だ。日中はエアコンのない寝室で過ごすことが多いので、「エアコンが苦手なのかな」と思っていたが、ある時ネットで獣医師が「すべての猫がエアコン嫌いなわけではない。猫は自分のお気に入りの場所に対する執着が強く、少し暑いくらいではそこから動きたがらないことが多い」と発言しているのを聞き、目からウロコ。思いこみを捨て、エアコンのある部屋の居心地をよくすることを心がけるようにしたら、心なしかリビングにいる時間が増えたような気がする。
特に熱中症リスクが高いのは、長時間、留守にする時
砂漠にルーツを持つ猫は本来、暑さに強い動物ではあるが、それは高温で乾燥した環境での話。日本の夏のような高温多湿な環境では、体をなめて水分を蒸発させる冷却(気化熱)が効きにくく、それほど体温が下がらない。つまり、日本の夏は猫にとって想定外に過酷な環境なのだという。
また猫は、体のしくみ自体が熱中症にかかりやすくできている。人間は暑い時、全身にある汗腺から汗を出すことで体温を調節している、一方猫に汗腺があるのは、足の裏の肉球のみ。また犬は「ハァハァ」と口呼吸をすることで、舌から効率よく体温を下げることができるが、猫はこの口呼吸法が得意でない。つまり猫は、体温が上がっても有効な冷却手段が少ない動物なのだ。
特に注意が必要なのは、真夏に締め切った部屋で長時間、留守番をさせる時。猛暑日には、南向きの窓を閉め切った部屋は室温が40℃以上になることがある。お盆休みで帰省する時には、エアコンは24時間つけっぱなしが基本。ちなみに猫の平熱は38℃~39度と人間より2℃ほど高めなので、エアコンは人が涼しいと感じるより2℃ほど高く設定し、風量も抑えめにしておくのがいいそうだ。
また留守中の停電やエアコンの故障への備えも必要。遮光カーテンを閉め切って、日中も直射日光が当たらないようにするほか、風通しの良い逃げ場(廊下・別部屋)を確保する必要がある。
熱中症チェック(1)…皮膚をつまんで、「脱水度」を確認
猫は犬のようなわかりやすい口呼吸ができないので、口呼吸に気がついて動物病院に運び込んだ時には重症化していることが多い。そこで、脱水症状が出ていないかこまめにチェックする必要があるが、熱中症による脱水の程度は、皮膚をつまんだ時の状態である程度わかるという。
猫の首から肩のあたりの皮膚を3本指でつまんで持ち上げ、パッと離した時、戻りが遅いほど脱水症が進行してしまっている。脱水していると、皮膚をつまんでももとに戻らず、出っ張ったままになる。戻る時間は脂肪の量にも左右されるので、健康な時にも試しておき、「いつもより遅いかどうか」をチェックしておくことが重要だ。
熱中症チェック(2)…熱中症の危険度レベルをおぼえておこう
前述したように、猫は犬のように激しい呼吸をしないので、飼い主は熱中症のサインを見逃しやすい。以下は危険度の目安。
危険度レベル(1)…いつもより元気と食欲がない
危険度レベル(2)…自力で歩けず、息が洗い
危険度レベル(3)…自力で歩けず、嘔吐や下痢がある
危険度レベル(4)…ぐったりしていて、呼びかけても反応がない
このようなサインがあれば、急いで日陰やエアコンのある涼しい場所に移動させ、うちわなどであおいで股や脇を冷やす。さらに濡らしたタオルや氷、保冷剤などを股や脇に当てて体温を下げ、できるだけ早く動物病院に連れていってほしい。
猫は自分の不調を隠す習性があるため、危険度レベル1から徐々にレベルが上がるのではなく、気がついたら危険度レベル4になることがある。特に高齢猫は、大丈夫と思ってもこまめにチェックをしたほうがいいかもしれない。
熱中症チェック(3)…意識を失っていたら、まずは気道を確保
もし、少し目を離していて気がついたら意識がなく、ぐったり横たわっているような状態であれば、まずは喉をまっすぐにして気道を確保し、呼吸しやすい姿勢にしてあげよう。喉によだれなどが詰まっていればふきとり、猫が興奮しないように袋やケージに入れて呼吸の乱れを抑える。と同時に前述のような方法で体を冷やして、一刻も早く動物病院を受診する必要がある。
猫の熱中症について調べると、何度も出てくるのが「猫は不調を隠す習性があるので、飼い主も気がつきにくい」「気がついた時は重症化していて、命が助かっても重い後遺症が残ることが多い」といった、怖い事実。長い間ともに暮らしているからこそ、見慣れて気がつかないことも多いかもしれないと、自戒した。
参考資料/「猫のための家庭の医学」(野澤延行著/山と渓谷社)、「猫の病気のサインがわかる図鑑」(服部幸/ねっこねこ)
文/桑原恵美子




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