オーディオテクニカのポータブルレコードプレーヤー「サウンドバーガー」から、気仙沼産のサメ革を使用した特別モデル「シャークバーガー」が誕生した。レコードプレーヤーとサメ。一見すると結び付きそうにない組み合わせだが、このユニークなプロダクトはMakuakeでの限定販売だったにも関わらず完売するほど大きな反響を呼んだ。
これまでアーティストやブランドとコラボしてきたサウンドバーガーが新たに選んだコラボ先はなぜ「サメ」だったのか。本記事では、開発を担当したオーディオテクニカと企画を協力した電通の各担当者のインタビューをもとに、「シャークバーガー」誕生の舞台裏を追った。
約40年ぶりの復刻したサウンドバーガーは幅広い世代にレコード文化を継承
1982年に発売された「サウンドバーガー」は、2022年に約40年ぶりの復刻を果たすと、そのレトロでユニークなデザインや、レコードを気軽に楽しめるコンセプトが話題となった。AV機器ファンだけでなく、若い世代や海外のユーザーにも支持され、オーディオテクニカを代表するプロダクトのひとつとなった。

オーディオテクニカの宣伝PRグループの國分さんは「サウンドバーガー」をこうに振り返る。
「初代のサウンドバーガーは短命に終わった製品でした。しかし、若い方々にアナログ文化をもっと身近に感じてほしいという思いで40年ぶりに復刻しました。ありがたいことに私たちの予想を大きく上回る反響をいただき、若年層だけでなく、かつてレコードを楽しんでいた方や世界中のオーディオファンにも支持されています」
サウンドバーガーは、これまでにもアーティストやブランドとのコラボレーションを展開してきた。


しかし、今回の「シャークバーガー」は気仙沼のサメとのコラボであり、これまでのコラボモデルとは一線を画している。
「サメの水揚げ量日本一を誇る気仙沼では、古くからサメ漁が伝統的に受け継がれてきました。実は『伝統産業』は、オーディオテクニカにとって以前から大切にしてきたテーマでもあります。
当社では以前から、製品の装飾などに伝統工芸の技術を取り入れてきたこともあり、地方の町工場や伝統産業に携わる方々との接点が数多くあります。
そうした関係を続ける中で、取引先の廃業や職人不足によって、これまでつくられてきたものが継続できなくなる状況に直面する機会が増えていました」

広告会社が広告だけでなくブランドプロデュースをする
そうした中、伝統産業である気仙沼のサメとオーディオテクニカを引き合わせたのは広告会社の電通だった。電通のブランドプロデューサー・三浦さんは次のように話す。

「近年は広告をつくるだけでなく、ブランドそのものの価値をどう育てていくかという視点で企業をサポートする機会が増えています。今はモノそのものの性能だけでなく、『なぜこの商品が生まれたのか』という背景のストーリーも含めて選ばれる時代です。
気仙沼のサメ漁業は、長年受け継がれてきた伝統産業であり、ヒレや身、骨など食用だけでなく、さまざまな分野で余すところなく活用されています。これは気仙沼ならではの取り組みであり、非常にサステナブルなものづくり産業を実現しています。しかし、鮫皮は他の部位に比べて活用用途が限られていました。そこで、その魅力を多くの人に知ってもらい、新たなニーズを生み出すことで、よりサステナブルなサメ漁業につなげたいという気仙沼の漁業関係者の想いがありました。
一次産業とオーディオ機器メーカー、一見すると接点がないように見えますが、オーディオテクニカは日本のものづくりや伝統を大切にしてきた企業。両者には「日本のものづくり」という共通点があります。今回つくった「届かない声を届ける」というコンセプトと、発信力とキャラクター性のあるサメが持つストーリーを掛け合わせることで、このプロジェクトならではの価値を生み出せるのではないかと考えました」
また、電通のビジネスプロデューサーの井上さんはオーディオテクニカだったからこそ、このプロジェクトは実現したと強調する。

「この企画が実現したのは、オーディオテクニカという会社だったからだと思います。同社は製品に対する愛情が非常に強く、社員の皆さんが本当に自社のプロダクトを好きなんです。
また、商品開発もトップダウンだけではなく、社員のアイデアから企画が生まれる文化があります。『こんなことをやってみたい』という発想を受け止め、それを形にしていく土壌がある。だからこそ、一見すると突飛に思えるような企画でも前向きに検討し、チャレンジできる企業なんだと感じました」
遊び心たっぷりのシャークバーガーの魅力
こうした思いは、シャークバーガーのデザインにも徹底して落とし込まれている。オーディオテクニカの宣伝PRグループ・土屋さんがポイントを教えてくれた。

「サウンドバーガーを象徴する持ち手には、実際に気仙沼産のヨシキリザメの革を使用しました。さらに、サメ漁について知っていただくきっかけになればと、水揚げされた場所の座標を刻印したプレートも取り付けています」
一見すると遊び心あふれるデザインだが、その一つひとつに意味がある。海外で「ブルーシャーク」と呼ばれるヨシキリザメにちなみ、本体カラーは鮮やかなブルーを採用。レコードを覆う透明カバーには深海で泳ぐヨシキリザメをイメージしたグラデーションを施し、蓋にはサメの歯を模したしたをデザインを追加した。さらに、レコード針には小さなサメのフィギュアをあしらうなど、細部までサメの世界観を表現している。




「単にサメ柄の製品を作るのではなく、『サメだからこそ、このデザインになった』と思っていただけるプロダクトを目指しました。サメという地域資源や気仙沼のものづくりを知るきっかけになればうれしいですね」
サメ革や伝統産業というストーリーを、遊び心のあるデザインへと昇華したシャークバーガー。レコードを聴く楽しさだけでなく伝統産業の声を「聞く」という、サウンドバーガーらしい一台に仕上がっていた。

取材・文/峯亮佑 撮影/木村圭司




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