スペインの優勝で幕を閉じた「FIFAワールドカップ2026(W杯)」は、経済面でも大きな注目を集めた。実際に開催都市にはどのような経済的な影響があったのか。Visaは、文化やエンターテインメントやスポーツなど世界的な大規模イベントを中心に発生する一時的かつ集中的な経済活動を「ポップアップ経済圏(Pop-Up Economies)」と定義しており、今回の大会の開催国であるアメリカ、カナダ、メキシコの経済効果のデータを発表した。それによれば開催都市のクロスボーダー支出、海外からの旅行、デジタルコマースの大幅な成長があったという。
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クロスボーダー取引は前年比2割増
Visaのデータでは、大会期間中に創出された経済活動の規模や広がりがみえたという。主なデータは次の通り。
・国境を越えた取引であるVisaのクロスボーダー取引は、開催都市では大会期間中に前年同期比で約20%増加。開催都市でクロスボーダー支出が特に大きかったのは、コロンビア、プエルトリコ、英国、アルゼンチン、ブラジルから訪れたファンだったという。
・海外と国内のVisaカード会員による対面支出の伸びがもっとも大きかった都市は、サンタクララ/サンノゼ、ボストン、マイアミで、消費者支出は交通とエンターテインメント分野に集中していた。
・タッチ決済取引は約12%増加して、旅行中のファンが現地で迅速で安全かつシームレスな決済体験を好んでいた。
・カンザスシティで開催されたエクアドル対キュラソー戦とコロンビア対ガーナ戦、フィラデルフィアで開催されたクロアチア対ガーナ戦は、前年比で特に大きな支出額の増加が見られた試合だったが、キックオフ前後を通じて消費活動が大きく活性化した。
Visaのグローバル最高マーケティング責任者であるFrank Cooper III氏は、次のようにコメントしている。
「『FIFAワールドカップ26』は、ピッチ内外の両面で、これまででもっとも大きな影響をもたらした大会のひとつでした。世界的なイベントが、企業、都市、そして地域社会に幅広い経済価値をもたらすことを示しました。大会期間中、開催都市には新たな来訪者と消費が生まれ、地域企業にとって新たなビジネス機会が創出されました。Visaのネットワークを通じて、こうした経済圏が都市から都市へと広がりながら形成されていく様子を捉えることができました。そして、それらの活動は、世界最大級のスポーツイベントを支える加盟店や地域社会と、数百万のファンを結び付けました」
スタジアムの外にも広がる経済効果
経済効果はスタジアム内だけでなく、地域社会全体にも広がっていたという。試合観戦だけでなく開催都市の観光や街歩きを楽しむことで、レストラン、バー、小売店、ホテル、交通機関、エンターテインメント施設などさまざまな業種で消費活動が活発化したという。カテゴリ別では、各都市で特徴的な伸びがみられた例もあった。主な例は次の通り。
・ボストンは、ファンが地元のバーやレストランで自国代表を応援したことで飲食関連取引の前年比の伸びがもっとも大きくなった。
・グアダラハラは、世界中からファンがスタジアムに向かったことで、交通関連支出の伸びがもっとも大きくなった。
・アトランタは、ファンによる祝賀イベントや文化イベントを背景にエンターテインメント関連支出が伸長して、ニューヨーク市では小売支出が増加。
これらの動きは、ポップアップ経済圏の恩恵が開催都市全体へ広がり、その恩恵が大会と直接関わる事業者だけでなく、地域のレストランや独立系小売店、ホテル、交通事業者、グローバルブランドなど来訪者の日常的なニーズに応える幅広いVisaの加盟店にも影響があったようだ。
ノルウェー代表の躍進はポップアップ経済圏にも恩恵
大会で活躍したチームは、注目を集めただけでなく世界各地で経済活動を活性化したという。ノルウェー代表が準々決勝まで進出したことを受けて、世界中のファンが応援したことで、ノルウェー国内だけでなく世界各地で消費支出や取引活動が大きく増加。ノルウェー国内は、試合開催中のVisa取引件数が約2倍に増加して、ノルウェー代表が勝ち進むごとに取引活動の増加が確認される国の数も拡大して、最終的にはノルウェー代表の試合開催時に世界60か国以上で支出の増加が見られた。Visaは、こうした事例はファンの関心が経済活動に即座に影響を与えることを示しており、注目度の高い対戦や予想外の結果や躍進は、旅行動向を変えて需要を押し上げて、次なる都市で新たなポップアップ経済圏を生み出していくと分析している。
W杯の熱狂はサッカーだけでなく、観光や地域ビジネスの成長からデジタル決済の普及まで、大規模な消費活動と経済効果を生み出すことは改めて証明された。一方で今回のW杯は、あまりにも商業主義的だと批判もあった。ノルウェー代表の躍進がVisaの取引件数を増やしたなら、今後もサッカーの魅力を第一に考えるような施策やビジネスのやり方をしてほしいものだ。
Visaの分析手法と概要
今回の分析手法は、エンターテインメント施設、小売店、食品専門店・食料品店、クイックサービスレストラン、フルサービスレストラン、バー、カフェにおける国内取引の集計データに基づいており、増加率は各試合のキックオフ前後12時間に発生したVisa取引件数を大会開始前の5月下旬から6月上旬の各国の同一曜日・同一時間帯の通常的な取引水準と比較して算出。データは、VisaNet上で処理されたVisaカード会員の取引データで、米国とカナダのVisaカードの対面取引額(カード提示取引)とメキシコのVisaカードのクロスボーダー対面取引額(カード提示取引)が含まれている。対象期間は、米国とカナダが2026年6月11日から2026年7月19日まで、メキシコが2026年6月11日から2026年7月5日までで比較は2025年の同期間で行っている。
構成/KUMU
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