今夏も各地でさまざまなフェスが開催され、盛り上がりを見せている。7月25日・26日、8月1日・2日には、大阪・舞洲スポーツアイランドで「OSAKA GIGANTIC MUSIC FESTIVAL」(通称:ジャイガ)が開催された。今年10周年を迎えるこの音楽フェスには、アドビが協賛。PhotoshopやPremiereなどのクリエイターツールで知られる同社が、なぜフェスに?という疑問を解消すべく、会場内に設置されたブースを訪問するプレスツアーに参加した。
音楽フェスならでは!4つのクリエイティブ体験ができるブースを出展
アドビのブースが設置されていたのは、屋外メインステージのひとつ、「SUN STAGE」があるSUN AREA。締め切られたブース内にはエアコンが備えられ、炎天下にひととき涼が得られるスポットとして、来場者の人気を集めていた。そこで提供されていたのは、アドビのスマホアプリを活用した4つのオリジナルアイテム作成体験だ。たとえば生成AIアプリ『Adobe Firefly』を使って体験できるのは、テンプレートをベースにオリジナルのジャイガロゴをデザインすること。生成されたデザインをSNSに投稿すると、そのロゴをプリントしたタトゥーシールが受け取れる。
さらに音楽フェスらしい体験だったのが、無料で使えるデザインツール『Adobe Express』を使ったマイタイムテーブルづくりだ。用意された2パターンのテンプレートを活用して、見たいアーティストの出演時間やステージを入力。自分だけのマイタイムテーブルをデザインできるというもの。できあがったタイムテーブルはロゴと同様に、SNSにデザインを投稿することで、タトゥーシールとして出力してもらえる。
最近の大型音楽フェスではイベント情報が専用アプリで提供されることが多く、以前のように紙のタイムテーブルが配布されることが少なくなっている。それだけに、タイムテーブルを手元で確認したい人にとってはうれしいサービス。筆者もやってみたが、夢中になってデザインしていると、滞在時間の目処である15分があっという間に過ぎていた。
タトゥーシールは洗えば消えてしまうが、思い出を残せる体験も提供されていた。たとえば『Adobe Acrobat』でPDFを編集し、日付や名前の入った来場証明書が受け取れるサービスもそのひとつ。またスマホで本格的な動画編集ができる『Adobe Premiere』では、用意された専用のテンプレートを使用して、会場で撮影した写真や動画でオリジナルのショートムービーづくりを体験することができた。
音楽フェスにこのようなブースを出展するのは、今回が初めてというアドビ。その狙いについて、マーケティング本部 マーケティングマネージャーの鈴木依子氏は、「クリエイティブにチャレンジしてもらう、きっかけづくりのため」と説明した。
「私たちはクリエイティブの裾野をもっと広げたい。無料のモバイルアプリなどを通じて、多くの人にクリエイティブなことにチャレンジしてほしいと思っています。クリエイティブは技術を持った特別な人だけがやるものではなく、誰もが楽しめるもの。今はAIなどのテクノロジーがそれを助けてくれます。そのことを知っていただくきっかけになればということで、今回の出展を決めました。音楽フェスを選んだのは、音楽ファンにはクリエイティブな志向を持つ方が多いのではないかと考えたから。実際にファッションやアートにこだわりのある方が多く、好きなアーティストにちなんだものなど、皆さん思い思いのデザインに挑戦していただいています。クリエイティブな活動をプラスすることで、フェスをより楽しんでいただけたらとうれしいです」
鈴木氏によれば初週(7/25・26)時点でブースには1日600人ほどの来場者があり、体験の中でも特に人気が高いのが『Adobe Firefly』を使ったオリジナルロゴづくりとのこと。AIによる画像生成を初めて体験する人も多いという。「プロンプトってどんな風に書けばいいんですかといった質問をいただくことも多く、AIでこんなことができるとか、こんなに簡単にできるんだというところを体験していただけて良かったです」と鈴木氏。アドビのことを知らなかったという人も多いと言い、「まずはアドビを知っていただくこと。その上でクリエイティブってこんなに身近にあるんだ、自分が応援しているアーティストとか、好きな活動をするのに役立つんだ、クリエイティブって楽しいなみたいに思ってもらえることを目標にしています」と話していた。
ユーザーからの問い合わせに、AIが答える「PDFスペース」を活用
今回のジャイガでは、AIを用いた新たなユーザーサービスを提供する試みも行われた。主催のKYODO KANSAIは、アドビが提供する『Adobe Acrobat』のAIワークスペース機能「PDFスペース」を、来場者の疑問を解消するためのツールとして採用。専用のワークスペースにアクセスし、「食べ物の持ち込みはできる?」「イスは持っていった方がいい?」など、フェスについての疑問をAIに投げかけると回答が得られ、かつ該当する情報が記載されたPDFも参照できるしくみだ。
「PDFスペース」はストックされたPDFなどのドキュメントをソースに、AIを通じて情報を簡単に引き出せるだけでなく、他言語への翻訳やサマリーの作成、新たな文書を作成するといったことを可能にする『Adobe Acrobat』の機能。「AIアシスタント」オプションをアドオンすることで利用できる。作成したスペースを共有することもでき、昨年末にはアドビ広報がメディア向けに、プレスリリースをストックしたPDFスペースを「24時間広報室」として公開した事例もある。アドビによれば、今回のようなエンターテインメントでの活用は前例がないという。
取材に応じたキョードーエンターテインメント セールスプロモーション部の前田穂乃香氏は、導入の背景について「お客様からの個別の問い合わせが非常に多く、どう対応するかが課題になっていた」と明かした。公式ホームページではQ&Aも含めて多くの情報が発信されているものの、車椅子などユニバーサル対応のために用意された問い合わせフォームに、一般ユーザーからの問い合わせが寄せられることもあるそう。多いときには300件規模の問い合わせに、プロデューサーが自ら対応していたケースもあったという。
「今回はそういう問い合わせにAIを活用できたことで、かなり助かっています」と前田氏。案内先をPDFスペースに一本化したことで、課題だったユニバーサル対応窓口への一般ユーザーからの問い合わせ数も、例年に比べて少なくなったという。また当日、現場のスタッフが専門外の質問に回答できないときも、「PDFスペースを案内することで対処できているので、その点でも助かっている。AIがうまく答えられないこともあるが、概ねうまくいっている」と付け加えた。
実はPDFスペースの導入が検討され始めたのは、本番のわずか約2週間前。本格運用できる形に整ったのは開催日の3~4日前と、かなりぎりぎりの対応だったという。「まずはQ&Aなどホームページに記載されている情報をPDF化してアップロードしたのですが、それだけでAIに質問すればすぐ回答が得られる環境を提供できました。さらに問い合わせの多かった内容については、追加で情報をアップロードして対応しています」
個別の問い合わせの対応にスタッフを割かずに済むため、人件費の節約になるだけでなく、「お客さんのストレスもずいぶん減らせたのではないか」とは、実際にPDFスペースの運用を担当したスタッフのコメントだ。協賛社向けや出店者向けへの展開も構想していたが、今回は準備が間に合わず、来場者向けのみの提供にとどまったという。前田氏は「反省会でどんな問い合わせがあったかを共有し、運営に活かすようにしているんですが、PDFスペースでもそういう情報を収集できるようになるといいですね。今回の取り組みを来年以降にも活かしていければと思います」と、早くも来年に向けての抱負を語っていた。
取材・文/太田百合子




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