1981年に誕生した赤城乳業の「ガリガリ君」が、今年で発売45周年を迎えた。手頃な価格とガリガリとした食感、爽快な味わいで、子どもから大人まで幅広い世代に親しまれ、今や夏を代表するアイスとして定着している。
しかし、その魅力は「昔からあるアイス」というだけではない。コーンポタージュ味やナポリタン味といった意欲的なフレーバーへの挑戦をはじめ、商品だけでなく、ブランドの伝え方にも挑戦を続けてきたことも、多くのファンを惹きつける理由の一つだ。
流行や消費スタイルが大きく変化する中で、ガリガリ君はなぜ45年間にわたって愛され続けてきたのだろうか。その理由を探ると、変えるべきものは変え、守るべきものは守るというブランドの姿勢が見えてくる。
今回は、赤城乳業株式会社 開発マーケティング本部の鈴木夏代さん、金澤有美さんに、ガリガリ君誕生の背景や45年間愛され続ける理由、そしてファンとのつながりを大切にするブランドづくりについて話を伺った。
︎「片手で食べられるかき氷」から始まった、45年愛されるガリガリ君
真夏になると、コンビニやスーパーで思わず手に取ってしまうガリガリ君。そのガリガリとした食感と爽快な味わいは、長年にわたり夏の風物詩として親しまれてきた。
その始まりには、どのような発想があったのだろうか。

「もともと弊社では、1964年からカップタイプのかき氷アイス「赤城しぐれ」を販売していました。しかし、当時は他社のアイスメーカーからもカップタイプのかき氷商品が登場していたため、別の形でかき氷の魅力を届けられる商品を開発しようと考えました。
そこで着目したのが、食べ方のスタイルです。カップタイプのかき氷は、片手でカップを持ち、もう片方の手でスプーンを使う必要があります。そうではなく、片手で手軽に食べられるかき氷アイスを作ろうという発想から、ガリガリ君の開発がスタートしました」(鈴木さん)

また、発売当初から変わらないコンセプトもある。
「ガリガリ君は、子どもたちが遊びながらでも片手で食べられる『かき氷のアイス』というコンセプトを、発売当初から変わらず大切にしています。
子どもがお小遣いで買いやすい価格設定にしていることや、発売当初から続けている『当たり』の仕組みも、その考え方の一つです。食べる楽しさに加えて、『当たるかもしれない』というワクワク感も感じてもらえるよう意識しています」(鈴木さん)
ガリガリ君と聞けば、多くの人がパッケージに描かれたおなじみのキャラクターを思い浮かべるだろう。アイスとしてはもちろん、ブランドを象徴するキャラクターとしても、長年にわたって親しまれてきた存在だ。

一見すると昔から変わっていないように思えるが、実は2000年にはパッケージキャラクターを大きく刷新している。
「最初の大きな転機となったのが、2000年に実施したパッケージキャラクターのリニューアルです。
発売当初のガリガリ君は、『中学3年生の昭和のガキ大将』という設定で、現在とは少し異なるデザインでした。
1990年代後半に実施した消費者調査では、「キャラクターが描かれたパッケージを店頭で手に取りづらい」といった声や、デザインに関するさまざまな意見が寄せられました。
そこで、ガリガリ君らしい元気でわんぱくなイメージはそのままに、より親しみやすく、多くの方に愛されるキャラクターを目指してデザインを一新しました」(鈴木さん)
そして2000年以降は、テレビCMでも「ガリガリ君」を目にする機会が増えていく。
今ではおなじみとなったCMソングも、このリニューアルを機に誕生した。パッケージキャラクターのリニューアルとあわせてテレビCMを展開したことで、「ガリガリ君」の認知度はさらに高まり、幅広い世代に親しまれるブランドへと成長していった。
「キャラクターのリニューアルに合わせて、2000年には、現在もおなじみとなっているCMソングを使用したテレビCMの放映もスタートしました。キャラクターのリニューアルとあわせて、より多くの方に『ガリガリ君』を知っていただく大きなきっかけになったと思います。
当時は、今ほど全国的な知名度があったわけではありませんでした。弊社は埼玉県に本社があることもあり、東日本では広く知られていた一方、西日本では地域に根付いたアイスメーカーの商品が親しまれていることも多く、認知度には地域差がありました。
その後、テレビCMやさまざまな取り組みを通じて少しずつ全国に浸透し、現在のように幅広い世代の方に親しまれるブランドへと成長していきました」(鈴木さん)
︎コーンポタージュ味もナポリタン味も誕生。〝攻める姿勢〟と、変わらないブランドの軸

ガリガリ君といえば、定番のソーダ味を思い浮かべる人が多いだろう。しかし、その一方で、コーンポタージュ味やナポリタン味など、意外性のあるフレーバーへの挑戦でもたびたび話題を集めてきた。
「フレーバーでよく話題に挙がるのは、『ガリガリ君リッチ コーンポタージュ』ですね。発売したのは今から10年以上前になりますが、大きな反響をいただき、発売からわずか3日でメーカー出荷を終了するほどの人気となりました。
当時は『アイスではあまり見かけない味』への挑戦だったこともあり、非常に斬新な商品だったと思います。
一方で、『ガリガリ君リッチナポリタン味 』のように、思うような結果につながらなかった商品もありました。
それでも、アイスではあまり見かけない味に挑戦し続けることは、ガリガリ君らしさであり、赤城乳業らしさでもあると考えています。もちろん失敗することもありますが、新しい挑戦を続ける姿勢はこれからも大切にしていきたいですね」(金澤さん)
コーンポタージュ味やナポリタン味など、数々の挑戦的なフレーバーを生み出してきたガリガリ君。一方で、発売当初から変わらず守り続けている〝ブランドの軸〟もある。挑戦を重ねる中でも、変えないものとは何なのだろうか。

「ガリガリ君には定番シリーズのほか、『ガリガリ君リッチ』や『大人なガリガリ君』など、さまざまなシリーズがあります。しかし、どのシリーズにも共通しているのは、『氷へのこだわり』です。これは発売当初から変わらない、ガリガリ君の大切な特徴だと考えています。
実は2023年には、ソーダ味を約20年ぶりにリニューアルしました。大きく見直したのは、外側ではなく中に入っているかき氷の部分です。特に氷の粒の大きさにこだわり、食感を改良しました。
リニューアル前に実施した消費者調査では、『ガリガリ君なのに、思ったよりガリガリしていない』という声が寄せられました。それまで食べやすさを意識して食感をやわらかくしてきた部分もありましたが、改めて『ガリガリ君らしさとは何か』を見つめ直し、氷の粒の大きさから設計を見直しました。
ガリガリとした食感こそがブランドの魅力だと考え、その特徴をより感じていただける商品へと進化させています」(金澤さん)
「子供の頃に食べた味」が親子へ受け継がれる。45年育んできたファンとの絆
赤城乳業のSNSには、日々ファンからさまざまな声が寄せられている。かつて販売されていたフレーバーの再販を望む声、新商品のアイデア、食べた感想など、その内容からはガリガリ君への熱い思いが伝わってくる。こうした声は「お客様相談室」に寄せられる意見と同様に、商品づくりや情報発信を考えるうえで大切な気づきを与えてくれるという。
「私たちは、お客様相談室に寄せられる声を何よりも大切にしています。
また、SNSでも自社アカウントへのコメントを一つひとつ確認しています。皆さまからの反応を通じて、『どのような点に共感いただけたのか』『どのような情報が十分に伝わっていないのか』を日々振り返り、学びにつなげています。
お客様からいただく一つひとつの声が、商品づくりや情報発信を見直すきっかけになっています」(金澤さん)
発売から45年。長くブランドを支えてきたファンを、赤城乳業はどのように受け止めているのだろうか。
「ガリガリ君が45年という長い歴史を歩んでこられたのは、これまで応援してくださった皆さまのおかげです。心より感謝しています。
昔から食べてくださっている方が、大人になった今も変わらず手に取ってくださっていることを、とてもうれしく思います。また、ご自身が親になり、お子さんと一緒に楽しんでくださる姿を見ると、長く愛されるブランドになれたのだと実感します」(鈴木さん)

こうしたファンとのつながりを、今後はさらに広げていきたいという。
「オンラインでの交流に加え、ファンの皆さんと直接コミュニケーションが取れるようなイベントもやはり大切だと考えています。新しい取り組みも計画中ですので、ぜひ楽しみにしていただけたらと思います。
今後は、リアルなイベントなどを通じて、ファンの皆さんと直接つながれる機会も増やしていけたらと思っています」(金澤さん)
子どもの頃、夏休みに夢中でかじった一本が、大人になった今も変わらず店頭に並び、今度は自分の子どもと一緒に味わう――。そんな風景が当たり前のように続いていること自体、45年という歴史の重みを物語っている。
食べやすさやガリガリとした食感というブランドの軸を守りながら、商品やコミュニケーションの形を時代に合わせて進化させてきたガリガリ君。変わらないおいしさと、変わり続ける挑戦。その両方を大切にしてきたからこそ、45年経った今も世代を超えて愛され続けているのだろう。
取材・文/Tajimax
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